お土産屋さんの店員を泥棒犯から助けたら、昔付き合っていた元カノだった。〜それまでに犯人を好き放題にしました〜
「もう人生終わらせるか」
俺は中村龍二。
高2の春でゴールデンウィーク中の出来事だ。
もう人生に希望が見出せなくて自転車を漕ぎ始める。
人生を終わらせる理由なんて幾らでも思い付く。
最大の原因は所属していたブレイクダンス部を追放されたことだ。
俺は真面目に練習に励んでいたのに、奴らはサボって女遊びを繰り返した。
それがやがて、
「お前だけ気合入れ過ぎててキモイんだよ」
「俺は練習頑張ってますよアピールで俺らへの当て付けのつもりか?」
「目障りなんだよ失せろ」
と言われて口論の末に、追い出されたのだ。
「──人生だ?くっだらねえ。こんな現実クソ食らえ」
あんな奴らと今後も部活を続けていくくらいなら辞めた方が何倍もマシだ。
けどそういえば中学時代に彼女にも振られたんだっけ。
毎日ラブラブで楽しく過ごせてたはずなのに。
なんでこうなったんだろうな。
それから両親が俺の可愛い小3の妹を引き連れてるときに、目の前で車に跳ねられてしまったのだ。
丁度去年の出来事だったな。
「今日の晩御飯は龍二が大好きなパスタよ」と世界で1番美味しいジュノベーゼを作る母親も。
「どうした〜?何があったっていうんだよ。お父さんなんでも相談になるから話してみ?」とこういうときに真摯に俺に寄り添ってくれる自慢の父も。
なにより、もう小3の妹の「お兄ちゃん、おんぶしてー!」の声が聞こえなくなった。あの小さい掌の感触を忘れかけている自分のことも大嫌いだ。
運転手は御免なさいと何度も俺に土下座して、今でも俺の懐へと大金を送ってくれていたが今更過ぎる。
金が寂しさを埋めることは絶対にありえない。そもそも御免なさいで済むなら警察は不要だし、今更ながらスマホの愚かさを悔い改めても遅えんだよドアホが。
いや、もう無駄だな。
考えるだけ無駄だ。
無駄無駄。
とりあえずこのまま自殺名スポット東尋坊を目指して漕ぎ続けるか。
やりたかったことを出来なくなり、愛する人にも捨てられて、家族も失った記憶が蘇った結果。
猛烈なやるせなさと喪失感で押し潰されそうだ。
けどもう正直に言って、辛い人生にはもう飽きた。
──俺は、自殺することにした。
今の時刻は夜の10時だ。
周りの景色もほぼ真っ暗なので不気味な雰囲気だ。
当然俺の自転車のライトだけが頼りだ。
すでに4時間漕いでるせいでケツが張り裂けそうな痛みに襲われてるんだが、些細な問題は放置して坂道を登り続ける。
あともう少しだけ頑張るだけでゴール出来るんだ。
あとほんの少しだけ頑張ろう。
ロードバイクとスマホ以外の全ては、もう家に置いてきた。
もう帰る場所も無いし居場所も無くなったから当然だ。
もう本気で人生とはサヨナラする覚悟は出来ている。
「あ……猛烈に喉が渇いてきたぞ……」
馬鹿みたいな距離と時間を愚直に漕ぎ続けたせいで、筋肉痛に合わせて滝汗を掻いてる状態だ。
今すぐに喉の渇きを潤したい。
近くに自販機無いかな。
けど周りに光源が全く見当たらないぞ。
参ったな。
脱水症で死ぬのか俺は。
それはそれで東尋坊に行く手間が省ける。
けどやっぱり嫌だな。
死ぬ時は苦しみを感じる暇も無い一瞬が良い。
そのまま進んでいると、やがて光は見えてきた。
あれは、お土産屋さんだ。
こんなところにお店があったのか。
マジで助かったぞ……ラムネ瓶も売ってるらしい。
薬やってる人がやっと新しい薬を手に入れたようだ。
当たり前かもだが駐輪中のチャリは俺だけのようだ。
片隅で真っ黒い車が一台止まってるだけだな。
まあわざわざこんあ夜中にこんな場所まで来る人は居ないか。
見た感じ周りは田んぼや畑ばっかりだしな。
何はともあれ、急いで中へと駆け付ける。
