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31 ディアナはソリアーノ王国へ戻る

 ディアナ、レイナ、エドモンド、ファビオの四人は、ソリアーノ王国へ行くために再び転移魔法陣へ向かった。

  

 今回ディアナたち四人は名前を変えて冒険者としてソリアーノの王都に入るので、冒険者のような恰好をしている。

 ディアナとレイナは先日地下霊廟に潜った時の格好で、エドモンドとファビオは今回は旅用の服ではなく冒険者らしい革鎧という格好だ。

 ソリアーノでは大量の魔物との戦いが予想されるので、胸当てなどの急所だけを守る防具ではなく、革ではあるが結構しっかりとした物を着込んでいた。

 さらに四人は、その上からフード付きの外套がいとうを着ている。


 そして今回は、ディアナが一人で馬に乗れるようになったのと、魔物の襲撃の前にソリアーノの王都に入れるように急いでいることもあり、馬車ではなくそれぞれが馬に乗っての移動だ。

 ディアナは、ワイバーン討伐の時よりもさらにうまく馬を操れている様だった。

 

 その道中では、レイナがこの機を利用してディアナに魔法の指導をしていた。

 例えば、馬と一体になって身体強化魔法を掛ける練習や、馬で走っている最中に四人を魔物避けの結界で覆う練習などだ。   

 その身体強化の練習のおかげで、当初は夜にモルコーネの宿場町に着く予定だったのが、夕方には到着することができた。

 

 宿場町に到着すると、馬を衛兵がいる詰所に預ける。

 明日は森の中を歩いて転移魔法陣を目指すので、馬はここに置いていくしかないからだ。


 その後四人は前回も泊まった格式の高い宿に入り、夕食までの時間を使って明日からの打ち合わせを始めた。

 

「では、明日は魔法陣で転移したら、ガポニ村に寄って私たちが預けてきた馬で行くという事でいいですね?」

エドモンドがレイナに確認した。


 前回コンフォーニへ転移魔法陣で来る際に、エドモンドたちが乗っていた馬はガポニ村に預けてあった。


 レイナが頷く。

「魔物が迫っているから、身体強化を使って明日中には王都の手前の宿場町まで行ってしまおう」


 森の中の歩きや、ガポニ村から馬で二人乗りで行く際にも馬に身体強化を掛けて、二日近く掛かる道のりを一日で行くことになる。


「じゃあ、王都へは予定通り明後日の夕方頃到着できそうね?」

と、ディアナ。


 今回は、魔物が押し寄せて来たら王都の門は全て閉じてしまうはずだ。

 だから、その前日には王都に入って情報収集などをしたいし、ディアナはできれば父親にも会いに行きたいと思っていた。


 するとレイナが、何かに気を取られたようだ。

「ん? 精霊が、向こうの王都に入る時に気をつけろ、と言っているな」


「え? 何があるの?」

「おそらく検問だろう」

「検問?」


 王都の門は普段なら衛兵が立っているだけで誰でもすんなり通れるのだが、今回は検問などをしている可能性があるわけだ。

 

「何のための検問でしょう?」

エドモンドがレイナに聞いた。


「そこまではわからない。精霊が忠告してくれるときは、多くの場合はヒントだけだからな」

「そうなんですか?」

「未来は常に揺れ動いているから、詳しく教えすぎてもかえってそれが裏目に出てしまうことがあるからな。確実性が高い場合には、ディアナが見たように夢ではっきり見せてくれることもある」


「検問だとしたら、私は名前を変えただけでごまかせるかしら」

と、ディアナ。


「もしそれが、ディアナを探すための検問なら難しいだろうな」

レイナが応えた。


「え? 私を?」

「可能性の一つとして考えておいたほうがいい。まあ、近隣で盗賊が出たのかもしれないが」


 近隣で盗賊が出ると、王都に盗賊が入るのを阻止するために検問をするという事はよくあることだ。

 しかし今回の場合は、バルサノ家がディアナの生存の可能性を考えて、公爵の立場を使って王都の衛兵に見張らせているのかもしれない。

 その場合は、ソリアーノでは金髪に緑の目は珍しいから一発でバレるだろう。

 

