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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
カエサル、弁護士になる
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アッティクスとの友誼

ついにアッティアの息子、アッティクスと対峙することになったカエサルはうまく仲良くなっていけるのだろうか。

人並みの背丈だが、色白で細い若者は大きな目を不安そうに泳がせながら、自分の使いのものたち、自分の従者である奴隷たちと一緒に準備の確認をしていた。

今思うとカエサルの従者ジジの口車にのせられただけのような気もしていた。

ローマの若者の多くが知るユリウス・カエサルだ。しゃれもので、女好き、屈強な男たちを何人も付き従えている、スッラにすら逆らった自由のカリスマ。

そんな若者が、自分のようなぱっとしない引きこもりをも本気で相手にするだろうか?

いや、父の財産を狙っている非道な輩かも知れない。

なぜ自分は会う約束をしたのだろうか。

カエサルの冒険の話も聞いた。エフェソスやレスボス島の攻略戦は本当に胸が踊ったものだった。

だからといって引きこもりの自分に会いたいと思うとは。ジジの口が上手いだけなのにのせられたのか。

それでも自分の優秀な使いのものたちはしっかりと準備をしていた。取りまとめをするアッティクスの頼れる傍仕えのスルミンは、しっかりと準備をしていた。

頼もしくもあった。


ドキドキしながら身だしなみをととのえ、洒落者と噂のカエサルに負けないように、荘厳さが出るトーガをうまく羽織ろうとしたが、どうしても華奢なアッティクスでは、着こなしが難しかった。

布を厚めにまとうことでなんとかそれなりに見えるようになったところだった。


朝からドキドキしていたアッティクスだが、さすがに一時間以上立つと疲れてきた。身体の緊張を緩めるハーブティーをスルミンが準備してくれて、少し落ち着いたところでジジが主人を連れてきた。


カエサルは、普段通りだった。

ただ新しいおしゃれとしてトーガの下に来ている服を紫色に染めていたのだ、回りの人も見える紫は鮮やかだが少し暗いかった。ローマ人の好きな重厚さを出していた。

頭を下げて礼をしてアッティクスの家に入るカエサル。

主人に習い何度も訪れたことがあるはずのジジもダインとプブリヌスが補佐として訪れたが、全員がアッティクスにたいして礼儀正しい挨拶をしてきた。

ジジから手はずを聞いていたアッティクスは緊張しつつもカエサルの丁寧な挨拶を受けてたち笑顔で出迎えることができた。

「今日はご招待いただきありがとうアッティクスどの。」

「いえいえ、ローマから遠い我が家をご訪問いただきありがとうございます。カエサル様。」

「アッティクス殿、ぜひ私のことはカエサルとおよびください。」

「かしこまりました。それでは私もアッティクスと名前のみで読んでいただきたいです。」

ここまではまさに定型の挨拶だった。アッティクスが緊張するだろうからと、カエサルもジジを通じて定型的なあいさつに終始すると決めていたのだ。

それでも下手くそな芝居のようになってしまったのはアッティクスが緊張していることがまわりに伝わったからだろう。


挨拶をしたあと、スルミンがアッティクスの使いのものであることを紹介して、その他の従者たちも挨拶をする。アッティクスはなんとか、従者たちにバトンタッチをすることができてほっとした。従者たちもくつろぐようにカエサルが言い、アッティクスが頷いたため、従者たち同士も主人たちにならってくつろいだ感じになった。


落ち着いてきたところで周りを見る余裕がでてきたアッティクスはカエサルの服装に注目する。

お洒落に着こなしたトーがの下に来ているのは深く鮮やかな紫色の服だ。緊張さえしていなければすぐに見えた服の色。

その着飾りを美しいと心の底から思ったアッティクスは、ついカエサルに

「カエサル様。その服は美しい色をしていますね。もちろん、着こなしもすばらしいんですが何というか心を落ち着かせてくれるすばらしさを感じます。」

すらすらと自分の言葉で言ってしまったことに気が付いたアッティクスだったがカエサルはその言葉に対して笑顔で

「褒めていただいてうれしいです。アッティクス。素晴らしいところに気がついてくれました。実は苦労しながら染め職人と相談してつくりあげた色なんですよ。」

「そうなんですね。街で見ない色なので素晴らしいと思いました。」

カエサルの着ている服のおかげで二人は自然に話をするようになった。

ジジやスルミンも笑顔だ。

いろいろと心配することもあったが、主人二人がお互いに打ち解ける話ができたことがうれしかったのだ。ジジとスルミンからも緊張の色が解けて、くつろぐ感じになっていった。

