⑭突撃じゃー! 同僚がけっこう怖いです
突然、窓ガラスを突き破って部屋に突入したヒヅキ。わたしはそれを、ポカンと口を開けて見ていることしかできなかった。あまりに唐突な出来事に思考が追いつかない。
それはキュラも同じようで、突如部屋に飛び込んできたヒヅキを見て呆然としている。そんなキュラにライトがビシッと指を差す。
「ナイトメアスキル『吸血鬼』の所持者……ようやく見つけたぞ!」
「チッ……そういうことかい。あんたらが噂のナイトクランってわけね」
状況を理解したキュラが歯ぎしりをしながらライトとヒヅキを睨みつける。対してヒヅキは小太刀を抜いて吸血鬼に向けた。
「…ここ数か月、酒場にいた男が何人か行方不明になった。やったのはあなた?」
「ああ、そうさね。男はちょっと誘惑すれば簡単に付いて来る。間抜けな奴らさ。だからわたしが美味しく頂いてやったよ」
居酒屋で出会った男をテキトーに引っ掛け、吸血して殺したということらしい。
……なんか、わたしが想像していた「頂く」と意味合いが違う。男たち、普通に食されてらっしゃる。というかそれ、吸血された人も吸血鬼になるんじゃ……
そしてそんなわたしの予想は的中する。
「もう逃げられないぞ、キューちゃん。大人しくお縄につくんだ」
「ふふふ……それをわたしが素直に聞くとでも?」
「なに?」
目を見開いたライトの目の前でキュラが腕を振る。すると部屋の扉が勢いよく開き、十人の男が部屋になだれ込んできたではないか。彼らの目は赤く光り、歯と爪が鋭く尖っている。どう見てもキュラに血を吸われ、吸血鬼化した男たちだ。
キュラの哄笑が響く。
「こんなこともあろうかと、下僕たちを潜ませておいたのよ! せいぜいその子たちと戯れておくのね!」
「くそ! 逃がすか! ……ひぇ!?」
「…む、こいつら思ったより強い」
襲ってきたヴァンパイアの爪を寸でのところで避けたライトが小さな悲鳴を上げる。ヒヅキも複数の男に囲まれて思うように動けない様子。どうやら吸血鬼化した男たちは身体能力が向上しているようで、拳を振るうたびに部屋の壁や床が抉れ、あるいは爪で切り裂かれていく。
そしてそんな騒動を尻目に駆け出したキュラは、なんとわたしの方に向かってくるではないか。三日月型に口を歪めて狂暴な笑みを浮かべ、目を爛々と輝かせたヴァンパイアクイーンが走り込んでくるのを見て、わたしは慌てふためく。どうやら未だに隠れているわたしに気が付かず、窓から飛び降りて逃げるつもりのようだ。
ど、どうしよう!? キュラを止める? どうやって!? 恐らくドラキュラである彼女自身も強靭な肉体の持ち主。わたしみたいな小娘がどうこうできるだろうか? 普通に考えれば無理だろう。ぶっ飛ばされて終わりだ。うん、ここは隠れたままやりすごすことに……
「…カエデ! 捕まえて!」
諦めの境地に達しようとした次の瞬間、ヒヅキの鋭い声が耳に飛び込んだ。それによりわたしの身体は咄嗟に動いてしまう。
「はえ?」
「なっ!? まだ伏兵が!?」
気が付いた時には、わたしは間抜けな声と共に部屋に飛び込んでいた。目の前には驚いたような表情を浮かべるキュラの姿。
……やっちまった。ええい! こうなりゃままよ!
飛び込んだ勢いそのまま、タックルをかまして女ヴァンパイアの動きを少しでも遅らせる。それによりできた一瞬の猶予を無駄にせず、わたしは巨大なキノコを生やして窓を封鎖。これでキュラの逃げ場は扉のみだ。
部屋に視線を走らせれば、切り刻まれ、あるいは身体の一部をジュクジュクと溶かしながら倒れ伏す吸血男たちの姿。ヒヅキたちが倒したようだ。まだ数人残っているが、赤い閃光が部屋を縦横無尽に動き回り、男たちを切り裂いていく。この様子だと、吸血鬼たちが全滅するのは時間の問題だろう。
そしてライトはというと、唯一の出入り口である扉の前に立ち塞がり、キュラの逃げ場を封じている。ナイス連携だ。
わたしがウインクをすると、ライトもウインクを返してくる。そんなわたしたちの様子に、自分が窮地に立たされたことを察するキュラ。目に見えて狼狽するが、しかしそれは一瞬のこと。ギリギリと歯を食いしばり、組みついたわたしを睨みつける。
キュラさん、完全に目が据わってらっしゃる。これはやる気だな?