「魔物の襲来のどさくさに紛れて入ればいいんじゃないか?」

ファビオが言った。


「タイミングが合えばいいがな」

と、エドモンド。 


 あまり早く着くと魔物の襲来が伝わっておらず、どさくさに紛れることができないし、遅すぎると今度は魔物の襲撃に備えて門は閉じられてしまうだろう。


「物語で読んだ方法だけど、商人を買収するか何かして、私だけ酒樽か何かに隠れて入るのは?」

ディアナが案を出した。


「いや。その方法だと、うちの国の衛兵でも人探しの検問なら人が入れそうな大きさの荷物はすべて開けさせているから、まず無理だろうね」

「ダメかー。物語の様にはいかないのね?」


「こうしよう。とりあえずディアナは帽子か何かをかぶって、その髪を隠すといい。できればコイフがあればいいな」

レイナが言った。


「コイフ……」


 コイフとは頭をすっぽりと覆う防具で、顔の部分しか外に出さない様になっている。

 しかし、見た目があまり良くないので、ディアナはあまり乗り気ではない様だ。

 

「王都に入る時だけだ」 

「わかったわ。店が閉まる前に探してくる」


「あと目の色は、上手く夕日が照らしてくれれば、色は茶色のように見えるはずだ」


 ディアナの緑色の目にオレンジ色の夕日が当たれば、目は茶色に見えると思われる。


「茶色ならソリアーノで一般的な色だわ。じゃあ、私はできるだけ夕日に向かうように立てばいいのね?」


 レイナは頷いて続ける。

「あとは、ファビオが言うように、うまくすれば魔物襲来の混乱が助けになるかも知れない。精霊に魔物の動向を聞いて、なるべくいいタイミングになるように検問に並ぼう。後は私が口でなんとかするさ」


「上手くいきそうな気がしてきたわ」

 

「じゃあ次だ。それで、王都へ入ったらどうする? 宿をとるか、それともディアナの家へ行ってみるか」

ファビオが聞いた。


「実は王都には、昔使っていた隠れ家がある」

と、レイナ。


 ディアナが少し驚く。

「え?」


 レイナは、家ではなく隠れ家と言った。

 隠れ家を何に使っていたのか気になるところだが、今は聞かなかった。


「色々な魔法を掛けてあるから、まだ朽ちていないはずだ。そこを拠点にしよう。四人でアルファーノ家へ行ったら目立つからな」

「そうね。うちの門の前は人通りが結構あるわ」

「念には念を入れよう」



 そのあとディアナはエドモンドとともに、店が閉まる前に急いで帽子を売っている店を探しに行くと、そこで運良くかつらを売っているのを見つけた。

 そして、ライトブラウンのかつらを買ってきたのだった。

 ライトブラウンの髪ならソリアーノでは一般的な色だから、これでなんとか検問でバレないで済みそうだ。

 

 

 夕食を皆で済ませた後は、ディアナは風呂に入って、今は部屋でレイナとくつろいでいる。


 ここでディアナは、レイナに色々聞いてみたかったことを聞いてみることにした。

 コンフォーニの城では、レイナは王様と一緒にいることが多かったから、二人になる時間はあまりなかったからだ。

 

「聞いていい?」

「何だい?」


「レイナさんは何とかなると言ったけど、一万もの魔物の大群は、二人だけでなんとかなるものなの?」


 こういう事は、他の皆を心配させるといけないので、二人だけの時に聞きたかったのだ。


「そのことか。大丈夫さ」

「そんな簡単に言うけど」

「今回使うつもりなのは精霊魔法の『攻魔・回復の光』だが、それに限らず二人で波長を合わせて魔法を展開すると、『共鳴』という現象が起きるんだ」

「共鳴?」

「詳しいことは難しいから説明しないが、二人が力を合わせると、どんどん力が増幅されて何倍もの力が出る、という事だけ知っておけばいいさ」

「ふーん?」


 ちなみに聖属性魔法の「攻魔の玉」などは、術者が任意の場所に自由に飛ばして展開するのに対し、精霊魔法の「攻魔の光」は術者を中心にドーム状に広がっていく範囲魔法だ。

 同じ範囲の魔物を攻撃するなら、精霊魔法の「攻魔の光」の方が術者の使用魔力量が少なくて済む。

 

 そして一万匹の魔物であれば、おそらく戦場は数百メートル四方に広がるだろう。

 その範囲をカバーするためには精霊の力を借りたとしても一人の魔力では到底足らないから、こういう工夫をせざるを得ない。


 また、今回は魔物のせん滅と同時に、魔物との戦いで負傷した兵を回復させる為に「攻魔」と「回復」を同時に発動する予定だ。

「攻魔」と「回復」を別々に発動するよりも、これも相乗効果で三分の二ぐらいの魔力で済む。


「安心したかい?」

「ちょっとは」

「精霊の力を信じれば大丈夫さ。あと付け加えると、この『共鳴』は気の合う者同士や親族でないとうまくいかないことが多い。誰とでもできるわけじゃないから、覚えておくといい」

