第200話
発売まであと6日!!
「ほらほら、遊んでないで。もうすぐ出来るわよ」
と、梨蘭からたしなめる声が聞こえてくると、香ばしい香りが鼻をくすぐった。
なんと。わちゃわちゃしてる間に料理が完成したらしい。
ソファーからテーブルに移動する。
テーブルには唐揚げ、ナポリタン、スペイン風オムレツ、レタスサラダ、ポテトサラダが並べられ、なんと冷蔵庫にはフルーツポンチまで入っているんだとか。
正にホームパーティー。俺のために、ホント申し訳ない……。
「うっひょー! うんまそーっ!」
「すごいです! みんな料理上手すぎです!」
「油分多めだガ、今日は少年の快気祝いたわからナ。思う存分頂こウ」
「悪いな、こんなに作ってもらって」
こりゃ、今度何かお礼しないと。
そう考えると、璃音が「何言ってるのよ」と微笑んだ。
「確かにこれは快気祝いだけど、あなたへのお礼でもあるのよ?」
「お礼?」
首を傾げて思い出すが……俺、そんなお礼されるようなことしたかな。
まさか俺、まだ記憶が完全に戻ってない、とか?
いやいや、そんなはずはないと思うけど……。
と、寧夏が恥ずかしそうに頬を掻いた。
「ほら、ウチらってアッキーにいっぱい助けられたじゃん? それなのに、お礼らしいお礼もできてなかったなって思ってねぃ」
「ぁ……」
なるほど、そういうことか。
別に俺、誰かに恩を売ろうとか、誰かにアピールしたいからやろうと思ったことはない。
ただ俺が助けたかったから助けたかっただけだ。
でも……なんだろう。
ちょっとだけ、報われた気がする。
今度は乃亜が自慢げに腰に手を当てて胸を張った。
「ふふふっ。実は私たちは、センパイの気を料理から逸らす要因だったのです! 決して料理できないから省かれた訳じゃないのです!」
「まあ、3人の残念料理の腕前は知ってるが」
「にゃにをぅ!」
そんな反抗するなら、コークス以外の料理作ってくれ。翌日胃が死ぬんだから。
脇腹をつつこうとして来た乃亜の頭を掴んで引き剥がすと、リーザさんが不服そうに腕を組んだ。
「おい少年。ワタシの料理の腕は知ってるだロ? 何が不満ダ?」
「汁物の隠し味にノンフレーバープロテインとアミノ酸をぶち込む料理に不満がないとでも?」
「むっ」
確かに普通に食ったら美味い。
ただ隠し味の脳筋が過ぎる。
「へいへい暁斗。お前俺ん家来た時飯食ったろ」
「ああ、猫まんまな。しかも白米も味噌汁もレトルトの」
「ん? そうだったか?」
「お前の記憶力どうなってんの?」
全く、こいつらと来たら。
「ほら、アホなこと言ってないで座って座って。冷めちゃうわよ」
梨蘭の声に、みんな慌てて席に座る。
俺は少しその場で立ち止まり、ワイワイしているみんなを眺めた。
「……ありがとう、みんな」
そっと、誰に言うでもなく呟く。
そんな俺を振り返った梨蘭が、朗らかな笑みを浮かべて手を差し伸べて来た。
「ほら暁斗。食べましょ?」
「……ああ。そうだな」
その手を握り、俺も席へ着いた。
◆
「ふぅ……食いすぎた」
リビングからウッドデッキに出て、ベンチに座って風にあたる。
もう9月も終わりかけ、気持ちのいい風がイタズラするように肌を撫でた。
昼過ぎからパーティーは始まり、もう夕方。
だというのに、あいつらまだ食ってやがる。主に寧夏と龍也が。
「足りねー!」つってチャーハン作り出したときは、さすがに引いたね。
茜色に染まる空を見上げる。
さっきのことを考えていると、不意に背後の窓が開いた。
「あら、暁斗」
「ん? 梨蘭か」
さすがに疲れたのか、顔から疲労の色が滲み出ている。
それでも、どこか満足そうな顔をしていた。
「お疲れ。悪いな、色々準備させちゃって」
「いえ、好きでやったことだから」
横にズレると、梨蘭も俺の隣に座った。
俺の肩に頭を乗せて、幸せそうに擦り寄ってくる。
そんな梨蘭を見ながら、再度夕焼け空を見上げた。
「別のこと考えてる?」
「そんなことない。今は梨蘭のことで頭がいっぱいだ」
「んーっ」
ぽす、ぽす。肩を軽く頭突きされた。
顔が羞恥によって赤く染る。夕焼けと相まって、余計真っ赤に見える。
「そ、そういうの平気で言えるって、ずるい」
「平気じゃない。梨蘭と一緒だと今でも鼓動は高鳴ってる」
「うーっ……!」
ぐりぐり、ぐりぐり。今度は頭を擦り付けてきた。
一々反応が可愛いな、こいつ。
「……今はってことは、私が来る前は別のこと考えてたの?」
「まあな」
「倉敷のこと?」
「よくわかったな」
「わかるわよ」
慈愛の表情で俺を見つめる梨蘭。
そうか。俺ら、そんなにわかりやすかったか。
「いつもより距離も遠いし、話す回数も少なかったわ。……何かあったの?」
「何かあったというか……今回のことで、龍也も反省したっぽくてさ。ちょっと距離取られてる感じ、かな」
「そう……ま、倉敷の性格のことだし、すぐ戻るわよ、きっと」
「……だよな」
そうだといいんだけど……。
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