厨二(ちゅうに)の俺が(堕)天使とともに地獄から抜け出した話
我の名は襟島 優作。
D中学校の生徒である。
周りからは「厨二」と呼ばれている。あと一人称がちょくちょく変わる。俺とか余とか我とか。
俺は何かを察知できる能力がある。
不思議なことを感じたら、周りに知らせる。この予知能力は外れたことがない。
おかげで結構頼りにされているのだ。
この前は、「A中学の野郎がよっちゃん目掛けて突っ込んでくるぜ」
と言ってやったら、その日の放課後、A中の奴がメンチ切って突っ込んできた。だがよっちゃんは着痩せするタイプで実はめっちゃ強い。
一人でぶっ倒したあとによっちゃん含め職員室に連れてかれた、なんてことがあった。
チンピラとかにもよく絡まれる。我は暴力は嫌いなので口論で倒す。論破だ。かかってきたら押さえ込む。
痩せてるので力はあまりないが、一応鍛えてはいるつもりだ。
そんなある日。十月二日、土曜。
俺の部屋。
俺は週刊誌を
「今週も熱い展開だぜ」
とか言いながら読んでる。
さて、朝の散歩と行くか。風を感じていくぜ!
「ちょっと散歩してくるわー」
母「気をつけて行くのよー」
母の編んでくれた水色のマフラーを身につけ、黒い靴を履く。玄関のドアを勢いよく開けて、外に飛び出す。
午前九時。
まずは家から三分くらいのコンビニへ行く。
タピオカカフェラテを買って店を出る。
ちゅー。うめぇ。
太いストローからぷぷぷぷとタピオカが口に入ってくる。ゼリー感覚で食えるからうまい。
さてと。タピオカカフェラテ飲みながら歩き出す。
とりあえずいつも行く公園へ。
滑り台、ブランコ、砂場、ベンチしかない小さな公園だが、俺にとっては馴染みの場所だ。
ここで小さい子供たちが遊んでるのを見るのも好きだ。
今日も滑り台の周りで鬼ごっこをしてる子供たちがいる。
「可愛らしいぜ。子供はやっぱこうでなくっちゃあな」
俺はカフェラテを飲みながら見物する。
「なんかチャーハン食いたくなってきたな。家帰ったら母さんに作ってもらうか。母さんのチャーハンいつもうめぇし。」ただいま午前九時半。
帰るにはまだ早すぎる。飲み終えたカフェラテをゴミ箱に捨てる。
すると。
「な、何かが、来る......」
その瞬間、目の前に赤黒いい空間が広がる。前も後ろも上も下も。禍々しい雰囲気に包まれた。
雰囲気的にいうと、マイ○ラのネ○ーみたいな。
「何がきやがったんだぜ?」
しばらくすると。目の前に白い服、白い翼を背中から生やした白い髪の男(?)が透き通るような蒼い目でこちらを見ていた。
「よく来た、人間。貴様に協力してもらいたい」
「うおっ、なんだテメェ!」
「ほう、襟島 優作......能力は未来予知......」
「何故、俺のことが分かる」
「下等生物の思考など手に取るように分かる」
「す、すげぇ。最高にイカすぜ! それはそうと、ここはどこだ」
「ここは地獄だ。私も巻き込まれたのだが。我が名はルーゼロス・シダート・フラムザァー。天使だ」
「て、天使......すげぇ! 名前長いからルシファーって呼ぶぜ!」
「誰が堕天使だ......舐めてると潰すぞ......まぁいい、人手が足りなかったのでな」
「何かしてんのか?」
「ここから抜け出す。そのために俺が能力を持つ貴様を呼び出した」
「お前地獄の生きもんじゃねぇのかよ」
「なぜ天使が地獄にいなくちゃならない!」
「いや性格キッツイし下等生物とか言うし」
「そういう舐めきった態度をとるから貴様ら人間とは関わりたくなかったんだ!」
「人を勝手に呼び出しといて何言ってんだコイツ」
「......(怒)」
「とりあえず、地獄から抜け出すって言ってたけど、何すんだ?我とっとと元の世界に帰りたいんだが」
「地獄を抜けんと貴様も帰れん! いいか? まず、あそこに赤い扉があるのが分かるか?」
「いや、目が悪いからよく見えん」
「お前はつくづく私ををイライラさせるな...メガネを家に置いてきたのか......」
「ああ、んで、その扉がどうした」