中へと入ると涼しい空気が俺を火照った体を冷やしてくれた。
これは最高だ……、涼し過ぎるぞ。
「いらっしゃっせ〜」
そんな気怠げな声がカウンター越しから放たれる。
けどどうやら座って動画を見てるようでサボってるな。
帽子も被っていて猫背なので可愛いか判断がつかない。
マスクも被ってるけど風邪かな、というより。
おいおいここはラオスかよ。
日本でこんなに堂々とサボってるなんて大した度胸だな。
けど自殺志願者の俺にとっては有難い対応だと言える。
「くっ……うぅ……」
完全にやらかした。
汗だくの体を放置したまま涼しい環境に身を投げ出せば、何が起きるのかを過去に経験したはずだ。
猛烈にお腹が痛くなった。
これは……沢山出そうだぞ。
「トイレ……お借りします!」
「どぞどぞ〜」
店員さんに一言入れてダッシュでトイレに駆け込んだ。
間違えて女性用に入ってしまったが許してくれ。
※
はあ……やっと地獄から解放された。
しばらくはひたすら強烈な腹痛に襲われて10分以上壁にもたれたりしながら格闘していた。
冗談抜きで死ぬかと思ったわ。
ズボンを下ろしたままの遺体がトイレの個室で発見される……なんて間抜けな死に様だ。
せめて死に場所と死に方ぐらいは俺に選ばせろ。
というか俺さっきから何やってんだよ。
部活の奴らと仲間割れした腹いせにぷらり旅ってか?
なんとも阿保なシナリオだ。
──あ。
俺の可愛い妹の笑顔……思い出しただけで泣きそうになる。
ゲームばかりやらずにもっと構ってやれば良かったな。
初めて自転車に乗る練習に付き合ってたときに、めんどくさがらずに支えてやれば良かったな。
おもちゃが壊れちゃったときに舌打ちしてないで、頭を優しく撫でてあげれば良かったな。
というか悪ふざけで頬っぺたにチュウしてくるのを手で制してないで、素直に好意に甘えておけば良かったな。
──本当にごめん……。
本当にごめんな。
こんな、ダメな兄貴で。
今更で遅過ぎたかもだけど、そっち行くからな。
そしたらまた一緒にごっこ遊びでもして行こうな。
涙袋で溜まった涙を拭き取るとトイレの扉を出た。
さっさとバナナ&ミルクジュースでも買って東尋坊行くか。
お土産のドリンクコーナーへと足を運んだ瞬間だった。
「だからさっさと金寄越せっつってんでしょ!?言うこと聞かねえとぶっ殺すぞアンタ!!」
耳障りな怒鳴り声が聞こえて来た。
この期に及んでなんだってんだよ、全く。
けどもう俺には関係ないか。
そんなことよりジュースはどこだ……とあった。
バナナ&ミルクジュースを2本持つとレジへ持っていった。
ああ、なるほど。
予想通り過ぎて溜め息すら出るレベルだった。
ニット帽とマスクにサングラスをかけた、目視暫定アラサーの女性がレジの女の子に刃物を向けて怒鳴っていた。
「早く金を寄越しなさいッ!!」
「うぐっ……ごべん……なざぁい……はい……ひっ」
そりゃ誰でもいざ生殺与奪の権を相手に握られていたら泣き叫ぶものだろう。大泣きしながら震えた手で必死にレジを操作していても無理は無い。手を差し出したようだが、500円玉数枚だけだぞ。
人は追い詰められた時に本性が現れるというが、どんだけガメツイんだよこの店員さん。流石に自殺志願者の俺でも引いてしまうレベルだぞ。
「ひぐっ……あの……これを……ど、どうぞ……」
「はあああああ〜!?アンタバカなの?死ぬの?アタシは本気よ、おちょくってんじゃないわ!!このアタシがこんな真似してまでたった数千円で満足できるわけないでしょ!?金全部出しな!!アタシの諭吉も全員集めてここで前に倣えさせな!」
「ひぃっ!……す、ずびばせん、でしたぁっ!……ぐすっ……!」
確かに。
命が奪われんとされてるってのに反射的に金を守るのか普通?
