プロローグ①
【情報解禁】
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「ちょっと」
「……げっ」
またこいつか……。
本日最後の授業が終わり、帰りの支度をしているとき。
俺の目の前に、いかにも「不機嫌です」と言いたげな女子が腕を組んで立ち塞がった。
父親が日本人、母親が外国人らしく、日本人離れしたブロンドのセミロングヘアー。
まつ毛が長く、切れ長のアーモンドアイ。
瞳は燃え盛るような緋色をしている。
ハーフ特有の完成された美貌。色気。
間違いなく、この学校でも最高の美人として名を連ねるだろう。
──が。
「げってなによ! 失礼しちゃうわね!」
「お前、俺が突然目の前に立ったらどどう思う?」
「殴る」
「やめろ暴力女」
余りにもバイオレンスな発言にドン引き。
こいつ俺のこと嫌いすぎだろ。
……俺も人のことは言えんが。
こいつの名前は久遠寺梨蘭。
中学からの腐れ縁で、何かと突っかかってくる──天敵のような女だ。
◆
「真田。あとアンタだけよ、数学のノート出てないの」
「なんでお前がそんなこと知ってんの。ストーカー?」
「は、はぁ? そ、そんなわけないっ、じゃない。私は先生に頼まれてノートを回収してんの!」
久遠寺が指さした先を見る。
クラス分のノートが積まれ、かなりの量だ。
「……ほらよ」
「んっ」
満足そうに受け取り、それを手にノートの山を持とうとする。
が……重さのせいか、不安定だ。
まあ、クラス40人分だしな。そりゃこうなるか。
てかこの量を女子に持たせようとすんなよな……。
「おい、大丈夫か?」
「ふ、ふんっ。ここここれくらいいいぃ……!」
手脚プルプルで全然大丈夫そうじゃねぇな。
……はぁ、見てらんねーな……。
近付き、今にも崩れ落ちそうなノートの大半を奪う。
キョトンとした顔の久遠寺が、俺と手元に残った5冊程度のノートを交互に見ると。
顔を真っ赤にして烈火のごとく怒りだした。
「ちょ、ちょっと! 私が頼まれた仕事よ! 返しなさいバカぁ!」
「お前があのまま運ぶと2時間ぐらい掛かりそうだったからな」
「そ、そんな掛かんないわよ! ……1時間半ぐらいよ!」
「変わんねーよ」
「ふん! ……ありがと」
「……おう」
律儀なヤツめ。
ま、天敵とは言えあのまま見ないふりするのも良心が痛むからな。
それにこいつに貸しを作れる。くくく、計画通り。
「ふふ。また夫婦漫才してるの?」
「「夫婦じゃない!」」
って、この声は……!
「竜宮院。前から言ってるが、そういうイジりはやめてくれ」
「そそそ、そうよ! 誰がこんなやつと!」
「それはこっちのセリフだ」
「何ですって!? あんた私のどこが不満なのよ!」
「むしろ不満しかないが」
「むぎぎぎぎ……!」
俺達のやり取りを楽しそうに見ている竜宮院は、久遠寺に抱きついて頭を撫でた。
「真田くん、許してあげて。この子素直じゃないのよ」
「は、はぁ!? 何言ってるのよ璃音! 私くらい素直な子はいないわよ!」
「はいはい」
まるで聖母の笑み。本当、竜宮院は可愛いな。
きめ細やかな黒髪ストレートロング。
髪と同じ黒い瞳に、おっとりとした目元。
胸は控えめだが、それを補う手足の長さに顔の小ささ。
ザ・大和撫子。
そんな言葉が似合うのが彼女、竜宮院璃音だ。
本当、久遠寺は竜宮院の爪の垢を煎じて飲んで欲しい……。
「そう言えば明日ね。運命の日」
「ああ、そういやそうか」
竜宮院の言葉で思い出した。
4月22日、運命の日。
今年16歳になる少年少女は、その日になると左手の薬指に赤い糸が現れる。
奇病、『運命の赤い糸症候群』。
同い歳であれば世界中の誰かと必ず繋がってるとされるそれは、運命の日に突然現れる。
切ることも燃やすこともできない、原因不明の奇病。
世間では病気ではなく、神様がくれた奇跡とされている。
その理由としては、赤い糸で繋がっている2人が一緒になれば必ずいいことが起きるらしい。
相性抜群。互いがアゲマンで、互いがアゲチン。
だから左手の薬指に現れるそれは、『運命の赤い糸』と呼ばれていた。
「どんな人と繋がってるのかなぁ。楽しみね」
「えー、そう? 自分の意思と関係なく好きな人を決め付けられるのってイヤじゃない?」
「梨蘭ちゃん、それをイヤって思わないのが『運命の人』なのよ」
「うーん……」
確かにな……ウチの両親も、初めて出会ったときから互いを好きになったって言ってたし。
運命の赤い糸か……俺は誰に繋がってるんだろうな……。
できればお姉さん系がいい。優しく甘えさせてくれるおっぱいの大きい人。
なんて想像(妄想じゃないよ)を膨らませていると……目の端に、チラチラと俺を見る久遠寺の姿が映った。
「…………」
「……なんだよ、久遠寺」
「んぇっ!? な、なにが?」
「俺の方見てたろ。文句があるならいつでも聞くぜ」
「見てないわよ、自意識過剰すぎ」
「見てたろ」
「見てない!」
頑なだな、こいつも。
ま、こいつが俺を見てようが見てまいがどっちでもいいか。
職員室までノートを運ぶと、数学教師の美濃輪先生が微笑ましい表情で俺達を見てきた。
美濃輪先生はご高齢の先生で、我が校のおばあちゃんとして親しまれている。
そんなおばあちゃん先生こと美濃輪先生が、初孫を見守るような目でニコニコとしている。
「あらあら。相変わらず仲がいいわねぇ、梨蘭さんと暁斗くんは」
「「よくありません」」
「ほら、息ぴったり」
「「ピッタリじゃありません」」
「2人が運命の人だと、先生も嬉しいわぁ」
「「嬉しくありません。……真似すんな!」」
ったく、イライラさせやがる。
中学ん時からそうだ。ずっとずっと俺に突っかかって来やがる。
全く、何がしたいんだか、こいつは。
職員室を出ると、外で待ってたのか竜宮院が駆け寄ってきて久遠寺に抱きついた。
「おかえり〜」
「むぎゅっ。璃音、苦しい……!」
「あっ、ごめんなさい」
てへっと舌を出す竜宮院。可愛い。
「あーあー。私の運命の人、璃音ならいいのに」
「私も梨蘭ちゃんになら抱かれてもいいわ」
「ごめんそれは無理」
「ひどい」
なに百合百合してんだこいつら。
……やることもないし、帰るか。
「あ! ちょっと真田! 明日はあんたが日直だからね! 忘れんじゃないわよ!」
「へいへい」
さっさと帰ってラノベの新刊読も。
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