一途な行動
シビルをおい払ったカエサル。
平和な時間が流れる。
イレイアは回復をしつつも完全な回復はもはや厳しい状態だった。
シビル・ファビウス・マクシマムがエセイオスを追うように急いでローマに出立したあと、カエサルが後からミヌチウスに聞いたところ、調査員はマリナスが犯人と断定できていたそうだった。ただ、元老院議員であり属州の調査員がそこに踏み込むことは難しかったようだった。
そこへマリナスが殺された事件が発生したのだ。
属州でローマの武官や元老院議員が殺される事件が続いたが、ミヌチウスは、表面的には原因を追求でききれないでいた調査員を厳しく責めたが、それ以上のことは何もせずに事件はうやむやのまま、民衆がいろいろな噂を話していたが、それも時とともに忘れ去られた。
ガルパンは自分がローマ軍で父の位置まであがっていくことを目指して奮闘することになった。
20歳というガルパンの年齢ではあったが貴族の子弟がなることが多い100人隊長の補佐の地位について忙しい日を毎日すごすことになったのだった。
身体を鍛え、一般兵士たちと共に過ごすことで将来の上級士官を目指すのだ。
ローマ軍は、質実剛健をむねとして、貴族の子弟こそ、厳しい体験をして、市民を引っ張っていくことをよしとする風習を持っていたのだ。
ガルパンが苦労している間もカエサルはイレイアの見舞いにいき、いろいろなところで情報を集め、書を読み彼女が健康になることを待っていた。
一月も立たずに、イレイアは安定してきて、そこからの回復は早かった。
残ったのは足の両足のアキレス腱をきられたところだったが、1か所は名医の手術で成功した。もう1か所はもはや手術を出来る状態ではなく、アルバニスによる義足の研究が唯一の解決策として待たれる状態だった。
イレイアは時折カエサルに、
「もういいから私にかまわないで。」
と言い、カエサルに自分の野心を忘れるな、とか
「私は自分で自分のことができるから」と言ったりした。
それでもカエサルは意にも介さず傍にいた。
さらに時間が立つと、時折笑えるようになった金髪の美少女の横によりそうようになり、仕事はダインやジジに任せっぱなしだった。
教育隊はほ全員卒業し、新しい兵士たちがまたきたが、教育隊の統括官は現場に足を踏み入れることも減った。
そうしているうちにカエサルは20歳を迎えた。
イレイアが、見舞いはいいから自分のことをしろ、と言っても何も変わらず足は治らないがカエサルたちは楽しく日を送っていた。
世の中はおちついていて、カエサル宛てにはビティニアの美しい姫や知り合っていた貴族の奥様や令嬢から手紙がきたが、誠実な言葉で返して終了していた。
それまで、貴族の奥様や令嬢の誘いには喜んでのっていたカエサルを知るダインから見ると信じられないことだ。キロがいたら絶対にカエサルに嫌味をいっただろう。
ミヌチウスも含め何人かの高官と食事をしたり、地元の名士が市民冠を持つ英雄に近づこうと催しをしても、最低限の付き合いで終わらせてジグルド邸に戻ってきた。
それから20歳の夏、秋、冬とカエサルはイレイアの看病ですごした。
夏にはアルバニスが研究した義足を試してみたりしたが、細かな調整が必要で精密さも必要なため、イレイアが再び歩けるようになることはなかった。
それでも、カエサルは自分の仕事である教育を事務処理を中心に行って、帰ってはイレイアの世話をする日々を楽しんでいた。
その間に久しぶりにキロから手紙がくる。手紙を見ると「スッラが独裁官を辞めた。」とあった。
それ以外にも細かな情報やキロの近況も記載してあったが衝撃的なその言葉がカエサルの心を動かしつつあった。
カエサルは
「スッラは馬鹿じゃないだろうか?なぜ自分で独裁官を止めてしまうのか?」などと周りに言ったが周りのものは返すことばがなかった。
カエサル以外から見ると、スッラがいなくなることで、カエサルもローマに帰ることができるかもしれない。次の執政官が、スッラが定めた法律を改定し、スッラに敵対した人たちにも恩赦が出る可能性もでてきたのだ。
誰も返さないので、カエサルは一人で思惑にふける。
「私だったら終身独裁官になったら、やるべきことを行い、それが本当に機能するか、まで確認するだろう。ルールは決めて動くことをしっかり確認することが大切なんだ。しかし、スッラがそんなことを知らないはずはない。もしかたしたら、辞める別の理由があるのかもしれないな。例えば体調がすぐれないとか・・・。」
一人で呟き続ける。
「とすると、私がローマに帰っても大丈夫になる時が迫ってきているのかもしれないな。」
そうつぶやいて、考えてに耽った。
しかし、その後も特に行動を映さずにいたカエサルはアルバニスの義足が足にあってゆっくりとではあるが歩けるようになってきたイレイアを見て喜んだ。
イレイアを抱きかかえてカエサルは喜んだ。
すると16歳になった美少女はカエサルに言った。
「私をアルテミス神殿に連れて行って。」
なんとか歩けるようになったイレイアがカエサルを誘っていくアルテミス神殿。
彼女は何を思っているのだろうか?