女性の更なる怒号を間に受けた店員さんが恐怖でついに大粒の涙を流し始めてて、うわあ……なんか物凄い可哀想だな。
けど心底つまんねーから早く用を済ませてくんねーかな。
さっきからずっとおばさんの綺麗なヒップを観察しながら後ろに並んでるんだが、刃物を突き刺すモーションしてたときに割と体型が整ってるようだな。
──これはチャンスかもしれないな。
そんなことを思っているとEカップの双丘が俺の方を振り向いたようだ。
反射的に挨拶を飛ばしてしまう。
「今晩は。今夜も月が綺麗ですね」
「こんばんは……ってアンタ何言ってんのよッ!?」
おばさんのムンクの叫び声が店内へと響く。
おいおいそんな風に発声してたら声が汚くなっちゃうぞ。
「どうしたんですか急に?声潰れちゃいますよ」
「潰れちゃうって、アンタ……はぁあ!?ていうかどこから来たんだよアンタ!!」
「どこって、トイレですよ。丁度うんこしてたんです」
「だから臭いのね……じゃなくてっ!!アンタこの状況分かってるの!?」
うわやべえ今気づいた。
──トイレ流すの忘れたせいでクソの匂いが店内に少し充満してることに。
完全に営業妨害だなこれはしくじった。
「状況って、おばさんが泥棒ごっこしてるんですよね?」
「ごっこじゃないしアタシは本気よ!!なんでそうやって落ち着いた心構えでしれっと挨拶飛ばせたのよ!?つーかアタシはまだ32よおばさん呼ぶなっ!!」
ふむふむ……32歳の女性といえば妊娠適齢期の真っ最中じゃないか。推理してみたところキャバ嬢を追いやられたが金集めのために自暴自棄に駆られたかな。
「ああ、すいません。もしかして『月が綺麗ですね』で元カレの告白場面を思い出しましたか?お恥ずかしい限りですが俺もそうなんですよアハハ……」
またどうでも記憶が一瞬フラッシュバックして死にたくなったかもしれない。
「そう、あの頃が懐かしいわね……じゃなくてっ!?アンタどこかおかしいわよ!?良い加減にTPO弁えたらどうなのっ!?」
なんで俺が強盗犯に指導されなきゃならねえんだよ。
「お姉さんもしかして生理でも止まってるんですか?そんなカリカリしないで下さいよ」
「なっ!?女性に向かってあまりにも失礼よ!!いい加減にしてッ!!」
「ああなるほど便秘の方でしたか。それでそっちもカリカリしてたんですね。ウブなもんで上手く察せなくてすいません。てへっ。丁度俺の手元に食物繊維が豊富なバナナジュースがあるので、良かったら一緒に飲みましょう」
そうやって戯けながらジュースの2本目を差し出してみる。
「ええ、喜んで頂くわ……ってやっぱりバカでしょ!?ていうかさっきから異常に落ち着いてるのがおかしいわよアンタ一体何者なのッ!?」
「ただ自殺しに東尋坊へ向かってた世捨て人ですよ」
「根性腐ってるわねッ!!」
──はいブーメラン。
しかも完全に余計なお世話だアホンダラ。
ていうかこのおばさんやけにテンションが高いな。
しかもさっきから甲高いソプラノ音が少々耳障りだ落ち着いてくれよ。
店員さんもまだまだ椅子の上で体育座りで泣き続けてるようだし。
「そんなことよりもクソガキ!アタシを舐めてるわね!?」
「まだ舐めてませんよ?」
「アタシに人が殺せないんだと舐めてるんでしょ!?」
ああそっちの方の意味だったのか。
俺はもうヤケクソな状態なんだしそれも悪くないかもな。
そんなことを思いながらもついに俺にまで刃物を向けてきた。
昨日までの俺なら腰が引けて全力で逃亡していただろうが、胸にポッカリと空洞が開いてしまった今の俺にはただ『刃物が突きつけられている』という情報のみで事態が完結し、感情が掻き立てられることは決して無いのだ。
「アンタを先にぶっ殺すわよ!!大人を甘く見てると痛いめにあわせるわよ!!」
「……だったらやってみれば?」
「はっ?」
なんとも気が抜けた声だなおばさん。ほんとにやる気あるのかこの人は?
