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LXII プランク・バーミリオン

 さてと、記憶が多少とはいえ戻ったのは喜ばしいことだけど…

 プランクとの出会いは細かいとこまで思い出せないんだよね…

 正直今までの記憶全部取り戻したいから細かいとこまで思い出したいのに…

 もうプランクに直接聞くか


 _______________


 ナスタチウム州:バーミリオン宮殿


「よっ、遊びに来たぞ」

「また?最近よく遊びに来るのね」

「聞きたいことがあってね、」

「なにかしら」


 女口調…ジョンブリアンさんはいないみたい


「単刀直入に聞くよ、プランク、君との出会いを教えてほしい」

「…記憶を取り戻す一番最初が、なぜ俺?」

「図書館で読んだ本のおかげで、少しだけだけど思い出したの、でも私はもっとよく知りたい、」

「強欲だな」

「二兎追わなきゃ二兎は得られないでしょ?」

「いいよ、教えてあげる」


 あんまりいい思い出じゃないだろうに…

 まったく魔王ってのは決断力がいい


 _______________


 数千年前:現在のナスタチウム州にて


 俺はまだ、一人も笑わせる事が出来ない、道化なのに、道化に生まれたのに


「今日も稽古だ、口答えするなよ」


 父さんはいつも何もできない俺に稽古をつけてくれた

 俺からすると温かいその優しさは、他者から見ると体罰を使った古臭い叱咤に他ならなかった

 父さんは道化の中でも一際目立っており、バーミリオン家の誰よりも道化としての才があった

 俺には、到底追いつけなかった

 そんなある日、本で知ることしかできなかった魔王がある国を滅ぼしたという

 俺は憧れた、日が昇る間もなく魔王は国を滅ぼしたのだから

 幸い殺陣の才能があった俺には自然と武術が身についていたようだった

 正直、魔王には手も足も出ない、でもそこら辺の魔物なら一人で撃退できるくらいには強かった

 でも道化に()()は必要ない

 道化に求められているのは「笑い」と「感動」だけ

 武術なんて何の役にも立たない、そう言う父さんに殴られても、俺は魔王になることをあきらめなかった

 ある日、俺の最後の劇で一際目立つ紅髪を見かけた

 魔王と同じ、それだけで羨ましかった 

 そんな事を考えてるうち、劇が始まった

 玉乗りもできない、簡単なジャグリングもできない、動物を使役もできない

 次第に席が空いていく様は、俺にはもう見飽きたものだ

 劇が終わり、このまま石でもぶつけられるんじゃないかなんて思いで幕が下りるのを待っていた時

 聞きなじみのない拍手が聞こえた

 頭を上げれば、拍手していたのは先ほど目についた紅髪だった

 紅髪は口を開いて


「君ならきっと、君の夢を叶えられる」


 そんな言葉を吐き捨て、瞬きする間にいなくなった

 それが、俺の人生の転機だった


 _______________


「どうだ?こんな風に、俺たちは出会ったんだ」


 …私が、プランクの人生を変えた…?


「私、プランクの人生を変えたんだね」

「あぁ、今でも感謝しているんだぞ?」

「そりゃよかったよ、でも、もっと昔話が聞きたくなっちゃったな」

「じゃあ俺が魔王になるまででも話そうか?」

「じゃあ折角だし」


 _______________


 リミーがそう言ってくれた次の日、俺は一度昔のナスタチウム州…コパ―州を離れた

 稽古をつけてもらおうと思った、けどこんな俺にはだれも見向きしてくれない、当たり前のことだ

 コパ―州の大きな湖の中の孤島、そこに死に物狂いで着いたときには、やっと手を差し伸べてくれる人が現れた

 人と言っていいか怪しいけど、差し伸べてくれたのは魔王の一人、ロージエイト・カメリアだった


「こんなところに人…いや道化か!が来るなんてな!どうかしたのか?」


 声を聴いたとき、俺は安堵感で気を失った

 次に目が覚めた時、視界内は見慣れない天井で埋め尽くされていた

 しばらくぼーっとしてたらドアがものすごい勢いで開き


「お!起きたか!今水を持ってくるのだ!」


 というカメリアの声が聞こえた

 持ってきてもらった水を飲んでいる間の自己紹介で、魔王の一人だと言われたときは水を全部噴き出した


「で、お前はなぜここに来たのだ?」

「稽古をつけて欲しくて…」

「どうしてなのだ?」

「魔王になりたくて…それなら魔王のところで修行した方が早く結果がつくかなって…」

「そうか!なら修行なのだ!今日は休んで、明日からしっかりやるのだ!」


 思った以上にうまく進み過ぎて、ちょっと不安にもなったけど、カメリアは嘘はつかない、なんとなくそう直感したから信じることにした

 修行の内容はとてつもなくキツかった、基礎体力向上に、魔素の使い方、独自技能をうまく使えるようにしたり…

 毎日筋肉痛だったけど、その分すぐに結果は追いついてきた


「お前はもう十分なのだ!」


 そのカメリアの言葉と、カメリアの推薦で俺は邪悪ナ宴に参加することができた

 多くの魔王が俺を見ていた、でも俺はリミーにしか目がいかなかった

 見たことのある紅髪は俺の視線を集めるには十分すぎる

 そこで初めて、あの時の人がリミーであることに気が付いた

 その後の邪悪ナ宴でも、リミーは俺に忖度することなく評価してくれた

 他の魔王が深く頷く、そして静寂、それを切り裂く夜月の声


「この度、プランク・バーミリオン様が正式に魔王になりました」


 リミーの拍手はあの時と変わっていなくて、安心した

 俺は、この時正式に、魔王になった


 _______________


「まって、てことはカメリアってプランクの師匠?」

「そうだぞ」


 やばぁ…魔王が魔王の弟子とか…


「っていうかそのあとの親父さんはどうだったの?なんか言われた?」

「俺を小突いて涙目でおめでとうって言ってくれたさ」

「そう、よかったね」


 親父さんは別に根は悪い人じゃないんだろうな

 リエル、親父さんは今どこに?

『プランクの父、ビスタ―・バーミリオンはプランクが魔王になって少したってから老衰で亡くなったよ』

 そっか、まぁ他殺じゃないだけ…


「そういえば、プランクはなんで女口調になるようになったの?」

「昔からだよ、慣れて今もこれってだけで」


 それはちょっと意外、なんかあってこれになったのかと…

 ま、記憶については聞いてたら思い出したし、収穫ありっと


「今日はありがと、じゃあまたね」

「またな」

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