「せめて1人だけでも道連れにしてやる!」
怨嗟の困った咆哮とともに、予想通りわたしの首筋にキュラが牙をたてた。最後の悪足掻きに、わたしをヴァンパイアにして同志討ちでもさせるつもりなのだろう。しかしそれは、わたしから血を吸えればの話し。
「え、あ、あれ?」
わたしの耳元ではヴァンパイアクイーンの困惑したような声が響く。どうやらうまく牙が刺さらないようで、キュラは「ぬーん!」とか、「ふーん!」とか、「アイアイサァァァ!」とか叫びながら何度もわたしの首に牙を立てる。しかし結果は一向に変わらない。
わたしは得意げに「ふふん」と鼻を鳴らした。当然だ。わたしは傷を負わないのだから、どうやったって血を吸いようがない。
そうこうしているうちに男吸血鬼どもを片付け終わったらしいヒヅキが蜘蛛糸を操り、いつぞやの日のわたしのようにキュラを簀巻き状に拘束した。
……なぜかわたし諸共。
キュラと一緒に巻かれながら、芋虫のように床を転がってわたしは抗議の声を上げる。
「ちょっとヒヅキ!? なんでわたしまで!?」
「…面倒臭かった」
「面倒臭い!?」
心底、気怠そうに呟くヒヅキ。
つまり、身体を張ってキュラの動きを封じていたわたしを避けて蜘蛛糸を巻くのが大変だから、わたしも纏めて簀巻きにしちゃえ! といったところか……
うん、納得行かねー。
「そんなこと言ってないで、さっさと解きなさいよ! このおばさん、香水臭くて鼻がひん曲がりそうなんだから!」
「そ、そうよ! 解放して……ってだれがおばさんよ!? あとくすぐったいから変なところ触らないでくれる!?」
「あんたが下手に動くからでしょうが! こっちだって触りたくて触ってんじゃないですよ! ねぇ、ヒヅキ早く……ヒヅキ!? おい、目を逸らすんじゃない!」
「…」
身を捩りながらキュラと共に抗議するが、ヒヅキは徹底して無言、そして明後日の方に視線を向けて全く取り合おうとしない。そんな仮面少女にわたしの額には青筋が浮かぶ。
そんなこんなでぎゃーぎゃー騒いでいると、「どんっ!」という音と共に、わたしたちの目の前の床に足が振り下ろされた。口を噤むわたしとキュラ。ゆっくりと視線を上げれば、そこには笑顔でこちらを見下ろすライトの姿が。その視線は真っすぐとキュラに注がれている。
「さてキューちゃん。君には少し聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「わたしが素直に答えるとでも?」
「まあまあ、そう言わず。大したことじゃないからさ」
「……」
無言でライトを睨みつけるキュラ。その目には苛立ちの色が見え隠れしている。しかしそんな彼女に対し、ライトは余裕の表情だ。
「無言は了承と取るよ。じゃあさっそく質問。キューちゃんはどこでおれたちの存在を知ったのかな?」
「…たしかに不思議。わたしたちナイトクランは秘密組織。存在が公にされていない。なのにあなたは知っていた」
ヒヅキがライトの言葉を補足しながら、キュラに鋭い視線を向ける。それに対して口角を上げ、不敵な笑みを浮かべるキュラ。
「ある人から聞いたのよ」
「それは誰かな?」
「そうね……教えてあげてもいい。けどわたしを見逃してくれるなら……って条件付きだけど」
その言葉を聞き、ライトが確認するような視線をヒヅキに向ける。それにヒヅキがコクリと小さく頷いて答える。キュラに視線を戻すライト。
「分かった。素直に答えてくれるならキューちゃんを解放すると約束するよ」
「交渉成立だね」
命を取られることはないと、ホッと息を吐くキュラ。そんな彼女にライトが「で、だれが教えてくれたんだい?」と話の続きを促す。それに対してキュラは、もったいぶるように「ふふん」と鼻を鳴らす。
「わたしにあなたたちの存在を教えてくれたのはね……」