期待外れも甚だしくて敬意も無くなった。
まあ最初から尊敬なんてしちゃいなかったが。
「だから殺してみれば、って。それに言ってるじゃんさっきから。俺は自殺しに東尋坊を目指してるって」
「いや、だから、アンタ……そんな簡単に!」
「両親もまだ9歳の可愛い妹も交通事故で亡くし、元カノにも見捨てられ、唯一の生きる希望だったブレイクダンスをする仲間にも裏切られて……だからもうこのクソつまらない現実から解放されたいんだよ俺はぁ……」
「それっ……いやアンタ……可哀想な坊やね」
「殺すからには瞬殺で頼むよ。あと俺を殺した後はもうこんなクソつまんないことなんて辞めて、少しずつでも良いから真っ当に生きて行け。あそこの店員に構ってたら警察が来ちまうぞ」
最後に人助けで俺は死ねるのか。
それも悪くは無い死に様かも知れないが、やっぱり心残りが1つあるな。
ともかく俺はおばさんの両目を見て前進する。
やがて突き付けられた刃物を持っている腕を優しく持つと、自分の首へとその刃先を誘導して、虚な瞳で彼女の目の奥深くを覗き込んでいく。
「殺ってみろ」
「い、ぃ……」
「殺れよ」
「いや……」
「……人を殺す覚悟も無いのなら子宮から出直せや!!」
「いや、嫌なのよおおお!!」
んだよつまんねえな。この俺が折角のチャンスを逃すとでも思ったか?
折角お互いにとってのウィンウィンな提案を思いついたんだから、交渉のテーブルをそうあっさりと降りてるんじゃねえよ。刃物をあっさり手放して撤退し始めたぞこの半端野郎。だがこの俺から逃げられるとでも?
「アンタやっぱり頭イカれてるでしょ!!離してよッ!」
瞬時に泣き続けていた店員さんに店の奥へと引っ込むように合図を飛ばした。お、物分かりが良いようだな、少し驚くとちゃんと行ってくれたようだ。
そこで俺は扉を出てすぐに彼女の腕を掴んで壁へと追いやった。よしここで監視カメラからも見えなくなったし声も拾われなくなったな。
「まあ落ち着けよお姉さん。再度俺と取引でもしないか?」
「取引って何よ……!」
「お姉さんって実は最近ご無沙汰なんですよね?」
「はぁっ!?そりゃ旦那が仕事で忙しくなって……だから何だってのよ!?」
「俺とセックスしてくれ」
「…………はああああっ!?」
突拍子もない提案に頭が混乱してしまったか。
けど仕方ないだろこれは俺の天才的な閃きによるものだからだ。
しかも失うものがもう無い俺に、怖いものはもう何も無い。
俺が唯一持っている最後のカードを切る。
「お姉さんに朗報だけど、俺は交通事故が起きた日から多額の賠償金を加害者から得ていたんだよ。けど俺無欲だったから1000万円は貯まってるかもな」
「せ、せんまんッ!?」
事実あのどうしようもないジジイから大金を送られていたせいで寂しさは拭えなかったが、金銭的な余裕は増すばかりで持て余していたところなのだ。
彼女のマスクとサングラスをゆっくり下ろしながら交渉を続けていく。
「だから俺の筆下ろしをした後に全部やるよ」
「ゴクリ……1発だけで千万……」
「だからお姉さん最近レスられ妻だよね?」
「んなっ生意気よ、一々弄らないでもらえる!?……けど、1年ぶりね……」
改めて服の上から目の前の女性の身体を評価し直す。
特別色っぽくはないが、ふっくらとした唇。
服の上からでもわかる程の豊満な胸……実際に谷間がエロいな。
破れたジーパンの上からでもわかる程の盛り上がったケツも魅力的だ。
そして余程に性的欲求が溜まっているだろうな、少し目が泳いでる。
