やくそくを
ここは……どこだ?
んー…?―――ああ、そうだ!異世界間を移動するとき通る…。よん?5回目だっけ?
――――って、ぅおぃ!!まだやること残ってるんだって!
あ、いや、やることはやりましたが…。
そうじゃなくて!トスファにはまだ言いたいことが…。
戻ろうとジタバタ体を動かすも、この空間では意味がない。
今はそのことに気付けない。
以前と違うと分かったのはぼやけた人影を見つけた時だ。
あれは…?あの黒い髪に僕とおそろいのジャージ―――ナタカか?
あれ?なんか体透けてない?透けるなら服だけでしょう?
…最近おやぢ化がひどいかもしれない。
『私は約束…守るから!』
――――うん、分かってるよ。僕も……約束は守る男だ!
ん、ぅん…?
朝か……。
体を起こし、上半身を伸ばす。
「いっつ?!」
いたた…背中がまだ痛むな。
その声で目を覚ましたようだ。
「……キオク…」
恥ずかしいのか、ふとんで顔を隠してる。
可愛い。愛でたい。
そういう僕も顔が真っ赤になってるんじゃないかって思う。顔が妙に熱い。
「…ごめんなさい」
まだ気にしてるみたいだ。昨晩あれだけ言ったのに…。
「僕が全部悪いんだよ?トスファが気にすることは全くないんだ」
「でも――――んん?!」
彼女の口を塞いで黙らせる。昨日初キスを成し遂げた男とは思えない行動。
「ふぅ…分かってくれたかな?」
「………まだ。全然分からない…」
このほしんぼめ!昨晩あれだけしたのに、まだ欲しいのか!
※イチャイチャ中です。しばらくの間お待ちください。
―――ああ?!落ち着いてください!物を…物を投げないでください!
こうなるのも仕方がないことなのです――――
幻想的な光景だった。
キヲクとトスファ、二人の影が一つに繋がり、暗い雲が晴れていくように空の色が薄くなっていく。
細く弱弱しかった光の筋がそれに合わせて太くなっていく。
何本もの光の柱が二人を祝福していた。
それらは空が青く濃くなっていくにつれて、今の二人のように重なり合って、より盛大に祝う。
彼らが目を開けた時、全てが光り輝いていた。
――――とここまでは良かった。
事を終えたキヲクは夢中になって忘れていた。
両親の前で永遠にも感じた時を過ごしていたことを。
祝福をしていたのは二人も同じだった。
父は涙を我慢せず嗚咽を哀歓の歌替わりとし、母は母で頬を伝う涙を拭かず、そんな無駄なことに時間を使うよりもと言わんばかりに、脳裏に二人の姿をしっかりと刻みつけていた。
後はこれまで通りですね。
分からない?読み返せば分かるかもしれませんね?
その後、城を出た4人は外で待っていた全ての人から手荒い歓迎を受けた。
キヲクは魔物の正体を明かさなかった。
ユズとドアにも口止めをした。
これから未来のことを考えてのことだ。
恐怖はもういらない。必要なのはみんなの笑顔だ。
それさえあれば、フウマのような存在を作り出すこともないはずだ。
キヲクは自身の肩に顔を預けるトスファと共にそれを見て、同じ顔をする。
『ほら、トスファも…』
すぐには無理だろう。
彼女は朧気ながらに覚えているようだった。
けど彼女は釣られて少しだけはにかんだ。
日が暮れるまでお祭り騒ぎが続き、完全に暗くなってようやく二人きりになれた。
キヲクは心に決めていた。
正確なことは分からないが、トスファにもそれが伝わっていた。
だから二人は止まらない。
※まだまだ掛かるようです。
『魔理』を読んでしばらくお待ちください。(宣伝)
「トスファ。話があるんだ」
身なりを整え、ベッドの上で正座をし彼女に向き直る。
いや正座は必要ないんだけどね。生活習慣的になっちゃっててね。
彼女も同じように正座しようとするが、上手くできないみたいだ。その仕草がいちいち可愛い。愛でたい。
「ハハハ。…普通に座って良いよ」
恥ずかしそうに頬を赤らめ座りなおす彼女。その仕草が(以下略)
「僕は――――」
彼女にも全部話した。信じてくれなくていい。ただ彼女にはもう隠し事はしたくないから。
彼女は真剣な表情を崩さず、黙って聞いていた。
話が終わると、彼女はその表情を暗くし口を開く。
「……それで、キオクは……帰っちゃうんだ?」
分かっちゃうよね。泣きそうなのを必死にこらえて…。
「…いいかい、トスファ?君は一人じゃない。お父さんがいる。お母さんがいる。ユズやドアもいる。城のみんなやミケたちだって!……一人じゃないよ。それに僕もいるから」
「でも!キオクは…いなく……なる――――」
「君のここにいる。いつでもいるよ。だから、どんな時でも一人じゃない。それとも…僕の思い違いかな?」
トスファは胸を押さえるようにして握った右手に左手を重ねる。
「…うん。ずっといるよ。あなたと出会った時からずっと…」
僕もその時から彼女がいたんだ。気づくのが遅すぎたけど――――だからって終わりじゃないんだ。
それを取り戻すためにも…!