そこからは、カエサルとアッティクスはお互いに話を弾ませていった。


話がはずみ、食事と酒をともに楽しんだあとでアッティクスがきいてきた。

「カエサル、本当のところ、私はずっと家に引きこもっていた男だ。あなたのように武勇伝もない。そんな男をどう思う。卑怯な男ではないだろうか?」

カエサルはアッティクスの瞳を見つめながら言った。

「私は、私がしたかったことをやっているんだよ。アッティクス。だからあなたが家にいたいと思って家にいるのと、私が外を旅したいと思って旅をしたことは同じだと思う。家にいることと卑怯であることは一緒ではないと思う。」

「そうか。そういってもらえるとありがたいよ。」

「もちろん私の意思だけではないこともある。エフェソスに向かったのは、方向を決めたのは私だ。しかし、旅をするきっかけになったのはスッラに追われたからで、もしかしたらアッティクスがやっているように家にひきこもったらそもそも追われずにすんだかもしれないしね。どちらが良いと言うのはなくてどちらでも次の未来が開けるんだよ。」と笑う。

アッティクスは救われたような気分になって頷いた。

いたずら心をくすぐられたカエサルが笑いながら言う。

「私と会って外に出たくなったことよりも引きこもっているほうが平和な日々が続いたかもしれないよ。」

「それは私が開かれた世界に出たいと思ったから出るのであってカエサルのせいではないよ。たとえ良い方向に行かなくても後悔はしないでしょう。」

その時アッティクスは心の底からそう思い、カエサルに感謝していた。


結局、話の波長があった二人はどんどん話をしていった。

アッティクスにとって驚きだったのはカエサルはオシャレ好きで女好きなプレイボーイなだけではなかったことだ。本が好き、人と話をすることが好きでさまざまな分野への造詣も深かった。

酒や食事、服飾へのこだわりがあるだろうと思っていたのだが、ローマやギリシャの建築工学や芸術、地理、天文学や動物学、医療などの幅広い分野に興味を持っているのには驚かされたのだ。

それらに興味を持ち理解をしていることも驚異だったのだが、アッティクスが最も驚かされたのはカエサルの考え方だった。

カエサルが話をしているときに何気なく言った言葉が頭を離れない。

「われわれのローマが世界で最も素晴らしいものだとは、私は思わない。最高は求め続ける先にあるものだ。昔ギリシャのアテネが最高だと思われた時代があったが、彼らはそこで満足してしまった。そこから没落している。だからローマが最高を求め続けることをやめたら、そこからローマの没落ははじまるだろう。」

「そうですね。私もそう思う。私は私の出きる範囲で最高を目指したい。」

そう言うことでアッティクスはカエサルと対等でありたいと思ったのだった。


結局、カエサルとアッティクスはお互いに尊重し会うことができて意気投合もできた。

お互いの使いのものであるジジやスルミンもこの出会いの成功を喜んで、その日は終わることができた。


お互いに話のできる仲間となったカエサルとアッティクスはカエサルの家とアッティクスの別荘を行き来するようになり、カエサルの母アウレリアも素直に喜んだ。

アッティアも息子がローマの市街地にあるカエサルの家まで出向くようになったことを喜んだ。

アッティアからはアッティクスと仲良くしてくれたお礼として追加の礼金を出すと申し出があったのだが、カエサルはアッティクスとの友情についてはこちらから望んだことでもあると断りがあった。

カエサルにとってはアッティクスがカエサル以上の読書の鬼だったことから、本を集めることについても詳しい彼を「本の神様」と呼んで称えることもしばしばだった。

アッティクスも違う世界の人間と思っていたカエサルから自分が褒めたたえられたことがうれしかった。


もちろん二人の間をとりなしたジジとスルミンに対してカエサルから熱い礼の言葉があり二人はともに喜んだ。

アッティクスと仲良くなることに成功したカエサル。

思った以上に仲良しになった二人だった。

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