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18 ディアナは再会する

 レイナとディアナは森の中を走って、ガポニ村へ向かっている。

 

 今回二人が使っているのは身体強化魔法だから防御力も上昇しているので、木の枝などが当たっても引っ掻き傷などを負う事は一切ない。 

 木が邪魔になるので全力疾走は出来ないが、それでも馬の駆け足程度の速さで木々の間を駆け抜けていた。

 

 レイナは男性のようなズボンを履いているから問題ないが、ディアナはロングスカートなので、少しはしたないがすそを持ち上げて走っている。

 少し走りにくそうだが、なんとかレイナについていく事が出来ていた。

 しかしそれもあってか、先程ディアナは勢い余って木に思いきりぶつかってしまったのだが、身体強化のおかげで逆に木の方が折れたのはご愛敬ということにしておこう。

 

 二人はガポニ村まで数百メートルのところまでやって来ると、そこで一旦止まり身体強化を解除した。


「よく最後までついてこれたな」

と、レイナ。


「ふぅ。なんとかなったわ。でも、明日は筋肉痛になりそうよ」

「お前さんは、基礎的な筋力や体力も上げたほうがいいな」

「そちらは、少しずつでもいいわよね?」

「そうだな。まあしかし、これだけできれば身体強化の魔法は満点だ。あとは何回も使っているうちに、使用魔力量はもっと減らせるだろう」

「ここまで出来るようになったのは、いい師匠のおかげね。でも、うれしいわ。自分がこんなことが出来るようになるなんて、思いもしなかった」

「ふふ。まだまだこれからさ。さて、ここからは普通に歩いて村に行こうか」

「うん」

 

 この辺りまで来ると、村人も森に入るときによく通るのだろう。踏み固められた細い道が出来ているために歩きやすい。

 さらに、もうすぐ森を抜けるようで、前方の木々の間から向こうの開けた景色が見えてきた。


 ところが、あと数メートルで森を抜けようかという所で、前を歩くレイナが歩みを止めた。

「村の方から魔物の気配がする」


「え? 村が襲われているの?」

「そうらしいな」

「どうするの?」


「精霊がこちらに導いたんだ。私たちで対処できる相手だと思う。そして、おそらくその魔物を倒せば、私たちにとってもいい方向に物事が進むにはずだ」

「なるほどね」

「でも、いいかい。油断するんじゃないよ」

「わかった」


 そこから村までは、あと四百メートルほどだ。

 途中には村とその周りにある畑を囲む簡単な柵があるが、二人はその柵につけられた扉を開けて中に入る。

 そして、畑の中の道を慎重に進んでいった。

 

 二人は村に入ると、家の陰から村の中の様子を探る。

 すると、村の中で暴れていた魔物はオーガが一体だった。

 

 オーガとは、身長が二メートル半近くあり、筋肉隆々の人の形をしている。

 容姿は鬼の様で頭に角が二本生え、力が強く、他の魔物より頭が良いので武器も使う。

 騎士が十人がかりでも倒せるかどうかという相手で、一体でも厄介な魔物だ。 

 石オノのような武器を自分で作る個体もいるが、このオーガは手作りのこん棒を振り回していた。

 

 二人は見つかるといけないので、一旦顔を引っ込める。

 

「こんなところにオーガがいるなんてな」

と、レイナ。


「普段はいないの?」

「普段は山奥で動物などを狩って生活しているが、こんな人里に降りてくることはあまりない。やつの狙いは他の魔物と同様、人間や家畜だ」

「強いの?」 

「わりと強いが、普通のオーガだから私たちにかかればそれ程でもないさ」

「そうなのね?」


 ディアナへの説明が終わると、レイナは打って出るタイミングを計るために、再びオーガの方をのぞいた。

 レイナの方が強いと言っても、オーガがレイナたちを見つければ、近くの石や木材などを投げてくるかもしれない。

 慣れていないディアナがよけられずにケガをする可能性もあるから、できれば背後から忍び寄って確実に仕留めたかった。


「おや? オーガと対峙している剣士がいるな。旅姿をしていて、冒険者という雰囲気でもない」

 