「だったらちょうど良いですね。俺とセックス……しようぜ?」
「……悪くは無さそうね……けど本当に良いの?」
「今更何を躊躇するんだよ、俺だって死ぬ前に1度は腰振りがしたいぞ?」
「っ……けど本当に良いの……こんなおばさんが初めてで……」
「何言ってるんですか……俺はそれが良いんですよ……」
実際に俺はオナニーするときのおかずでも大抵は人妻NTRものや、お母さんが娘と彼氏のセックスに割り込んでじっくり指導するものだったり、バツイチ子持ちの女性が酔っ払って若い男に快楽堕ちする類の動画が大好物だ。
「……ど、どうするの……?」
そして目の前にはスタイルが結構整っていて妊娠適齢期のど真ん中に位置している女性が居るのだ。大金を手に入れるためには俺を怒らせてはダメだと悟ったのか今ではすっかり大人しくて従順だ。良い雌犬の出来上がりだな。
「今ここで1回くらいしておこうか」
恐らくお金のためならば幾らでも股を開けるのだろう。
「え……こんな外でするの?今……」
「その方がお前のようなド変態も喜ぶんだろう?ほら今お前の大好きな野外プレイが出来るぞ。周りに人もやって来ないから安心してヤれるなぁ?」
「……で、でも……万が一もある、でしょ?」
どうでも良いこと心配しやがって、うるさい口だな。
その生意気にも言い訳を吐きまくる口を左手で持ち上げた。
再び彼女の瞳の奥を覗き込むようにすると、瞳孔が開いたようだ。
「っ……ほ、本当に今からするのね……?」
「何度もしつこいな。当然だろ。目の前に丁度良さそうな旬のオナホが有るんだ。生で突っ込んでやるから、俺の赤ちゃんを産んでくれよ?」
最後になるかも知れないからな。存分に俺を楽しませてくれよ?
「アタシを妊娠させる気なの……?」
「ふーん……そうか嫌なのか……それじゃあ千万円はゴミ箱に──」
「わ、わかったわ!あなたの子供を産むから全部アタシに頂戴っ……!」
期待通りで聞き分けの良い肉便器の役目を担ってくれて嬉しいよ。
人間は死ぬと分かっていれば子孫繁栄に営みたくなるのは本当らしいな。
中古品の初対面のおばさんでさえも俺を興奮させてくれる存在に変貌する。
もし俺たちの関係が明るみに出れば炎上するだろうな。
けどこのすぐ後に死のうとしている人間にはもう関係ない。
人生なんて所詮は好きなように生きて死ぬのが1番良いからな。
人生に悔いはもう無いんだ。
──最後に、俺が満足さえしていればそれでいい。
「あんた、名前なって言うんだ?」
「あ、アタシの名前はヒロミよ……」
「よしヒロミ今すぐその邪魔なニット帽と上着を脱げ」
「っ!……はい、喜んで……」
あの凶悪な胸の谷間の全体像が露わになる。
躊躇なく双方に手を伸ばして感触を少し楽しむ。
なんというか本当にマシュマロのような柔らかさだな。
俺の触り方が上手いのか唇を噛んで喘ぎ声を抑えようとしても、思わぬ快感でふっと緊張が解かれて、唇の隙間から淫靡な声が漏れる様がグッとくるな。
「っ……んっ!……ふ、……ん……っ!」
「今度はその長い髪を後ろに纏めろ。邪魔だ」
「……んっ、は……はい……んっ!」
今度は一旦胸を触るのをやめてギュッとその豊満な身体を抱き締める。
そしてヒロミの首へと顔を埋めると、優しく唇を這わせていく。
やがて長い間封印されてきた快感を思い出したのか、身体が跳ねていく。
「んっ……アンタ……上手いわね……良いわぁ」
「……光栄だな……ふーっ。今度は反対側も」
少しずつキスも入れていって、ヒロミのピクンピクン動く反応を楽しむ。