「わかったわ」


「他にも聞きたい事が?」


「そうそう。ワイバーンを撃ち落とした矢みたいの、あれは何?」

「ああ、そうだった。そのうち教えようと思っていたんだが、魔法弓だな。魔力で弓と矢を作って飛ばすのさ」

「なんか難しそう」

「そんなことは無いさ。魔法はイメージだから、できると思えばできる。寝るまで練習するかい?」

「うん」

 

「魔法だから矢だけ作って飛ばしてもいいんだが、それではイメージがわきにくいんだ。どうしても石を投げるぐらいのスピードになってしまう。ところが弓もあると、本物の弓矢と同じぐらいかそれ以上のスピードで放つことができるんだ」

「なんとなくわかるわ」


 実際にディアナはワイバーン討伐の時に「攻魔の玉」が石を投げたぐらいのスピードしか出ずに、ワイバーンによけられてしまったのを思い出していた。


「よし。じゃあ、お前さんの場合は聖属性の矢を飛ばしてみようか。無属性魔力の矢もできるんだが、この部屋の中で放つと壁に穴をあけてしまうからな」

「そうね」

 

 聖属性は魔物やアンデッドに当てれば傷を負わせることができ、人や動物なら癒し、植物に当たれば成長させたり活力を与えるという特殊な属性だ。

 それに比べ無属性の矢の場合は魔力の塊を飛ばす事になるので、もし人や物に当たれば傷つけてしまう。

 

 レイナはさっそく見本を見せる。

「魔法弓・聖矢」 


 すると、レイナの左手に魔力で出来た弓と聖属性の光り輝く矢が、弓につがえた状態で現れる。 

 

「すごいわ」


「こうやって、実際に弓矢を撃つようにして使うんだ。狙いが多少ずれても、矢が飛んでいる最中に軌道修正もできる」


 レイナは、弓を引き絞って壁に向かって矢を放った。 

 矢は勢いよく飛び、壁に当たって消える。

 それと同時に、弓の方も消えた。


「さあ、やってごらん」

と、レイナ。


 ディアナは見よう見まねでやってみる。

「魔法弓・聖矢」


 一瞬、レイナと同じような弓矢が現れたが、すぐに消えてしまう。

 

「集中して、イメージを持ち続けて」

「うん」 

「さあ、もう一回」


 その晩は、寝る時間まで魔法弓の練習をしたのだった。

 

 

 翌朝は四人は早めに宿を立ち、町の裏から続くなだらかな斜面を歩いて登り、転移魔法陣がある森へ入る。

 途中では魔物が現れたが、今の四人には何の障害にもならなかった。

 

 二時間ほどで転移魔法陣の建物に到着すると、すぐに魔法陣でソリアーノへ転移する。

 そして今度は、エドモンドたちが馬を預けてあるガポニ村へ向かった。

 数日前にオーガを倒した村だ。


 今回はどちらの森でも、四人は身体強化を軽く掛けて走ったので、ガポニ村には昼過ぎに着くことができた。



「村長」

レイナが外で仕事をしていた村長に声を掛けた。


「ああ、これはレイナさん皆さん。おかえりなさい」

「なにか変わったことはあったか?」 

「あれから特にありませんが……でも、そういえばこの二日ぐらいの事ですが、いやに鳥が北の方から飛んできますね」


 それを聞いて四人は目を見かわした。

 鳥は、おそらく魔物の大群から逃げてきたのだと思われるからだ。


「村長。実は魔物の大群が北から王都方面に向かっている様なんだ」

「なんですと?」

「こちらの方までは来ないとは思うが、念の為にこの数日間は注意しておいた方がいい」

「わかりました。見張りを立てるようにしましょう。教えて頂き、ありがとうございます」


「それで今日は、預けた馬を引き取りに来たんだ」

「そうでしたね。こちらへどうぞ」


 馬は元気だった。

 ちゃんと世話をしてくれていた様だ。


「村長。馬の世話をありがとう」

エドモンドはそう言って、村長に馬の世話賃を払おうとする。


「いえ、皆様にはお世話になっていますので、これぐらいのことでお金を頂くわけには」

「いや、もしかすると次もあるかも知れないので、その時に頼みづらくなってしまうから受け取って欲しい」

「そうですか。わかりました」


 

 馬は二頭なので四人はそこからは二人乗りで出発し、街道を王都方面へ向かった。

 

 もちろん、エドモンドとディアナが一緒で、レイナとファビオがもう一頭に乗る。

 エドモンドが手綱を握ってその前にディアナが乗る形なのに対して、もう一方はレイナが手綱を握って、その後ろにファビオが乗る形となった。


 今日の目的地の宿場町までは距離があるが、レイナとディアナが自分の乗る馬に身体強化を軽く掛けることによって、二人乗りでも馬がバテないようにして馬を走らせたのだった。

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