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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
法治国家ローマ
131/142

訴訟の内容

ついにドラベッラを訴えたカエサル。

どのような内容でドラベッラを追い詰めていくのだろうか?

ローマの裁判は朝からはじまる。

集まった聴衆は朝からの仕事を放りだしてこの裁判の行方を聞こうとしていた。

多くの聴衆が固唾を飲んで見守るなかで、裁判官が訴状を読み上げて、注目されたその裁判ははじまった。

訴訟人としてカエサルの名前が呼ばれて立ち上がる。

人々の注目を浴びることが好きな痩身の若者は、この日のために準備した純白のトーガを纏い、人々の目線が集まる場所に来ると役者のようにと周りを見渡してから、ゆっくりと壇上に上がった。壇上から聴衆にも目を配らせてから、カエサルはゆっくりと話し出した。

「この度、わたし、ガイウス・ユリウス・カエサルはグエナウス・コルネリウス・ドラベッラが行った属州統治に大きな不正があったことを訴えます。これはローマの属州統治の問題ではなくローマの信義の問題です。」


ローマの信義と言う言葉に聴衆がどよめく。


ローマ人は神々よりも自分たちの信義を重んずることを大切にしてきたからだ。

属州統治においても同じである。

そこに問題があったとはどういうことだ?

カエサルの投げかけは、多くの人の関心を引くことに成功した。


注目を浴びながら、カエサルはドラベッラがどのような点で不正をしたのか、を説明し始めた。


ローマの属州統治では、属州総督が知っている騎士階級たちを中心に徴税を任せる。

その任せ方は契約方式で、属州に総督が行くと騎士階級たちがその地域の徴税の権利を属州総督から買い上げる形をとっていた。そうすることで属州総督は安定的な税収が見込まれ、騎士階級たちは、自分たちのさじ加減で少し多めに税を取ったりしても言い訳ができるものだった。

そのような支配体制のため、属州総督と徴税役人を務める騎士階級の意向、考え方がその土地の治め方のすべてになるのだった。

カエサルが以前訪問した属州アシアの総督ミヌチウスは非常に公正な人物であった。そのため騎士階級にも過剰な税負担を各地方に求めないように厳しく管理していた。もちろん属州アシアが豊かな地方であったため過剰な税を課さなくても十分な見返りがあったことも事実である。

また、慈悲という二つ名を持つメテウス・ピウスの属州の支配も公正・公平であり属州の発展に大きく寄与していた。

しかし多くの属州ではそういった公正・公平な支配は行われず少なからずの利益を顧みる総督と騎士階級がいたのも事実である。


カエサルがドラベッラ訴えたのも属州総督として着任したドラベッラと騎士階級が繋がって利益を過剰に搾取したものだと思われた。

しかし、実態は違っていた。

訴えをカエサルに相談した属州マケドニアの商人ウィルヘンはドラベッラと繋がりは薄いがれっきとした騎士階級だった。

ウィルヘンは属州マケドニアを出身地としていたため、自身の故郷の安寧を願っていたため過剰な取り立てをする可能性を見過ごしたくないと考え、ドラベッラの統治期間に自分の出身地近辺の徴税役人をしたいと申し出た。

ドラベッラは快諾し、ウィルヘンは属州総督の物分かりの良さに安心して不安がる故郷の民を安心させることができてほっとしていた。

そこで勝手知ったる地域のためにゆっくりと徴税を行おうと考えていたウィルヘンが部下たちを連れて回り出した頃には、別の徴税役人がその地域の税をむしり取った後だった。


急いで自分が権利を購入したはずの場所からも引き返してドラベッラに面会を求めるも、近辺を警護する兵士たちに叩きのめされて追い払われてしまったという。その時に怪我も負わされて不自由な身体になってしまったのだ。


ドラベッラが別で雇った騎士階級はウィルヘンの故郷を禿げ鷹のようにむしり取っていった。

ウィルヘンにとっても、徴税の権利をできるだけ広範囲に買うことを目指していたために非常に多くの資産をドラベッラに納めていた。広範囲の地域で薄くとも利益を見込んでいた徴税が全く出来なくなってしまい、ウィルヘンは部下を養うこともできず一挙に破綻してしまう。故郷と自分の事業の板挟みにもなり三重苦となった。


ここにきてウィルヘンは自分の窮状を訴えたのだった。それをカエサルが情報として集め、大きな問題として起訴したのだった。


ここまでのカエサルの訴えで会場は大きくざわついていた。民衆は強くウィルヘンに共感しドラベッラへの怒りを露にしていた。ドラベッラが自己の利益を確保しつつ、ローマの信義をないがしろにしていた点にもかなりの不満が出る。元老院議員たち、特に良識派と言われる議員たちも徴税の重複をさせるという地方の荒廃を招く手段に不快感を見せた。


カエサルの訴えを聞いた法務官が、被告側の弁護士が意見をのべようとしていることに気づき、発言を許可した。

壇上に一人のギリシャ彫刻が動き出したような端正な顔の中年が聴衆たちを宥めるように出てきた。

ドラベッラは自分の持つ最高の切り札を出してきた。ローマ最高の弁護士と言われるホルテンシウス・ホルタンスだった。

カエサルの訴訟に対抗するためにドラベッラは

ローマ最高の弁護士ホルテンシウスを持ち出してきた。

カエサルはローマ最高の弁護士を相手に戦えるのだろうか?

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