暑さで頭がやられたのか2人ともどんどんバカになってきたようだ。
抱き締めてるからヒロミの巨乳がフニャッと潰れている状態だ。
ヒロミも俺の背中辺りのシャツを握っているから体温が上がる一方だ。
更に暑くなったせいで再び汗かいてきたようで、ヒロミも同じだ。
その首筋を流れる一滴の汗を舐めあげてみると、案の定。
「……ひゃっ!……びっくり……したわよ……」
「ふふふっ……今度はキスも行こうか」
一応元カノとは最後の一線を超えない辺りまで進んだからな。
身体がどのように動けば良いのかを本能的に覚えているようだ。
けど舌はまだ控えて唇を重ね合わせるように隙間を塞ぎ合っていく。
「んっ……ん……ふんっ、んん……」
片方のブラ紐を外していくと限界の真横まで紐を移動させた。
すると今度はヒロミも自分の親指でもう片方の紐を外していく。
体温が上がってきたのか、ヒロミの首筋を流れる汗が滝に変わる。
もうすでに目がトロンとしてきて完全にスイッチが入ったようだ。
「んっ、ん……っ……ぁ……あ、あ……っ!」
今度は趣向を変えてヒロミの上唇と下唇を交互に自分の唇で挟んでいく。
ヒロミはこれが初めてなのか、肩が少し震え始めて来た。
まあそりゃ前戯でキスに力を入れてる男なんて少数派で珍しいだろうな。
今まさに全くの新しい刺激に晒されてて喜んでるだろう。
「あ……ぁっ……もっと……ん……ハムハムして……」
お望み通り俺はもう少しヒロミの唇を奥に咥えて甘噛みを加えていく。
それから唇を挟んだまま少し後ろに引っ張って伸ばしたりもする。
特に下唇を甘噛みしながら引っ張ったら、膝が震えて腰が抜けたようだ。
恐らく未知の快感に脳が震えたんだろう、ヒロミが俺に体重を預けてくる。
「あっ……はぁっ……アンタ……相当……慣れてるわね……っ!」
今度は足の膝をヒロミの股の間に擦り付けるように押し当てていく。
滝汗でシミが広がったシャツを巨乳が押し当ててるのでまた揉みしだく。
背中のブラのホックも外して解放してあげるとプルンと乳が揺れた。
小さな突起が汗だくのシャツ越しに主張してるので指で弄ってみた。
「んっ!!……ふっ……っ……んっ……っ!!」
コロコロと転がしたり指の腹で円を描くように押し当てていく。
片手で口を必死に塞ごうとも完全に喘ぎ声を抑えるのは無理なようだな。
快感の逃げ場が無くなったのか、壁にもたれながら腰をグッと反し始める。
これはヤバい。そんなに俺の下半身に当てたら理性が擦り減っていくぞ。
俺の方も我慢出来なくなったのでついに舌を口の中に流して行く。
「は……んっ……んむっ……ぁ……っ」
ヒロミの舌を持ち上げるように掬い取って裏の表面に擦り合わせていく。
今度は上に乗せると、鮮やかに絡め合わせて行って歯茎の周りも舐める。
息継ぎを挟むタイミングでお互いに唾液も交換して口内を湿らせる。
やがて少し呼吸が苦しくなって来たのか俺の胸元を押し返そうとする。
「んむっ……ぷはっ!……ぁっ……ちょっと、休け──んむっ!」
構わず深呼吸を繰り返していたヒロミの口を塞いで舌で掻き乱していく。
ヒロミが無理矢理顎を引っ込めようとしても直ぐに追いかけて唇を重ねる。
今度は片手を体に這わせるようにしてヒロミの股の奥へと進めていく。
それに気づいて一瞬俺の手を止めようとするが、直ぐに自ら誘導していく。
やがてヒロミも盛り上がった俺のズボンに手を当てて来たので口を離す。
「ぷはぁ……っ……はぁ……はぁ……ん……んっ!!」
