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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
カエサル、弁護士になる
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ピサの酔っ払い

レピドゥス軍の敗戦を受けて逃げるカエサルたちにどのような運命が待っているだろうか。

瘦身の若者は申し訳ないと言葉を発しながら笑った。


しかし、笑顔で許せるようなことではなかったので、中年の男は愛想笑いはしつつも口を開いて文句を言う。

「本当に信じられませんよ。あなたのいう言葉を信じて、私はエフェソスからローマに行き、あなたの母上にも会い手紙をもってキリキア属州まで行ったんですから。

それでも見つからない。私の移動速度が早すぎたのかと思って1か月くらい滞在したんですが、路銀もたよりなくなってきた。探し続けても見つからずどうしてもいないからエフェソスに向かってジグルドとイレイアさんに会ったんですよ。そしたら2人はあなたがローマに向かったという。」

「そうか、2人は元気にしていたかい?」

「ええ、元気にしてましたよ。私よりもはるかにね。彼らよりも私の心配をしてほしいもんです。」

「ああ、そうだったな。それでここで会えたわけだ。」

とそこで話を切ろうとする若者の言葉に乗せて中年の男は話をつなぐ。

「省略しないでください。そのあと、ローマに戻ってまた母上に会うとボロニアのほうに向かったって言うじゃないですか。しかもそっちではレピドゥス軍と元老院軍が戦う直前でした。そんななかで私は

リミニまで移動して戦況を見守っていたわけです。本当に戦場近くの街って殺伐としていますからね。

そこで様子見をして情報を集めてと活動していたらすぐにレピドゥス軍が壊滅したとの報告があったからまたあなたを探したんですよ。」

そこまで言って、周りの者もさすがに中年に同情の目を向ける。代わりに瘦身の若者への目線が厳しく

なっていった。

「そうか、大変だったな。私も大変だったんだ。」

頭をかきながら笑って見せた痩身の若者を見て

「ええ、そうでしょうよ。戦場からうまくクリエンテスを救出するという大役を果たしたんですからいいでしょう。

それでも私もあなたを主として仰ごうと思っていた気持ちがなえていきましたがね。」

文句をいいおえない中年の男は

「まあ、そこからは私の自慢話ですが、あなたは絶対リミニのほうに来たりせず、またアペニン山脈を必死でぬけたりせずにジェノバのほうに悠々と行って旅を楽しむほうだと推測しました。そしたらまさにそのとおり、いやそれ以上にピサの街を楽しんでお仲間と過ごしていらっしゃったんですよね。」

嫌味を付け加えながら相手を見る。

「まあ、人聞きの悪い言い方はよしてほしい。お金を稼ぎながら新しいつながりを作っていたんだ。もちろんせっかくの初めてのピサ。そして初めてのイタリア半島北部の旅だから楽しむことも忘れないようにしていたけどね。」

そう笑顔でいう。

文句を言い切った感があったので、中年の男は、ふう、とため息をつきながらも少し落ち着いたようだった。そして口を開く。

「さて、これからどうするんですかね。そして私はあなたに仕える余地があるんですかね。」


そうため息交じりに行った男の名前はエセイオス。情報収集の達人として知られていた男だった。

なんのことかカエサルとかかわるようになってから楽しくも激しい人生を送るようになっていたのだ。

人生の集大成としてこの男にかけてみたい、とエセイオスの直感がいっていたのだが、そう思った矢先に振り回され続けて自分の直感を信じられなくなってきていたのだ。


今、カエサルとエセイオスは古都ピサにいるのだ。

ピサは1000年以上の歴史を誇る街として、交易の重要拠点として栄えていた。

古都と言われるのは、近郊にエルトリア人の巨大な墓地が守るようにピサを見守っており、その巨大な墓地はローマの技術者をもってして感動させる様であったのだ。


なぜジェノバでもボロニアでもなくピサなのかというと、古都ピサにはイタリアではローマよりも古い図書館があった。これはギリシャ人の影響なのだろうか。そして書物が好きなカエサルは発展途上の汗臭い街よりもこの古い雰囲気を持つ貴婦人のような街を好むのではないかと考えてエセイオスはピサに来てみたのだった。


そのとおりだった。

古都ピサの街中を勘と人々の情報を頼りに探し歩いていたエセイオスが、自分の人生の最期に使えるべきと感じた才能に溢れた痩身だが筋肉を蓄え勇敢さと驚くほどの知恵を持ち合わせた若者を見つけたのはピサの街の中でも旧市街で、神を信奉する神殿の広場だった。

エセイオスの終生の主となるべき若者は仲間と飲んだくれていたのだ。


実り多きは神の祝福、そこからは人の力、それを神に捧げながら楽しもう~


と歌う声が聞こえてきた。

奇抜な歌だが聞き覚えてのある声がしてエセイオスがそっと覗いて見てみると、見慣れた痩身の若者が、若い女性神官らしき若い女2人と浮浪者のような男とともに歌を歌っていた。

しかも、よっぱらった瘦身の若者は、上半身を丸出しでヘソも丸出し、かろうじてズボンが急所を隠しているくらいだった。

浮浪者の男と歌を歌いながら、女性神官2人と肩を組んでいたのだ。そこへ中年のおじさんがきても、まったく気にせずに石の柱によっかかっていた。

話しかけると葡萄酒を出して

「飲む?」

と聞いてきたのだ。

「何をしているんですか?カエサル?私ですよ。エセイオスです。」といっても酩酊していうのか

気が付いた雰囲気でもない。

「エセイオス?ああ、パン屋のエセイオスさんですか、これはどうも。」

話にならない。

そう思ってエセイオスはカエサルの顔を抑えて頬をうちながら言う。

「あなたの指示でエフェソスからローマに行っていたエセイオスです。」

エセイオスが若者の頬を打つのを見て女性たちが青ざめた顔になった。しかし若者は全く気にせず

「ああ、あのエセイオスさんですか。はてさて、何のご用で。」

「あなたを探し歩いていたんですよ。」

「そりゃあ申し訳ないことをしましたな。私を探してわざわざこんなところまで。」

まだ酩酊している。

いつも一緒のダインもジジもいないところを見ると何かあったのだろう。エセイオスが酔っぱらいたちを放置して周りを見るが何もない。

カエサルは酔っぱらい仲間と共に動くことはないだろう。

そう考えたエセイオスはレピドゥス軍が敗退した後のカエサルに何があったのか気になった。


どんなことも乗り切るこの痩身の若者が、全く堕落しているのだから。

エセイオスはその謎を解くべく、旧市街の人通りが多いほうに向かっていった。

カエサルの従者たちがいるかもしれない。

この若者たちの未来を閉ざしてなるものか。そう思った。



カエサルはなぜピサに。

そして彼に何があったのだろうか?

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