そこでおもむろに言葉を切るキュラ。わたしたちは固唾をのんで彼女の言葉の続きを待つ。しかしどれだけ待っても、キュラの口から答えが出ることはなかった。
不思議に思ってキュラの顔へ視線を向けると、彼女は唇をわななかせ、瞳を揺らしていた。額からは玉のような汗が噴き出している。どう見ても尋常な様子じゃない。
「あの、キュラさん? 大丈夫ですか?」
「……からない」
わたしが彼女の身を案じると、キュラの唇が小さく動き、なにごとかを呟く。しかし上手く聞き取れず、わたしは思わず「え?」と聞き返してしまった。するとキュラはグリンとこちらに視線を向け、目を見開きながら呟いた。
「分からない……だれがわたしにあなたたちの存在を教えてくれたのか……まったく思い出せないの……」
……どういうことだろう? キュラの顔面は蒼白で、目の奥には動揺が見て取れる。とても嘘を吐いているようには見えないが……なぜ、ナイトクランの存在を知らせた何者かを思い出せないなどと言うのか?
わたしが首を傾げていると、ここまでほとんど黙っていたヒヅキが身を屈め、キュラの耳元に口を寄せた。桃色の唇が小さく動く。
「…える……?」
「え……? い、いや、分からない」
ヒヅキが何事かを囁いたあと、一瞬、目を見開いたキュラ。しかしすぐに首を横に振って、その目を伏せてしまう。その彼女の返答を聞き、ヒヅキは「…そう」と呟いて立ち上がった。どうやら何かを尋ねたようだが、望んだ答えは得られなかった様子。
いったい何を尋ねたのだろうか? ヒヅキの心なしか暗く沈んだ表情を見るに、なにか重要なことのようだが……
すぐ横に居たにも関わらず、わたしにはほとんど何も聞こえなかった。辛うじて聞き取れたのは「える」という二文字のみ。
える……Lだろうか? それとも獲るとか?
そうしてヒヅキがキュラになにを聞いたのか。それにわたしが考えを巡らせていると、頭上から小さな嘆息が聞こえた。見上げれば首を横に振るライトの姿。
「分からないんじゃ仕方ないな。残念だけどキューちゃん。お別れだ」
「なっ!? ま、待って! いまは思い出せないけど、そのうち思い出せるかもしれないから……」
「悪いけど、それを悠長に待ってあげられるほどおれは優しくない」
なんかライトらしくない言い草だな。
そう思って彼の顔を見上げたわたしは、その表情を見て思わず息を飲んだ。そこにはいままでの軽薄で薄っぺらい笑みではなく、酷く冷酷で冷たい笑みがあったから。これまでのライトからはとても想像できない、身がすくむほど冷淡な笑みだ。
その笑みを向けられて一瞬、怯んだ様子を見せるキュラ。しかし自身の生死がかかっているのだ。すぐに必死の形相でライトに命乞いを始める。
「た、頼む。なんでもするから……そうだ! あなたの僕になると誓おう! わたしを好きなように使ってくれていい! それこそ慰み者でもなんでもする。だから……」
「へぇ……それはとても魅力的な提案だね」
彼女の言葉に表情を和らげ、人好きのする笑みを浮かべるライト。その笑みを見て可能性を見出したか。キュラは媚びへつらうような笑みを浮かべ、「な、なら……」と、なおも言い募ろうとする。しかしライトの言葉がそのキュラの発言を遮った。
「でも残念。おれにはもう心に決めた人がいるんだ」
「そ、そんな……」
「キューちゃんは綺麗だけど……ビャクヤさんの魅力には遠く及ばないな」
望みを絶たれ、表情を歪めるキュラに、さらに追い打ちをかけたライト。その顔にはまるで、思い人に思いを馳せているかのような柔らかい笑みが浮かんでいる。
……正直ちょっとライトのことを見直した。ただチャラチャラとしたふざけた野郎かと思っていたけど、さっきの有無を言わせない笑みといい、いまの言葉といい。彼は思っていたほど軽薄でダメなやつじゃないのかもしれない。わたしはそう感じ始めていた。
