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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
レスボス島攻略戦
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戦後処理、ミヌチウスの演説

ミティリーニの街で行われた戦いは、カエサルたちが公邸を守り続けていた。

なんとか守っている間に、カエサルたちの裏からローマ軍が現れた。


くすぶったような焦げ臭い匂いがあちこちでしていた。

街は大きな被害を受けていないぶん、被害があった場所が人々に規模は小さくとも戦争があった事実をを

印象づけた。


象徴的だったのは、商人たちが行き交い常に品々で溢れていた街角の立派な3階建ての商店が目印のように屋根の上にアテネの彫刻家が作ったという何かしらの女神像を飾っていたので、女神の曲がり角の店として知られていた。

この争いで館ごと崩れてしまい、女神は落ちて砕けてしまった。


実際にはローマ軍が来たときは大きな破壊は何も起きておらず、守備隊が北から戻ってきたときに、最後の反抗をして街の一部が崩されたのを多くの市民が隠れて見ており、その分前市長への不満が高まっていた。


また、街の攻防戦は守備隊が北の城壁を中心に守りを固めていたところ、港からの攻撃があって港が炎上、公邸をローマ軍が占拠したところを、慌てて引き返した守備隊が、城壁から攻めてきたローマ軍との挟撃にあい敗北したのだ。

多くの市民が感じた流れは市長と守備隊長は多くの民兵、傭兵を抱えながらローマ軍に翻弄されたように

見えたのも彼らの評価をさらに下げていた。


人々は、評価を下げた市長と守備隊長に代わり、ローマの前法務官というかなり偉い役職の人が来ている

ということで、ミティリーニはどうなるだろう、と心配をしていた。負けた都市の市民は奴隷として売られることも時には行われていたので、昨夜中に街を逃げようとした市民もいたのだが、城壁も港もローマ軍が抑えていたため、誰も逃げることはできなかった。

裕福な商人は門番をしていた兵士を買収しようとしたが、一蹴され、すごすごと自宅に戻り翌日を待つしかなかった。


一夜があけて、ローマの総督からの話があるとして市民は街の広場に集まった。

多くの市民が街の広場に集まっていた。


広場には、今まで市長が演説するための高い壇が常に置かれていた。


そこに、時間が来てミヌチウスが壇上に上がる。

市民が、ローマ兵が注目している中でゆっくりと市民を見て話を始めた。


「ミティリーニの市民諸君、私がアシアの総督を務めている、マルクス・ミヌチウス・ルフスだ。

先日、市長という地位を使って他国とつながり、ローマの統治に害を与えた前市長のエディプスという男を捕らえた。

裁判はローマで行われるが、ミティリーニの街を混乱に陥れ、多くの人々や街に危害を加えてきたことからも極刑は免れないと考える。そして、彼と共犯した首謀者の一味も同じである。

守備隊はその地位にあわせて任務を行ったのみであるが市長の過ちを正せなかったことは高位の指揮官について罪があったと考える。また、民兵については積極的に荷担しなかったものは特に罰を与えない。なぜならミティリーニの市民もローマの一員であるからだ。街を破壊した一部の傭兵などはその罪を償わせよう。」


ここまでの話で守備隊や民兵に家族がいる者たちはほっとしていた。

また、傭兵への扱いに同意する者もそれなりにいた。

さらにミヌチウスは続けた。

「また、エディプスが昔の価値観で街を収めていたが、今回の騒動がおきた背景には昔からのミティリーニのやり方と、ローマの法とルールに差があったことが原因だと考える。今後はミティリーニの街の基本的なルールは、ローマの法とルールが適用される。特に変わっていく点としては、ひとつ、ローマ、そしてレスボス島にいる多くの神の誰を崇めるかは個人の自由で特定の神をあがめている、いないを強要しない。ふたつ、商売は、どの誰がどこでするかも街のルール内で自由である。みっつ、身分によって婚姻ができないことを廃止する。よっつ、離婚をした者同士の結婚を認める。いつつ、同性への愛を理由にした他者への攻撃は、他の傷害と同じく扱われる。またそれを理由にした監禁の適用は認められない。

他にもあるだろうが、堅苦しくくも前市長エディプスの決めたルールは全て破棄される。そして、これからは自由で平和になり、正しい市長が行う施策をもとに、ミティリーニはローマの一部として

改めて発展し続けることになる。」


ミヌチウスが言い切ることで、歓声があがった。

ローマ軍、ビティニア軍がいるなかでなので、当然軍からは歓声があがったが、それ以外にも市民からの大きな歓声があがった。

その後もミヌチウスは、当面治安が安定するまで軍隊の一部を残し、戦いの中心になった市長の公邸を復旧させ、代官の住む館とすること。

また、過去の銃犯罪者はその量刑を確認し、窃盗や犯罪などの者はより厳しく、それ以外のエディプスの作ったルールで捉えられた人たちは自由とさせた。

その実施した項目は公正に見え、市民たちからは安堵の声とローマの支配を歓迎する声が多数だった。


ミティリーニの街を落として部隊が駐留する間、カエサルも同じくとどまった。正式には幕僚でもあり、

特別な任務をもらっていた小隊長でもあったが、小隊長の仕事はすべてルチャに任せきっており、自分が関わるつもりはないと言い切った。


そして、ミティリーニの守備隊に攻撃されかけたが、なんとか助かったメリサに大きなケガもなく、久しぶりに再会し、戦いが終わったことをを喜びあい、復興していくためにメリサ商会にいろいろと活躍してもらいたいという話をしているときに、ミヌチウスからのお呼びがかかった。


メリサは、

「カエサル、あんたの気持ちはわかったよ。いろいろありがとな。しっかり考えておくから総督と話をしてきな。」と送り出される。

笑顔で振り返りながらダインとジジを連れてローマ軍の陣地に入っていこうとすると、入口でトルバイに会う。

トルバイもミヌチウスに呼び出されていたようだった。

2人は、手をがっちりと取りあって握手をした。

「カエサル、今回の電撃的な作戦、見事だった。本当に思惑どおりにいくとはすごいな。」

「トルバイこそ、海を完全に支配していただき、ありがとうございました。ミティリーニの船がまったく見えなかったですよ。」

と笑顔で答える。

2人は笑いながら天幕に入っていった。

ミティリーニの攻略の戦いは終わった。

戦後処理はどうされていくのか。

そして、初めての戦争を経験したカエサルは何を思っているのか。


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