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【Web版】俺の『運命の赤い糸』に繋がってたのは、天敵のような女子だった件  作者: 赤金武蔵


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第127話

「キュイーーーー!」

「きゅいーって、お前……また来たのか」



 浜辺に打ち上がってはいなかったが、やっぱり例のイルカがいた。

 この色つやと俺を見て嬉しそうにする目。間違いない。



「お前、浜辺に打ち上げられる可能性もあるから、ここに来るなって言ったろ」

「キュイ?」



 そんなつぶらな瞳で見られても。

 ……まあ言葉なんてわかんないよな。


 苦笑いと共にため息が漏れる。

 イルカに向かって歩みを進めようとすると、足に何かが当たった。



「ん? ……こいつは……」

「おーい、暁斗ー?」



 あ、梨蘭の声。


 岩場を登って顔を出すと、みんながこっちを見上げていた。



「暁斗、どうしたのよ」

「あー……ま、こっち来てみろよ。いいもの見られるぞ」

「いいもの?」



 みんな首を傾げるも、岩場をよじ登り。

 岩場から顔を覗かせると、目を見開いた。



「い、イルカ!?」

「へいへいへーい、こいつぁおでれーた」

「あー、確かにこの辺ってたまーにイルカ見るけど……なんでアッキーに懐いてるん?」



 寧夏の疑問ももっともだ。



「簡単に言うと、昨日浜辺に打ち上がってたのを助けた」

「「「「「…………は?」」」」」



 そんな「何言ってんのこいつ?」みたいな顔するのやめて。

 それしか言いようがないんだよ。



「キュイ……?」

「ああ、安心しろ。俺の友達だから」

「キュイ? キュイッ」



 うーん、理解してるのかしてないのかわからんけど、なんか元気だからよしっ。



「暁斗君がイルカと意思疎通してる気がするのは気のせいかしら?」

「気のせいではないと思ウ。少年、たまに野生児みたいだからナ」



 コラそこ、俺をディスるな。


 みんなで岩場を降りると、イルカも浜辺ギリギリまで近付いてきた。



「あー待て待て。また海に帰れなくなるだろ」

「キュイー……」



 そんな悲しそうに鳴くなよ……仕方ないなぁ。


 着ている上着を脱ぎ捨ててズボン姿になり、海に入る。

 と、イルカは嬉しそうに擦り寄ってきた。

 おん。寂しかったのか、このこのぅ。



「暁斗君、獣使いみたい……」

「違うぜ竜宮院。ああいうのをテイマーって言うんだ」

「アッキー、異世界転生したら強そう。フィジカルも強いし」



 好き勝手なこと言うんじゃありません。

 ……ちょっと考えてしまったのは内緒だ。



「だ、ダメ! 転生って死んじゃうって事でしょ!? そんなのダメ! 暁斗は私と一緒にいるの!」

「梨蘭ちゃん、すごく恥ずかしいこと言ってるの自覚してる?」



 多分してないな。

 こいつ、テンパると変なこと言う癖あるから。


 梨蘭は服のままジャバジャバと海に入り、俺の腕に抱き着いてイルカを睨み付けた。



「暁斗は渡さないんだからね。いーだっ」

「キュイ?」

「な、何よその可愛い目は……! 言っておくけど、私達は赤い糸で結ばれて……!」

「キュイーッ」

「あ、ちょっ、スリスリしないで! 可愛いじゃない!」



 怒ってんの? 嬉しいの? 照れてるの?


 あと俺が言うのもなんだけど、動物に何言っても通じないからな。



「うぐぐっ、可愛い……くないっ。暁斗を取るやつは人間でも動物でも敵よ……!」

「そんなこと言っていいのか?」

「……え?」

「ほら」



 ズボンのポケットから、さっき拾ったものを取り出した。


 金色の金具に、赤いアネモネのガラス細工。


 そう、梨蘭が失くしたイヤリングのもう片方だ。



「こ、これ……えっ、なんで……!?」

「イルカが見付けてくれたみたいだ。多分、俺が昨日助けたから、そのお礼なんだろう」



 他にも綺麗な貝殻、サンゴ、真珠、別のガラス細工と、綺麗なものが浜辺に打ち上がっている。


 その中の1つが、偶然にもこのイヤリングだったのだ。

 イヤリングを梨蘭に渡すと、感極まったように目の涙を溜めた。



「ぅっ、ぅぅぅぅ……! うわーん! 敵だなんて言ってごめんねぇー! 好きぃ! ありがとー!」

「キュイッ」



 ぎゅーっとイルカを抱き締める梨蘭。

 いやぁ、良かった良かった。


 ……おいイルカ。何満更でもない目をしてんだ。お前本当にイルカだよな? 実は着ぐるみだったりしないよな?



「うずうず……! うー! アッキーとリラばかりずっこい! ウチもイルカと遊ぶー!」

「お? ネイが行くなら俺も行くぜ!」

「楽しそうね。リーザさん、行きましょっ」

「か、噛まれたりしないだろうカ……?」



 とか言いつつ、みんなも服のまま海に飛び込んできた。



「うひょー! 天然のイルカとこんな近くで触れ合えたの初めてぇ!」

「こいつ雌みたいだぞ! よし、今日からこいつはイル子だ!」

「なんだそのセンスのセの字もないあだ名は」

「キュイーッ」

「喜ぶのかよ……!」



 このイルカ、龍也や寧夏と同じセンスしてんじゃないのか。



「ワァ……! こんなに近くでイルカを見たノ、初めてダ……!」

「ふふ。リーザさん、子供みたい」

「カ、からかわないでくレ、璃音」



 いや、今のリーザさんは子供みたいだったぞ。



「なあネイ。まだ帰るまで時間あるんだし、ちょっとだけイル子と遊んでいこうぜ!」

「いいなそレ。イルカと遊ぶ機会もそうそうないシ」

「私も賛成よ」

「ナイスアイディア、りゅーや! リラのイヤリングも無事見つかったことだし、あっそぼー!」

「キュイーーーーッ!!」



 あ、おい。……行っちまった。

 俺と梨蘭を残し、みんなイルカと一緒に海に飛び込んでいった。


 ……ま、楽しそうだし、いっか。



「ねえねえ、暁斗」

「ん? どうし──」



 ちゅ。


 目の前に広がる、梨蘭の綺麗な顔。

 それと同時に、潮の香りに交じって柑橘系の香りが鼻をくすぐる。

 そして、唇に触れている柔らかな感触。


 それを理解した時には、梨蘭はすでに俺から離れていた。


 両方の耳には、赤いアネモネのイヤリングが太陽の光を反射して輝いている。



「ありがと、暁斗。全部全部、暁斗のおかげよ」

「ぇ……ぁ、その……どう、いたしまして」

「何しどろもどろになってるのよ」



 いや、この不意打ちはずるいだろ。

 イチャイチャなしって言ってたのに、こんなことされたら……。



「あ、言ってくけど、これはイチャイチャじゃないわ。お礼だからね」

「それは無理がある」

「私がそう言ってるんだから、それでいいの」



 なんという暴論。


 梨蘭は私服が濡れるのをいとわず腰まで海に浸かり、華やかな笑顔で振り返った。



「暁斗。私も、あなたを愛してるわ」

「……ああ、俺もだ」



 赤いアネモネの花言葉、『君を愛す』。

 今回のことで、俺達の絆は深まった。


 ……そんな気がした。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  うんうんやっぱりイルカの恩返しになるよね。 良き良き。
[一言] 期待を裏切らないイルカやねぇ~。
[良い点] 無事見つかってよかった(*´`*)ハァ
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