お互いの舌から伸びた唾がヒロミの谷間に落ちる様がやけに艶かしかった。
おでこをくっ付けながら深呼吸するもすぐに喘ぎ始めるヒロミだった。
おっぱいを弄る方の手も緩めずに上下へと擦り付けていく。
結構良い力加減で俺の膨らんだズボンも触るから窮屈になってきた。
我慢出来ずにヒロミが履いてるストッキングを強引に破っていく。
「んぁっ!!……いや……はず、かしい……っ……ぁ……あっ!」
そろそろかなと思っていると、アソコが少し盛り上がって来た。
下着越しでもわかるくらいだったから、今にも噴射しかけている。
身体全体がビクンビクンと揺れ始めたから間違いないな。
俺は両手の弄る力を入れてディープキスをする。
やがて口の中で喘ぎ声が響くと、俺の手も膝辺りがびしょ濡れに。
「ンンッ!!……んっ……ふんっ……ん……っ!」
口を塞いだせいで脳内が酸欠な状態で迎える絶頂は余程格別だったろう。
再び大量の唾液が糸を引かせながらヒロミの口から舌を離す。
身体を子鹿の如く震わせながら目も胡乱になっており呼吸もおかしい。
俺のズボン内もヌメヌメし始めたからそろそろ童貞卒業するか。
「よし次は入れるぞ」
俺がズボンを下ろしてパンツに手を掛けたその時だった。
──パトカーのサイレンが遠くから聞こえてきた。
「ウェエエエエエエエ〜〜エエウウン〜〜!!ウェエエエエ〜」
「はっ!やばっ、警察っ!!」
そう叫ぶと折角の熟された女性の肉体がダダダっと暗闇へと消えてしまった。
はあ、最悪だマジで空気読めよ警察めが恨むぞ。
イケそうだと思ったのにな……はあ。
とはいえ喉が渇いたので店の奥にいる店員に声をかけてジュースを置いた。
「……ぐすっ……ひくっ……あ、あの……!」
「ポイント払いでお願いします」
「あ、あなたは……りゅ、龍二くんだよね……?」
「は?」
驚いたぞ。
いかに風邪を引いてたかもって印象の店員に名前を当てられたんだからな。
「……あ、アタシだよ……!前、付き合ってた……花音だよ……!」
「……か、花音!?」
全くその通りで俺が中2まで付き合っていた元カノがそこに立っていた。
可愛らしい目鼻立ちに合わせて、お。結構スタイル良くなったんだな。
最初は帽子とマスクで気付けなかったがそれを脱いが彼女は本人だった。
「ひ、久しぶりだね……けど先ずは警察に話を聞かせよっか」
「っ……他に選択肢は無さそうだな」
「うん……ほら、もう来ちゃったよ」
「……ついてねえな」
そう小声で呟いてた間にも恐らく花音が呼んだであろうパトカーが来た。
車から2人の警察官が降りるとすぐに俺と花音に話しかけてきた。
「強盗犯が来たとの連絡を聞いたんだが、君たちに怪我はないか?」
「はい……怪我はありません」
「健康体そのものです」
心底めんどくさいが仕方ないな。
花音に押し付けるわけにも行かないだろうな。
俺は渋々頷くと、ゴクゴクとバナナ&ミルクジュースを飲み干した。
小説書きの初心者、知足湧生です。よろしくお願いします!
『面白かった!』
『もっと読みたい!』
『あのシーンで痺れた!』
と思ってくれたら。
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をよろしくお願いします!
面白かったら星5つ、つまらなければ星1つ。
正直に感じた気持ちで全然大丈夫です!
ブックマークも頂けると泣いて喜びます!
なにとぞ宜しくお願い致します!
もっと工夫できそうな点もあれば、ぜひご教授下さい!