第四話
毎日をただ生きる。
今のこの世ではそれすら贅沢な事なのに、私にはお父様とお母様がいて、そして彼もいる。私はとても満たされていました。
今日は彼と初めてでぇとした日です。でぇととはお母様のお話では男と女が一緒にお出かけをすることです。手を繋いで見つめ合って語らいながら、ただただ歩く。たったそれだけ。それだけのことに、子供の頃は胸を弾ませていました。実際に経験してみると、それ以上の興奮が、いつもは一人で歩いていた森がこんなに楽しいなんて知りませんでした。
本来の目的は別のことです。その前に旧市街に寄ります。何度か書いたことがあったので説明は不要ですね。マモノを殲滅したあの回はとても手が進みました。と逸れてしまいましたね。かつて人々が生活の拠点としていた場所、そこに残されたものを探し集め交換品とするためです。目的とは、こういう日のために用意するはずだった服と交換してもらうことです。これでは順序が逆ですね。
そういえばまだこちらは書いていませんでしたね。おばあさんのことです。曰く、今のこの世で人と人とを繋げることが最後の役目と、交換を生業として始めたとのこと。生活に必要なものよりも、人がより人らしくあるためのものを多く揃えている、だそうです。ただ生きる為ならこのぼろぼろの服でも十分ですから。
彼は興味深そうに品々を見ていました。その中には日記帳もあります。これはここで、初めて交換してもらったものです。その時は野草で、物によっては別の物を要求されます。ここに置いてあるものだったり、おばあさんの食事となるものであったり、です。服は見つけた人がそのまま使ったりしますから貴重だったりするのです。私が初めて旧市街を訪れた時はもうありませんでしたから。もしかしたら街から逃げる際にすべて持ち出したのかもしれませんね。それでもこうして貴重なものが残っていることには感謝しかありません。これで交換してもらえそうだから。
初めて来た時は必要な時が来るなんて思いもしませんでした。あの日は偶々、彼と出会った時のように、活動範囲を広げようと考え遠出をした時です。不思議な感覚でした。誰かがいる、そう感じたのです。それはすぐ近くにありました。ですがそれはマモノに気を配っては気付けないほど。今思えばこの出会いも運命ということだったのでしょうか。
一度一緒に暮らさないか聞いたことがあります。ですがおばあさんが首を縦に振ることはありませんでした。会ったことも、直接聞いたこともありません。けどここにある品々を見ればその理由は分かりました。ですから聞いたのはその一度だけです。だからこそ、用は無くとも毎日は無理でも来ようと決めたのですが。
彼が何やら手に取ってじっと見つめています。その熱い視線にむっとすると、気付いてしまいました。服というものは男性用と女性用があります。彼が見ていたのは女性用だったのです。これは私のために選んでくれた、そうに違いないと、それに決めました。まるで空のような服、持ってきた分では足りませんでしたが、おばあさんが私のためにって、交換していただけました。
彼は褒めてくれるでしょうか?でぇとはまだまだ続きますから、その結果は続きに書きますね。
このように飛び飛びでぶっこんでいきます。短めです、多分。