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時代の流れ

レピドゥス軍が壊滅していくのを確認したカエサルたちはどのように逃げていくのだろうか

ぜえぜえ

ぜえぜえ


口の中を鉄のにおいが支配した。

肺がぜえぜえ言ってもうこれ以上走れない。

もっと体を鍛えておけばよかった。

なぜこんなことに巻き込まれたんだ。

私は自分の商売を守りたかっただけなのに。


そんな思いをかかえなばらゴルバンスは他の者に遅れをとらないように必死に逃げていた。


周りの連中はそれでも自分についてきてくれているから彼は泣きながら必死に走り続けた。



騎馬隊が追撃を振り切っている間に歩兵たちは森に向っていたが、見えるのだが、森林に入りきるまでが絶望的な長さに見えたのだ。


ゴルバンスはむせび泣き叫びながら逃げていたが、となりにローマの剣闘士たちがいたせいもあり草むらを走り抜けての擦り傷以外はケガをせずに逃げきれそうだった。


少し盛り上がった丘まで来た一行は追撃する騎馬を討ち、振り払うことができてほっとして後ろを振り向く。フォルリの街周辺にいた大軍が敗走し、再びフォルリの街が燃え上がっているのが見えた。


ゆっくりと見ている余裕もなく、森のほうに向かって速足でかけていく。騎馬の部隊が襲い掛かってきたらすぐに追いつかれてもおかしくないからだ。


結局、森のほうに向かって走り30分ちかくもあるいただろうか。


歩兵たちは疲れ切っていたがなんとか森の中に姿を隠すことができた。騎馬の者たちもあまり奥に行き過ぎない森のなかに集まり、なんとか馬が動けることを確保しながら集まった。


追撃されて逃げてきた多くの兵たちは、一旦森のなかに集まったが、レピドゥス軍が勝っているという甘い予測のものは一人もいなかった。それだけ敵がせめて来るタイミングが良かったのだ。少し休むことができた逃亡兵の一段は、互いに話し合いばらばらになって落ち延びることにした。


狼の面をつけたままのカエサルは、一緒に逃げてきた兵士たちを連れてアペニン山脈を超えようと考えていたのだが、けが人がいたり移動するための行糧が不足していることも考え、いったんボロニアの街にいき、ジェノバから大廻りでローマにいくべきかもしれないと考えていた。


結局一緒に逃れてきた多くの兵士たちとも別れた。

皆自分の今後のことで精いっぱいだったのだろう。

狼の戦士の素性を明らかにしようとするものはおらず、ただ、狼の戦士とその一段が逃亡兵たちを逃がすために活躍したことだけは皆が認識していたので、別れ際に兵士たちは狼の面の戦士とその仲間たちに礼をいい、お互いに再起を目指そうと抱擁をして別れた。


カエサルは自分の仲間たち、ダイン、ジジ、ザハ、ローマの若者たちや剣闘士たち、ゴルバンスとその関係者だけになったことを確認して狼の面を外す。「かっこいいけど、付けておくのは息が苦しいな。」

そんな感想を述べながらマスクを隠した。

それから、残った自分の仲間たちに言う。

「みな、救出作戦に力を貸してくれてありがとう。私たちの目的は達成された。」

そういうと、全員から歓声があがる。

ゴルバンスがカエサルと仲間たちに礼を言い、カエサルはゴルバンスの息子の勇気をたたえた。


それからカエサルたちは森の奥をぬけながら、ボロニア方面に向かう。レピドゥス軍を倒した元老院派の軍隊の様子を見ながら、可能であればボロニアにいき、体制を整えて、ジェノバに行き、海を通ってローマに帰ることを考えていたからである。


執政官カトゥルスが率いたローマ軍は反乱軍を撃破し、レピドゥス軍は壊滅。主犯のレピドゥスは逃亡したという報告が元老院に届いた。

元老院を主導している面々は、早々に民衆派の反乱を鎮圧することができてほっと胸をなでおろしていた。


しかし、スッラが死んでから、共和制ローマの元老院が主導する管理体制には歪が生まれてきていることを感じていた。

元老院体制はすぐれた集団が主導する体制であったのに今ではそれが機能しずらくなってきているのだ。

マリウスにしろ、スッラにしろ、すぐれた個人の力がすべてを解決してきたのだった。

しかし、彼らにしても現体制の持つ本質的な問題点に気づいた人はまだいなかった。

何かうまくいかないということを感じているだけにとどまった。

ただ、時代が動いてきていることを感じ、多くの個人が英雄たらんとして躍動しはじめてきていた。


次の時代を担うのは、スッラの直属の部下たちであり今元老院を支えている者たちかもしれない。

スッラの改革で元老院に入る機会を得た新しい者たち。

新参者と称される彼らの中からは次代をひっぱるリーダーの素養を持った者たちが表れつつあった。

また、今まさに台頭しようとしてきているのが、レピドゥスを討ったローマ軍を実質的に指揮していた

若き天才ポンペイオス。

そこに続く経済界のプリンスでもあるクラッスス。

それぞれがそれぞれの夢を見ている。

時代は速さを増して動き出してきていた。


復興しようとした民衆派が壊滅していく様を見届けた後ボロニアに向かう森のなかで仲間たちと笑いながら旅を続けている瘦身の若者はまだ表舞台には立っていない。

表舞台に立つためになすべきことは何か。

森の中を歩きながらまったく別のことを考えていた。

民衆派の蜂起は簡単に抑えられてしまった。

カエサルは何をかんがえていくのか。

時代は動いてきていた。

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