「大丈夫!すぐ帰ってくるよ!約束する!」
「――やくそく…」
トスファにもなにか守らせた方が良いかな…。少しでも気がまぎれるような……。
「そうだ!悪い子にはおしおきが必要だったよね?」
悪いのは自分だが口実が必要なのだ。
これで僕がいない間の思い込みモードを制御できるかもしれないし。
「僕が戻ってくるまでの間、この部屋はトスファが一人で片付けるんだ。他の人の助けを借りずにね」
「……えっと、そんなことでいいの?それって当たり前のことじゃないの?」
おしおきと聞いて嬉しそうな顔してたのに、内容を聞いて拍子抜けしたって感じだな。
しかも当たり前って――――
そうだよね。歴史ある王族なら侍女叱り家来なりがやってるイメージだから、これにしたんだけど…。今まで普通にやってそうなことだったね。
それじゃ他の案をと頭を悩ませてると、
「…わかった!綺麗にしておくから……早く帰ってきてね?」
両手で握り拳を作り、ゾイの構え。やめてください、その構えは僕に効きます。
「それじゃ…これを……」
「これは、マケン?」
彼女に差し出したのは相棒の刀。相棒としたのには深い意味はありましぇん!
これと彼女の力が転移の鍵となってるはず。
――――もし違ったら、その時はこの世界でリア充満喫するさ。…約束は別の手段で果たす。
この辺は相変わらずいい加減だな。少しは成長しろい!
苦笑しつつ彼女に手渡す。
だが、何かが起きる兆候はない。
おかしいな?この前となにか違ったかな?
もしかして、杖代わりに使ったりと雑に扱われたのを怒ってる?
つんつんと柄をつつくも反応なし。
続いて、んーと唸りながら彼女の手に触れた――――その時!
「きゃ?!」
「光が?!」
刀が眩い光を放ち、僕だけがそれに包まれた。
「キオク!」
これは一緒だな。帰るのか、僕は……。
本当はこのまま一緒にいたい。
だけど、約束が……なによりけじめはつけないと、彼女の隣にはいられない。女王となる彼女の隣には――――
「何度だって言う!約束する!必ず帰る!――――愛してる……僕のお姫様がいるこの世界に!」
「…うん……うん!ずっと待ってる…待ってるよ!」
だから『彼女』は僕を助けてくれたんだ。
いろんな形で僕をずっと…。
今もずっと待っているんだ――――
僕が『彼女』を縛り付けた!
けど『彼女』は知らなかった。
「……そういえばまだ言ってなかったよね?僕の本当の名前は――――いや…やめた!帰ってから教えるよ!」
もう一つ、『彼女』が知らない約束を交わす。
トスファが無言で頷いたのを最後に姿が見えなくなった。
それで感情が緩んでしまった。
ああ……彼の姿がだんだん見えなくなっていく……。でも笑わないと…彼が安心できるように…。
トスファは涙を溢れさせながらも、口角を上げ無理やり笑顔を作っていた。
「…ト…ファ!僕は、…束は――――」
彼の言葉を最後まで聞くことは出来ず、キオクは…光の中へと消えていった。
キヲクがいた場所には一滴の跡だけが残っていた。




