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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
豊かなるアシア
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提督の面前で

新任の徴税役人カヌレスに過剰な税を取られたイレイア商会。

カエサルはどうやってとりもどすのか?

カヌレスは重たい自分の腹を抱えながら、提督の邸内を急いでいた。


顔は真剣に考えごとをしている。

なぜ、自分がミヌチウス提督に呼び出されるのだろう?

思いあたる節は、正直いろいろある。

アヌアスから引き継いだエフェソスの市街の主な商人たちに、特別税として追加の税金をまきあげたことだ。それだけではなく、海の使用権として、漁民たちからも税を巻き上げていた。

ついでにいえば、エフェソス近郊の農村を管理している地方官吏にも復興税と言って金を巻き上げたのだった。

どれが問題だったのだろう?

それともすべて問題だったのか?

どきどきしながら、ミヌチウスのいる部屋に入る。


部屋にはいるなり、下を向いて声だけをあげる。

「ミヌチウス様、カヌレス参上いたしました。」

ミヌチウスは豪奢な椅子に座っていてテーブルの反対には誰かが同じように座っているようだった。

「おお、カヌレス、待っていたぞ。いくつか話したいことがあってお前を呼んだ。」

「ははっ、なんなりと。」と素早く応えるカヌレス。

ミヌチウスが話しかける。

「最近、レスボス島の復興のため、という名目で追加の税金をとっているという話だっがら本当か?」

「めっそうもない、そのようなこと噂にすぎないのではないでしょうか?」

「そうか、ならばいいがちょっと私の知っているところでそういった噂を聞いたので、新しく赴任したお前が、他の属州と同じ感じでエフェソスに来ていたら困ると思って呼んだのだ。」

とカヌレスを睨みながら言った。

「改めて伝えておくがアシア属州の税は所得の10%。ローマ市民と同じにしてある。それでも、エフェソスを中心に栄えているから、十分に過ぎる税が手に入ってくる。また今回のレスボス島についても戦費はかかったが街はほぼ無傷であったから金はそんなにかかっていないからな。だから徴税役人としてのお前は過剰な追加を行わず正確に実行するように。もし追加が必要な場合は必ず私に相談するようにな。」

カヌレスはミヌチウスが思った以上に税金の追加回収をさせない気持ちを前に出してきたため、今まで商人たちから集めてきたお金をどうごまかそうか、などと考え出した。

ミヌチウスは続けて話をする。

「エフェソスは豊かで今後はビティニアやレスボス島、キリキア地方との交流も活発化するだろうから、より豊かになるだろう。だから税をあげるよりも税を押さえてその分を様々な商売や田畑の開発に費やすことが良いのだ。わかるな。」

「ははー、ミヌチウス提督の優しさ、そして深慮が伺えます。私もお気持ちをたがえないように徴税の

仕事に当たらせていただきます。」

「ああ、ちょっとよからぬうわさだったので、新任のお前に話をしておこうと思ったのだ。」

「話はそこまでだ、では行け。」

「ははっ」

頭を床までさげて顔をあげてミヌチウスの顔を見る。

そこでカヌレスは固まってしまった。

ミヌチウスの横に座っているのは、最近会ったことのある痩身の若者、名をカエサルと言った、が座っていたからだ。


そして若者の手には板書があった。

カヌレスの心臓が飛び出そうになったのは、先日、どこかの商会に税金を増額に行ったときに書いた

板書を痩身の若者が手で遊ばせているのだった。

カヌレスが動かないで若者を見ているのをみてミヌチウスが聞く。

「どうした?」

「え、あ、いや。」とどもるカヌレス。

若者は目線をあげずに板書をもてあそんでいるままだ。


「あ、あのう・・・」と話をつなげようとした。

そこへミヌチウスが気が付いてカヌレスの前に立つ。

「おや、カヌレス、ごちらの若者をご存じかな?」と聞いてきた。

「ええ、まあ」簡単にあたりさわりのない回答をカヌレスがしたあとで、ミヌチウスが、

「おほん」とわざとらしい咳をした。

「カヌレス、お前もなかなかするどいな。この若者こそ、前回のレスボス島攻略戦で大活躍をしたカエサルだ。」

とカエサルをさしながら、自慢をはじめた。

「カエサルは知っているだろう?今回のレスボス島攻略戦で大活躍をした若者だ。ビティニアとの交渉、ビティニア軍と共にミティリーニを強襲し、内部にいたローマ軍を助けながら、我々の攻略を容易にした立役者だ。その活躍、ローマの人々を助けた勲功あって、市民冠をもらってもいる若者だ。」

自慢げにミヌチウスが言う。

「カエサル、こっちにいるカヌレスはアヌアスの親族でエフェソスの徴税役人をすることになった男だ。」

と丁寧に説明をする。

カエサルは相変わらず板書を持ちながら、カヌレスに頭を下げ

「こんにちわ、カヌレス様」と言った。

ひきつったような顔で再び頭を下げるカヌレスは全身から汗が出るのを感じた。

「むう」

「カエサル、カヌレスを知っているのか?」と聞くミヌチウス。

カエサルは笑顔でミヌチウスを見た。

そして、板書をもったまま口を開く。

「ええ、存じてあげております。私の支援者でもあるイレイア商会にてお会いしました。」

そこで話を止める。

ミヌチウスは、「ほう、商会で何を?」とカヌレスを見る。


カヌレスは汗を吹き出しながら、「ええ、挨拶をさせていただき」

2人が怪訝な顔をするのが見えて下を向きながら

「そして・・・、えー」とどもりつづける。

そこへカエサルの声がつづいた。

「カヌレス様にお金をお渡ししたのです。イレイア商会の売上の5%分を。」

ミヌチウスが厳しい声で「何だと?」と言う。


そこへ若者の声が続いた。

「その代わりにローマ軍の船をゆずりうけたいというのが商会主の言葉でして。ちょうど、レスボス島の混乱も収まったなかで、交易の活性化が必要。そこへ商会主が目をつけて、カヌレス様にご相談をしたところなのです。」

「なるほど、そうなのか?」とミヌチウスはカヌレスに聞く。

「ええ、はいそのとおりです。」とカヌレス。

「ならばちょうど、軍船、運搬船が増えた分、余裕があるだろう。良い運搬船を商会に回してあげると良い。しかし、それでも値段がつりあうものか?」

「そうですね、まだ小規模な商会なので十分だと思いますが産業の活性化のためにその商会など幾つかに提督の許可証などをお渡ししてはいかがでしょうか?

まだレスボス島もローマ軍の管理下にあるので、許可証があれば商人達も動きやすくなるでしょう。」

「ほう、それは良い考えだな。しかし、その商人たちが信頼できるか」

「イレイア商会は今回の潜入に一役買ってもらっています。また他にも潜入とビティニアに同行した商人、レスボス島の商人で反ミティリーニ市長派の者にも知っているものがいますのでそのあたりに許可を頂ければありがたいですね。」

「なるほど。それは確かに信頼できそうだな。」

とうなずくミヌチウス。


自分に攻撃が来なさそうになったのを感じてカヌレスはおそるおそる顔をあげる。

すると、先日会った痩身の若者が、目を合わせて、片目をつぶって見せた。

ミヌチウス提督の前で、船と許可証を得ることが決まった。

カヌレスはどう動くだろうか?

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