そんなわたしの考えを裏付けるように、キュラにとどめを刺そうと刀を抜いたヒヅキをライトが手で制する。
「大丈夫だよ、ヒヅヒヅ。もう彼女は助からないから」
「…ん、了」
素直に刀を鞘に収めるヒヅキ。一方、納得のいかない者も。
「どういう意味なの? わたしが助からないって……」
「そのままの意味さ。キューちゃんは覚えてる? おれの血を吸ったこと」
その言葉に、わたしはヒヅキが部屋に突入する直前の光景を思い返す。確かキュラはライトの首筋に噛み付いていた。あの時のことだろう。
そしてキュラもそのことに思い至ったのだろう。表情を困惑させながらも頷く。するとライトは、自身の左腕を彼女の前に翳した。その腕を見たキュラとわたしは目を丸くした。
なぜならライトの左腕は緑の鱗に覆われ、手の平からは毒々しい紫色の液体が溢れていたから。その粘性を持った液体は床に垂れると、煙を上げながらその床を溶解する。
「おれはバジリスクのフェイカーでね。だからおれの体液は猛毒だし、大抵の毒は効かない。もちろん、さっきキューちゃんが飲んだおれの血も猛毒だ……あれからけっこう時間も経ってるし、もってもあと数分だろうね」
そのライトの言葉に唇を蒼くしながら、震える声でキュラが言葉を絞り出す。
「ま、待って……じゃあ最初からわたしを生かしておく気はなかったというの?」
「ん〜……まあそういうことになるかな」
キュラの言葉をライトはあっさりと肯定する。それに対して女性は信じられないといったように目を大きく見開き、吐き捨てるように言葉を叩きつける。
「ならわたしを見逃すというあの約束も嘘だったのね!? この嘘つき野郎め!」
「いやいや。約束はちゃんと守る気だったよ? ただ……キューちゃんを逃した後、どこかで野垂れ死んでもおれたちは感知しないってだけで」
その言葉にキュラは絶句して何も言えない様子。
実際、ライトの発言にわたしもドン引きしていた。あまりに残酷である。残酷で冷酷。しかし同時に……できる男であるとも感じた。すべては最初からライトの手のひらの上だったということなのだろう。その手腕は賞賛に値する。
しかしライトの策に感心する一方で、わたしはどこか納得のいかない気分だった。
最初からキュラの死が確定していたなら、わたしが身体を張ってまで逃亡を阻止した意味は? ヴァンパイアクイーンを捕らえたわたしとウインクを交わしたのはなんだったの? 「それ、べつに意味ないけどナイス!」とでも言っていたのだろうか?
……まあ、いいか。
考えれば考えるほど虚しくなるので、わたしは思考するのをやめた。
その後、ライトの言うように、数分後にはキュラは血反吐を吐いて絶命した。その死体を処理してから、わたしたちは帰路につく。
その道中、わたしは今回の吸血鬼騒動について色々と聞かされた。
始まりは居酒屋で飲んでいた男が行方不明になったこと。初めはナイトクランも気に留めなかったが、それが連続して起きたためフェイカーの関与を疑った。そして聞き込みの結果、男たちと飲んでいた1人の女性の存在が浮かび上がる。それがキュラだった。
そして囮捜査としてライトがキュラに近づき、その正体を暴こうとしたのが今回の一件。それはヒヅキも最初から了承済み。つまりわたしが合コンと勘違いして空回りしただけで、すべてナイトクランとしての仕事だったということ。
ヒヅキが宿に入ったライトたちを覗いていたのも、キュラを監視して不測の事態に備えていたから。べつに男女の営みに興味があったわけじゃないらしい。
どうやら、むっつりはわたしだけだったようだ……
そんなこんなで、ナイトクラン本部に着く頃には、わたしの顔は羞恥で真っ赤になっていた。そんなわたしをヒヅキが不思議そうに見つめる。
やめて〜! そんな純粋な瞳でわたしを見ないでぇ〜!