「その扉が地獄の出入り口だ。扉の脇にあるボタンを同時に押さないとその扉は開かない。その上、ボタン同士の距離が離れてるから一人では押せない。さらに門番がいる上、ここでは天の力もほぼ使えないしな」
「天の力?」
「貴様らでいうところの魔法みたいな物だ」
「すげぇな」
「使えるのは召喚術と威力の低い術のみだ。お前には、扉の前にいる門番の攻撃を予知してもらいたい。奴の攻撃を交わし、門番を倒す。そして、ボタンを押して脱出というわけだ。口に出さなくても、俺が勝手に心を読んで攻撃タイミングを読む」
「ふむふむ」
「地獄の奴らは人間の言葉を理解できない。我ら天使から退化した存在だからだ。荒い行動と戦いしか知らない能無しだ。話し合いでは解決しない」
「理解できてもお前のその物言いじゃ解決しないと思うぞ」
「......いいから行くぞ(怒)」
「了解した。では、いざ鎌倉」
「鎌倉?」
「出陣の時に言う決まり文句さ」
俺は走り、ルシファーは低空飛行で門番の元へ。
ルシファーが門番の元に。
門番は大柄で、赤い目をしていた。
鬼のような形相でルシファーを睨む。
「グアァァァァァァァッ!」
門番が咆哮を上げ、ルシファーに迫る。
俺は予知能力でサポート。
[左、右の順番で攻撃が来る]
門番がその巨体とは思えない速さでその手の棍棒を振りかざし、ルシファーが攻撃を交わす。
ルシファーの右手から光の刃が出て、さらに門番の右手を切り落とす。
門番の右手から血が吹き出す。
光の刃は、まるで日本刀のような形でもあった。
[ビ、ビームソード......かっけぇ!]
「くだらんことを考えてないで集中してくれ(怒)」
[口から火を吐く。飛んでかわせ]
門番が口から火を吐く。
ルシファーが空高く舞う。
火はルシファーを追尾する。
[気をつけろ。さらに棍棒が来る]
「了解」
[右に避けろ]
炎の後に棍棒が飛んでくる。
ルシファーが急降下して交わす。
[おい、右に避けろって言ったろ]
「左から飛んできてるのだから別に平気だ」
[油断してっとやられっぞ]
「......悪かったな」
[さらに急接近してしゃがめ]
ルシファーが門番の下へ低空飛行で潜り込む。
下から門番の体目掛けて手から衝撃波を放つ。
「はあっ!」
「ゴグァァァ!」
門番が後ろに吹っ飛ばされる。
「ウグァ.....」
門番の切り落とされて青い血が噴き出る。
すぐに右手が生えてきた。
「ちょっと眠っててもらうぞ」
さらにルシファーが追い討ちをかけるべく急接近。
[顔面に1発食らわせてやれ]
「はあぁっ!」
ルシファーの右手が光り輝き、そのまま門番の頭を掴む。
軽い爆発。
門番の頭は黒焦げ。
門番は気絶したようだ。
俺はルシファーの元へ。
「よし、ボタンを押すぞ。タイミングはお前に譲渡する」
二人同時でボタンを押す。
ギギギギィ......
重い音を上げ、扉が開く。
てかこの扉、全然赤くねぇし。
あーでも良く見たら、ドアノブのあたりが少し赤いかも。そんだけかよ。
俺たちは扉の中へ入る。
扉の中に入ると、勝手に扉は閉まった。
目の前には、何もない暗い空間。
俺たちの周りにだけ、光が刺している。
「ここが、天国か?」
「ここは天国ではない。各世界に行くための転送所、と言ったところか。死んだ人間などもここにいったん連れてこさせられる」
「ほへぇ......」
「世話になったな。短い間だったが、助かった。」
「俺も能力を有意義に使えて良かったさ。ありがとな、ルシファー」
ルシファーが手で魔法陣を描く。
俺の足元に魔法陣が。
「さらばだ、優作」
俺の体が光り出す。
「案外、人間も悪くない、かもな......」
気がつくと、俺は家の前にいた。
「面白いことを体験したぜ。これは一生の思い出だな。ふっはっはっは」
優作は、玄関の扉を開けた。
「ただいまー。母さん、チャーハン作ってくれー」
数年後、ルシファーは異世界に転生され、壮絶な戦いに巻き込まれることになるとは知るよしも無かった......
読んでいただきありがとうございました!
少しでも笑っていただけたならよかったです!
短編小説ながら、結構長いかもしれないですね。
崖転とは...まぁ関係ありますw
崖転シリーズもよろしくお願いします!