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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
カエサル、弁護士になる
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さらなる借金をするために

お金が必要なため借金をしたカエサル。

さらなる借金をするため、別の貸金業者アッティアにあうことにした。

アッティアは自分が融資する額を減らす代わりに一つ人助けをしてほしい、と言った。

「どのようなことでしょうか?」

「カエサル殿は、人と関わることが非常に上手だと伺っております。」

「それほどでもございませんが、どのような人助けを行えばよろしいのでしょうか?」

「人をうまく導くことも得意ではないかと考えます。」

「さて、そういったことが私にできるか、行ったこともないのでわかりませんが。」

「そうですよね。回りくどい感じになってしまい申し訳ございません。」

アッティアはそう言うとカエサルに頭を下げた。

一度仕切り直して息を吸ってカエサルに向かって言う。

「あなたと同じ世代のある若者をあなたの仲間、友として扱っていただけないでしょうか。」

「そのようなことは、その若者と私が合うかどうかが重要でしょう。もう少しお話いただけますか。」

「ええ、おっしゃるとおりですな。その若者は、引っ込み思案で大人になって独り立ちする今の時期になっても部屋から出ようとしないのです。

昔は活発な子だったのですがマリウスとスッラの争いで、ローマ市内でも血が流れ、人々の恨みの声が街の隅々まで響き渡るようになってから、あの子は外にでなくなってしまったのです。」

「なるほど。その内戦で心を痛めた若者と仲良くしてほしいというわけですね。」

「そうです。それを呑んでいただけるなら、金額はご希望の倍お支払いしてよいです。」

「しかし、私が努力してもうまくいかない場合や、または若者がまったく協力できない、となったら

どうなりますか?」

「そうですね。なんとかうまくいってほしいのです。」

アッティアの困った顔がさらに曇ってしまう。

何も代案はでないようだ。

そこでカエサルは代案を出した。

「まず、私は私のできる最高の扱いをしましょう。もちろん友達として、なので時には厳しいことを言ったり、冗談を言います。そのため当初予定した金額の半分を私にお貸しください。そうしてうまくいくようであれば残りの半分をいただきたい。良い影響が与えられていない、となったならば追加の半分はいらないです。そしてまったく努力が見られなかった場合は、私への借金の金利を倍にしていただく、というのはどうでしょうか。」

「なるほど。金利を倍、というのはかなりあなたにプレッシャーをかけている感じですがよろしいので

しょうか?」

「もちろん、私も動くつもりで、同じ世代の若者の心をひらいてみせてみよう、と思っているから、

立ち直らせるつもりで行いますよ。」

「ありがとうございます。」

とアッティアはカエサルに感謝をした。

「あとは、その期間をどれくらいにするか、ですが、そんなに多くの時間をかけていられないのだと思うので3カ月はいかがでしょうか?」

「3カ月ですか?」とアッティアは驚いた。

「長いでしょうか?」と聞き返すカエサル。

「いえ1年以上は考えたのです。私が長い期間に渡り何もできなかったので、さすがに短いのではないかと思ったところでした。」

「そうですね。私も短いと思いますがお金を借りに来ている私にはお金が必要なのです。だからもしあなたからお金を借りられないのであれば他に貸してくれる人を探す必要があるのです。」

カエサルは厳しい感じで言った。

アッティアにとっては人助けをしてもらいたいというが、カエサルにとってはお金を借りるための手段であって絶対にアッティアを助ける必要がないのだから。

その線引きをしっかりと行った。

アッティアはその口調に驚いたが理解を示した。

「おっしゃる通りですね。なんとかうまくいくことを祈っております。」

カエサルはアッティアが理解してくれたことで満足し次の話にもっていった。

「ところで、あなたが助けを求めているその若者はあなたの身内だと思いますが誰でしょうか?」

「それは・・・」一瞬アッティアは躊躇したが

カエサルの足元を見ながら言った。

「私の息子のアッティクスなのです。」

「そうですか。それならなおさらなんとかしないといけませんね。」

カエサルが真面目に言ったことで真剣に考えてくれていることを感じたアッティアは少し安堵した。

「アッティクスについて少し教えてもらえますか?」


それからアッティアはカエサルに息子のことを話した。

興味のあることや昔のことなど、自分が思い当たるすべてを話す。

2時間以上息子についてを語ったアッティアは話をしつづけて今の状況に意識を戻す。

「どうしてこんなことになってしまったのか、未だにわからないのです。」

カエサルは静かに頷いて言った。

「あなたとアッティクスの間だけではなく、周りの者との関係で何かあったかもしれませんね。そのあたりは本人に伺いながら聞いてみましょう。ところで、今、彼はどこにいるのでしょうか?」

「ええ、あいつは今、ローマ郊外の別荘にいるんです。とは言ってもそんなに遠くなくローマからオスティアの港に行く途中、少し外れたあたりで馬を飛ばして1時間くらいで到着する場所なのですが。」

「なるほど。街から外れていてもあまり外れすぎていない場所ですね。では私を底に連れて行ってもらえますか?」

そして、アッティアとアッティアの取り巻き、カエサルとカエサルの仲間たちを連れた一行は、テベレ川沿いを下ってオスティア港に向かって石畳を馬で走っていった。




アッティアの別荘は、石畳の道を外れて少し進んだ場所にあった。周りにはいくつかの家が立っているなかで、三階建ての大きな茶色い建物が目に入ってきた。

庭はきれいにされているが人が立ち入りにくい感じもなくカエサルたちは大きな建物の近くのかなり大きな馬小屋に馬をあずけて別荘に向かう。


アッティアが先に中にはいり、仕えている者たちに話をとおしてくれることになったが、しかし、アッティアと使いの者たちが別荘に入ってから少しして、言い合いをする声が聞こえて少ししてから、アッティアが出てきた。非常に申し訳なさそうな顔をして言う。

「すみません、カエサル。ちょっと今日お話いただくのはむつかしいようです。気難しい息子でして申し訳ない。」そういうと肩を落として帰ろうとする。

「アッティア、私はせっかくここにきて本人と話もしないで帰るつもりはありませんよ。」

そういうと肩を落としたアッティアの肩を優しく叩きながら、別荘のほうに足を向けた。

アッティアの息子アッティクスの引きこもりをなんとかしてほしいというカエサルは

どのようにしてアッティクスと向き合うのだろうか。

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