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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
ローマからの脱出

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フラミニア街道の闘い (改)

ローマを過ぎて、フラミニア街道沿いを行く

カエサルたちを追う男たちは何者か?

若きカエサルたちは、無事旅を続けることができるだろうか?

ローマの街道は拡大してきているローマの各都市をつなぎ、物流、情報を支えていた。道は全てレンガと石で舗装されており、緩やかな湾曲を描いていて雨がふっても道の端に流れて水溜まりもできない。天気の影響も受けにくい道だった。

だが、カエサルたちは、スッラから逃れるため、街道から少し離れた横並びの自然にできた道を歩いていた。

旅人が歩いてできた土と雑草で埋もれ気味のため、どうしてもスピードはおちる。

ところどころ飛び出した岩をよけながら、4人が小さな道を歩んでいると後ろから馬が2頭突然スピードをあげてカエサルたちに迫ってきた。


馬の先に槍が見えた。

「敵襲――ッ!?」

キロの鋭い悲鳴と同時に、激しい蹄の音が静寂を切り裂いた。

迫る二つの影。馬上から下卑た笑みを浮かべるのは、ローマの街で織物商に絡んでいたコルネリウス組。


カエサルは神がかり的な反射神経で槍の穂先を紙一重で躱し、泥の上に転がった。

「ヒハハハ! 逃げ回るだけがお得意の貧乏貴族様よぉ! スッラ様の指名手配犯として、じわじわとなぶり殺しにしてやる!」

馬上で圧倒的優位を確信し、勝ち誇る二人。


だが、立ち上がって服の汚れを払ったカエサルは、怯えるどころか――ひどく退屈そうにため息をついた。 「やあ、ブロックとジャーじゃないか。相変わらず服のセンスが最悪だね。田舎者丸出しだ」 「ビックロとジャリスだ、このガキがァ!」


カエサルはさらに首を傾げ、哀れむような目で馬を見つめた。

「ごめん、言葉が難しかったかな? じゃあ、そっちの茶色い毛の可愛いお馬さんに言おう。……可哀想に、背中にそんな汚い粗大ゴミを乗せられて。今からこのカエサルが、その荷物を下ろしてあげるからね?」

「貴様ァァァッ! コルネリウス組を舐めるなァ!!」


激昂した2人が、完全に冷静さを失って馬に鞭を入れる。突撃。それこそがカエサルの狙いだった。 「キロ、あれを!」

カエサルとキロが、荷物から引き抜いた巨大な布の両端を掴み、左右に目一杯広げた。

突如として出現した「布の壁」。

直前で視界を遮られた馬は恐怖に啼き、猛烈な勢いで急停止して後ろ足で立ち上がった。

「なっ――!?」 慣性の法則に従い、ビックロとジャリスの巨体が面白いように宙を舞う。

ドゴォッ!と鈍い音を立てて地面に叩きつけられた彼らは、落馬の衝撃で息すらできない。


そこへ、カエサルとキロの短剣が容赦なく閃いた。

「ガッ……、ア……ッ」

喉元を正確に貫かれ、血飛沫をあげて絶命する二人。

生々しい人間の死の手応えに、カエサルの心臓は破裂しそうなほどバクバクと脈打っていた。

手が震えそうだ。 だが――彼はすぐさま表情を「冷酷な強者」へと切り替えた。


少しの間をおいて、コルネリウス組の残り、徒歩組がカエサルたちの後ろに到着したのを感じた。




遅れて到着した徒歩の部下6人の前に、カエサルはわざと二人の死体を乱暴に投げ出した。 そして、返り血を浴びた広刃の剣を抜き放ち、ゾッとするような美しい笑みを浮かべて言い放つ。


「さあ――次はどの順番で『これ』になりたい?」


その圧倒的な覇気に、6人の男たちは完全に呑まれた。

一瞬で騎馬の二人を屠った「怪物」を前に、彼らは一斉に武器を捨て、地面に膝を突いた。

「お、お待ちくださいカエサル様! 抵抗の意思はありません!」


混成部隊のリーダー格である浅黒い男が、自分たちは戦争で徴兵されて巻き込まれて、さらに敗戦によって奴隷になったものであり、あの二人の暴虐に耐えかねていたのだと必死に弁明する。ガリア人3人は故郷へ帰りたがり、残りの3人はカエサルの従者になりたいと平伏した。


(……どうする? 人数が増えれば行軍速度が落ちる。裏切られるリスクもある) カエサルの脳裏に、自身の流儀が浮かぶ。

『一つ、大胆不敵であること。二つ、細部にこだわること。三つ、人には優しくすること』

直感を信じろ。

もし裏切られたら、その時はその時で切り捨てるだけだ。


カエサルは剣を収め、微笑んだ。

「いいだろう。ガリアの3人は故郷へ帰りなさい。……いつか私はガリアにも足を伸ばすつもりだからね。その時に私の名前を聞いたら、今日のことを思い出して歓迎してくれればいい」 ガリア人たちは歓喜して去っていった。キロが「あいつらの感謝なんて薄っぺらいぞ」と呆れるが、カエサルは「いいさ、未来に種を蒔いただけだよ」と楽しげに笑った。


こうして元コルネリウス組の3人を仲間に加え、7人となった一行は街道の脇を進む。 だが、激しい緊張の糸が切れたからか、あるいは人を殺めた重圧からか――翌日、カエサルとダインが突如として激しい高熱を発し、倒れてしまった。


「カエサル様!? しっかりしてください!」 激しく降り始める大雨の中、キロの指示でジジが見つけた薄暗い洞窟へと逃げ込む一行。


仲間が増えた直後の、まさかのカエサルの病倒れ。

嵐の咆哮が響く洞窟の中で、カエサルたちは絶体絶命の夜を迎えることになる――。

コルネリウス組の追手をうまく倒すことができたカエサルたち。

さらに降伏した者の中には自分に追随したいという者まで出た。

彼らはカエサルにどこまで従うだろう。

疑念がある中でカエサル自身は体調を崩してしまった。

洞窟に避難したカエサルたちは無事、アドリア海に面する町へ行けるのだろうか?

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