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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
豊かなるアシア
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情報屋エセイオス

マリナスがガルパンとカエサルを襲撃した犯人だ。

そう言ったのは同じファビウス一門のシビル。

彼は何を言いたくてこの話をもってきたのだろうか?

シビル・ファビウス・マクシムスの発言で場内はシーンと静まりかえった。


それでもミヌチウスは動かず両手をあわせて肘を机にかけシビルと場内全体を見ている。

カエサルも、静かにシビルを見ていた。

ガルパンは顔を真っ赤にしているが他の人たちも何を言っているんだ、と言う感じになっていた。


「それで、続きをお話いただけますか、シビル様。」そう促したのは、中年の女神官だった。

「シビル様のお話はそこで終わりではないようですので、ぜひご自身の想像をわたくしどもに共有くださいな。」


「ふふふ、アルテミス神殿の神官長様にそういわれると仕方ないですね。」

そういいながら、シビルは芝居がかった大きな動きで手を広げて再び喋りだした。

「マリナスと言う男は、誇り高い男でしたが、度が過ぎてしまったのだと思っています。

そして彼の行動の結果として、本人は死によって償うことになったのです。」

そういうと、ガルパンとカエサルに向かってゆっくり大きなお辞儀をした。


静まり返ったなかで、ガルパンが顔を赤らめさせている。

何か言いたいのだろう。

感情をあらわにしているガルパンを見てカエサルは自分が落ち着くのを感じて口を開く。

「シビル様、マリナス様が犯人であったと言える証拠はあるのでしょうか?」

シビルはカエサルの指摘に対して、自分の役割を終えた役者のように、興奮した面持ちをしていたが、カエサルの言葉で冷めたのか、冷ややかな目になっていう。

「私から言えることは、彼はそういった非情なことを平気でする人物であったということだけだ。」

「シビル様を疑うわけではありませんが、抗弁できないマリナス様に確固たる証拠もなしに罪をつけてしまうことにならないでしょうか。またガルパン殿や私も身内を攻撃された身としては、証拠なしで責任をマリナス様にあてるのは納得致しかねます。」

カエサルの意見にガルパンがたちあがりながら賛同した。

「カエサル殿の言われたとおりです。何かマリナス殿が犯人と示してください。」

とこちらはかなり強い口調だった。ガルパンの言葉にあわせて幕僚の多くも2人に同意した。


周りの反応を見ながらカエサルは考えた。

ガルパンとカエサルを襲ったのはマリナス。

それをカエサルに言ったのはエセイオスだった。

彼の情報は優れていた。レスボス島の時も、それ以前から彼の情報は頼りになっていた。

だからカエサルは裁判をするつもりもなかったため証拠を特に求めなかった。事実である理由までを確認してカエサルはマリナスを強襲したのだ。エセイオスも証拠を持って帰るまではしなかった。

果たして、彼にお願いすれば証拠は手に入ったのか?

また、同じレベルのものをシビルは出せるのだろうか?

もし、そのレベルの情報を持っているのであれば、カエサルがマリナスを強襲したことも知っていててもおかしくないのではないか?


どんどんと疑問が出てくるのを抑えて心を落ち着かせる。

まずは話の入口である、マリナスが嫉妬のあまりガルパンとカエサルを襲撃したことを認めないことが最善策だ、と感じていた。


実は、カエサル自身はマリナスを襲撃したことでかたき討ちをしてやったんだ、と言いたい気持ちもあった。

しかし、ファビウス一門を敵に回すと自分だけでなく、おじのアウレリウス・コッタや、ミヌチウスの立場が問題になるのである。

ここは上手く切り抜ける必要を感じていた。


ミヌチウスは一人静かな顔でシビルを見、場内の人々の動きを観察しているようだった。他の幕僚たちは迷っているがシビルの想像だけの話を受け入れる様子はない。

何人かの幕僚から、シビルの想像だけであればさすがに受け入れられません、という全うな言葉がでてきた。

このままであれば基本的にはガルパンとカエサルを擁護する感じになっていて、シビルの主張は簡単に

退けられつつあるだろう。


しかし、カエサルは何かおかしいとも思っていた。

シビルの話が想像の域をでないのであれば、このような神妙な場になる理由がないからだ。


よく観察するんだ。風向きは突然変わる。

シビルの自信はどこから来るのだろうか?

それも気になっていた。

彼は何か情報をつかんでいるのかもしれない。


シビルは幕僚たちからの認められないという意見を聞き、それでも話をつづけた。


「そうですか、皆さんに信じていただけないのは残念。ところで、私の属する一門、ファビウスは多くの著名な都市にクリエンテスをもっているんです。」

話が変わった。

場内の人々はシビルが何を言いだしたんだろうと思った。

「そのうちの一つにエフェソス付近ではビットウ家がそうなのですけどね。ビットウ家の一部にフェナ商会と言う最近力をつけてきた商会があります。」

一息をつきまわりを見る。そして笑顔で続けた。

「そこで出している膨れ上がったパンとはちみつ入りのワイン、そして苦味のあるオリーブ焼きが美味しくて、私もエフェソスに来たら行くようにしているんです。」

まだ誰もがシビルの話をなんとなく聞いていた。

「そこには情報屋がいることが多いんですよ。」

と言ってさらに一息つぐ。

流れが変わってきて、嫌な流れだとカエサルは思った。


「私も市井の人と交わるためにいくのですがそこで、エセイオスという人物と会いました。ローマの独裁官も重宝している情報収集の達人なんです。彼とたまたまここであったんですね。」

独裁官の情報屋なのか、というところで全員の空気が変わった。

シビルはその空気を感じ取り、満足しながら周りを見た。

カエサルは表情を変えずに言った。

「エセイオスと言えば、同じ名前の男が私の部下にいますね。もしかしてその男でしょうか?」

「ええ、その通りです、カエサル殿。彼は昨日の夜あなたと別れてどこにいったと思いますか?」

「さて、私は彼と親しくさせてもらいましたが、情報屋であることも知らなかったので、どこか酒を飲みにいったのではないでしょうかね。」

シビルは言った。

「おや、そうだったんですね、ご存じないというのはびっくりしました。彼は実はかなりの実力の情報の達人なんですよ。なぜ私がそんなことを知っているかというと元老院の枢軸で彼がスッラ様と会っているのをみたことがあるからです。

そして、そんな彼があなたの元にいるということはわかりますよね。全ての情報は彼を通してスッラ様にも私にも知らされてしまうのです。」

この場にいる全員が衝撃を受ける一言だった。

シビルにしてみては気持ちいいだろう。権力を傘にきてその場の全員を黙らせるようなことをしているのだから。

事実、スッラの情報官という名前が出てから、ガルパンは大人しくなったようだったし他の人々も神妙な面持ちになっていった。


カエサルは笑顔になって一言言った。

「それでは、私が今までしてきたローマのための行動はスッラ様にすべて報告がいっているのですね。」

シビルの目指す目的がわからないなかで、カエサルはシビルの切り札「独裁官の情報屋」

の情報をどう切り崩していくのか?

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