 そう言われて、ディアナも半分顔を出してそちらを見る。

 先ほどはオーガの向こう側にいたようでよくわからなかったが、今は対峙している二人の姿がはっきりと見えた。

 

「あっ。エドモンド様とファビオ様だわ」


「ほぅ。あれが、お前さんの彼氏かい」

「い、いえ。まだ彼氏では……」

「おっと、苦戦しているようだ。助けに入るぞ」

「うん」 



 △▽△▽△▽△▽△▽△▽

 


 エドモンドとファビオは、結局二人で村に助けに来たのだが、さすがにオーガが相手では手を焼いていた。

 

 オーガがこん棒を振り上げて殴りかかって来る。

 こん棒と言っても、体の大きなオーガが振り回しているこん棒は、長さが一メートル半ちょっと、太さは一番太いところで三十センチ近くもある。

 二人は後ろに飛びのいてそれをぎりぎりでよけると、こん棒は先ほどまで二人がいた地面にめり込んだ。

 これが当たれば、最低でも骨折は間違いないだろう。

 

 するとオーガはジャンプして二人との距離を詰めてくる。

 再び振り下ろされたこん棒を今度は二人は左右に分かれてよけるが、オーガは振り下ろしたこん棒を地面の反発を利用して、そのまますぐに横に振ってオーガの右側によけたエドモンドに当てにいった。

 しかし、エドモンドはまだ態勢が十分ではなく、これをけることは難しそうだ。

 

「魔法の盾」


 女性の声がしたかと思うと、オーガのこん棒が途中で見えない何かにぶつかって跳ね返される。


「ウガ?」

オーガも何が起きたのかわからない様だ。

 一瞬戸惑っているようだった。

 

「身体強化」


 再び後方から声がすると、エドモンドとファビオに力が湧いてくる感覚がした。

 二人に声の方を確認する余裕はないが、聞いたことがある声だと思った。

 もしや、という気持ちもあるが、今は狂暴で素早いオーガから目を逸らせない。

 

 もちろん今の魔法は、ディアナが二人が戦っている背後の家の陰に回り込み、そこからこの数日間の練習の成果を見せたのだ。

 しかし、攻魔の玉などの魔法を使い自分で魔物を退治しなかったのは、彼らに花を持たせるためである。

 レイナが、その方がいいと助言したのだ。

「男に花を持たせるのが、長くうまくやっていくコツだよ」と。

 

 エドモンドとファビオは剣でオーガに切りかかると、今まで近づけずに傷も負わせることができなかったオーガの体に初めて刃が当たった。

 素早さも上がっているようだ。

 二人はお互いに目で合図すると、さらに攻撃に出る。

 立場が逆転し、オーガは傷を負って必死にこん棒を振り回す。

 そのこん棒がファビオの肩をかすったが、彼は不思議な力に守られていてケガをすることは無かった。

 

 それを見て、これはいけると思ったようだ。

 ファビオは単独でオーガに突進し、振り回されたこん棒をタイミングを合わせて腕で抱え込む。

 そして、オーガの動きを一時的に止めることに成功した。

 

 その機を逃さず、エドモンドが横から飛び掛かる。

 エドモンドも身体強化で、いつもより脚力や腕力が上がっている。

 エドモンドが振り下ろした剣はオーガの首をたやすく切り落とし、大きく重いオーガの体は、大きな音とともに倒れこんだ。

 

「やったぞ!」「やったな!」

エドモンドとファビオが喜びを分かち合った。


「強化解除」

再び女性の声。


「そうだ。今の声」

エドモンドがすぐに声の方を見る。


 するとディアナが家の陰から出てきたところだった。

 