わたしが自身の心の汚さを嘆きながら、顔を手で覆っていると、頭にポンと手が載せられる感触がした。恐る恐る指の隙間から覗くと、目の前には小さく微笑むヒヅキの姿。まるで子供をあやすかのように、頭を撫で撫でしてくれる。その天使のような幼子に、わたしは思わず感極まってしまう。
「ひ、ヒヅキぃ」
「…カエデ、大丈夫。頭より恥ずべきものはない」
「おいコラ、どう意味だ」
溢れそうになった涙が一瞬で引っ込む。わたしは流れるような動作でヒヅキに掴みかかるが、仮面少女は軽やかな身のこなしでわたしの手をすり抜け、そのまま逃げ出した。
本部の扉に向けて走る小さな背を追って、わたしも駆け出す。そこで背後のライトがわたしたちを呼び止めた。
「あ、ちょっと待って」
「どうしたの?」
「…ん。なに?」
わたしとヒヅキが同時に振り返る。するとライトがわたしたちの方に手をかざす。次の瞬間、ポーンという音と共にズボンのポケットに入れたスマホが鳴った。
確認してみると、ライトから3000VPが送られていた。
「あいつらの手前、2人からもVPを貰ったけど返すよ」
あいつらとは居酒屋にいた金髪の2人のことだろう。確かに3000VPは高いと思ったけど……まさか返ってくるとは思っていなかったので少し動揺してしまう。
「え、いいの? ライトの負担が大きくなるんじゃ……」
「気にしないで。吸血鬼を倒すのも手伝ってもらったし、ちょっとした恩返しだよ……あ、でもこれは3人だけの秘密な? あいつらにカッコつけとか言われたくないしね」
そう言って唇に人差し指を当て、ウインクするライト。男が代金を全額負担するのでは、彼らはあまり気分が良くないだろう。だから女子たちにもその場は払ってもらっておいて、出してもらった分をあとでコッソリ埋め合わせる。
なかなかスマートな男だ。今回の件でわたしの中のライトの株はウナギ登りである。
「分かったよ。ライト、ありがとう」
「…感謝」
「いいよいいよ。じゃあ、おれはビャクヤさんに今日のことを報告してくるね」
素直にお礼を伝えると、笑顔で応えるライト。そのままスキップで本部へと向かっていく。
「ビャックヤさ〜ん! いまあなたの王子様が参りますよ〜!」
いつもの軽薄でふざけたライトの姿だ。その揺れる背中を見つめながら、しかしわたしは彼の真っ直ぐな思いが叶うことを願った。
そうしてわたしが生温かい眼差しを向けていると、ライトのポケットから一枚の紙切れが落ちるのが目に入る。
「あ、ライト! なんか落としたよ!」
慌ててライトを呼び止めるが、浮かれる金髪男は気が付かずに行ってしまった。
仕方なくわたしは紙切れを拾い上げる。それは今日行った店の領収証だったのだが……
「ん? 合計で16000VP?」
たしか男8000VPで女は3000VPの支払いだったはず。16000VPなら男2人分で足りてしまう。つまり……
「あ、あいつ、一銭も払ってないじゃない!」
全額男友達に払わせて、わたしたちから回収した分はそのままわたしたちに返す。自分は一切VPを出さずに、自身の評価だけ上げる手法だ。なんてズルいやつ! 危うく騙されるところだった。
遠くからは「ビャックヤさ〜ん」という、某ルパンな3世のようなセリフが響いてくる。そして続け様に轟くビャクヤの怒号。
それを聞いたわたしは思わず天を仰ぎ見た。そうして再びライトにダメ男、クズ男、チャラ男、軽薄の烙印を押すのだった。
以前よりも烙印が多いのはご愛嬌である。
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男を連れ込んで殺してた吸血鬼(ラミア―)を撃破!
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残りKP 12986999887
……うーん。今日もなんか異様にKPが減ってる。昨日確認したときから300万。なんでだろう? 前も同じようなことがあったけど……その時は1000万減っていた。共通点は……フェイカーを倒したこと? もしかしてフェイカーを倒すとKPが減る?
……これは検証する必要があるな。