 エドモンドは思わず剣を捨てて走り寄り、彼女を抱きしめた。

「ディアナ! 会いたかった!」


 エドモンドはディアナしか見えていない様だ。

 レイナが近くにいるのにも気が付いていない。 


「え、エドモンド様?」


 ディアナは、エドモンドが急に抱きしめてきたので驚いた。

 最後に会った時は、そこまでの関係では無かったからだ。 

 それがいつの間にかエドモンドの言葉遣いも親し気になっているし、本名も知っている。

 しかし、すぐに自分もエドモンドの背に手を回した。

 ディアナも彼に対する思いが募っていたからだ。


 しばらくすると二人は体を少しだけ離して、今度はお互いの目を見つめあう。

 しかし、お互いに両手は相手の腕などに触れたまま離してはいない。

 

「無事でよかった」

「でも、私の本名を?」

「ソフィア殿からすべてを聞いて、それで君を探しに来たんだ」

「そうでしたのね?」


「あぁ。もう二人の間でその堅ぐるしい口調はやめよう」

「え、えぇ。わかったわ。エドモンド」


「ディアナ。その髪飾りをしてくれているんだね?」


 ディアナは小屋を出てくる際に、エドモンドからもらった髪飾りだけは付けてきていた。

 身体強化魔法は服や髪飾りなども含めて全身を覆うので、走ってきても落とすようなことはない。


「これだけは、魔物から逃げる時に持ってきたの」

「うれしいよ」 


「それにしても、今のは素晴らしい活躍だったわ」

「それを言うなら君も。あれは魔法なのかい?」


「ゴホン」

そこに、咳払せきばらいが聞こえた。


 エドモンドとディアナがそちらを見ると、レイナとファビオが二人の熱に当てられて困ったような顔をしている。

 

「あっ、紹介するわ。エルフのレイナさんよ」

ディアナがエドモンドに紹介した。


「え?」

「そう。たぶんあなたが探していた人」


「レイナさんって。もしかしてあなたは、あの?」


 どうやら、エドモンドはレイナの名前を知っていたらしい。

 彼女は今は森の中で一人で暮らしているが、昔は有名だったのだろう。

 そしてエドモンドは、この国にエルフがいるという噂は聞いていたのだろうが、誰がいるかまでは知らなかったようだ。


「知っていたの?」 

「昔の文献で読んだんだが……」

「でも、まずは紹介するわね? レイナさん、こちらがエドモンドさん。そして、たしか従者でいいのよね? ファビオさんよ」


「エドモンドです」

「従者で合っていますよ。ファビオです」


「ああ、よろしく。レイナだ。詳しい話は後でな。まずはケガ人がいれば先に治さないと」


 エドモンドがすぐにも話をしたそうな顔をしていたので、そう言ったのだ。


 周りを見回すと、村人たちが隠れていた所から恐る恐る出てくる。

 ファビオは、拾っておいたエドモンドの剣をエドモンドに返した。

 

 少し遅れて、そこに六十代ぐらいの村長もやってきた。

「ありがとうございます。オーガがやってきて、どうなる事かと思いました」


「ケガをしている者は?」

レイナが聞いた。


「おります」

「では、まずケガ人を治そう」

「いつもありがとうございます」


 レイナはこの村にも時々来て、病人やケガ人を治しているから元々顔見知りだ。

 いつもはその見返りに、食材などを分けてもらっている。


 まずは、レイナとディアナが手分けしてケガ人を治していった。

 エドモンドたちが早く駆け付けたおかげだろう、壊れている家はあるが、オーガに食べられた人間はいなかったようだ。

 

  

 ケガ人の手当てが終わると、村長が言ってくる。

「何もない村ですが、うたげでも催しましょう」


「いや、それより今は四人で話せる場所を貸してくれないか?」

と、エドモンド。


「わかりました。それではうちの居間をお使いください」

「ありがとう」


 四人は村長の家の居間を借りて、これまでの事を話すことにした。

馬の駆け足の速さは約30km/hです。


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― 新着の感想 ―
[一言] ついに再会になりましたね(笑)。 レイナに用があるエドモンドにとって色々と物事が進んだ話だと思うのでこの先がどうなるかですね。
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