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はじまり  作者: 新戸kan
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むかしのはなし

 城の外に出ると、昼間とは違う風が僕の頬を撫でる。その心地よさが僕の熱を冷ましてくれた。


 ――えっと、あそこかな。


 暗闇の中で光る二つの光。ブルーとゴールドのオッドアイ――ミケだ。


 向こうの猫は耳が良いと聞く。

 仕草やらで、それはこっちでも変わらないだろうとは思っていた。

 それでそっと出てきたつもりだったが、彼女の耳は誤魔化せなかったようだ。


 良い方向に働いたのは幸運だった。

 側で安心して寝ている子猫たちを守るため、彼女はこちらに目をやった。そのおかげですぐに彼女を見つけられた。


 悪いけど、ちょっとだけ早い子離れをしてもらおう。

 ホント勝手だけど、前もっての経験と考えてくれたら、僕も助かる。


「ミケ、ちょっと付き合ってくれるかな?」

 ミケの背に乗り、体をポンポンと叩く。それを合図と捉えたミケは軽快に走り始めた。

 行き先は決めてない。ただ、一人になりたかった。



 明るくなって――――


 暗くなって――――


 青くなって――――


 赤くなって――――


 それが何を意味しているか分からないほど、頭の中が驚きの白さだった。

 それでも、悲しいかな、ぐぅと鳴る体は欲望に忠実。この生活のおかげで何が食べられるかは把握している。

 そんなこんなで、時折休憩をとりながら言い訳を続ける。そうだ、世界を見て回ろう、と。

 


 ――――気づけば随分遠くまで来た、と思う。その辺はミケ任せなので良く分からない。

 ここまで来ても他の人には会わなかったな。隠れて暮らしてるんだろうからしょうがないけど。

 …魔物には結構出会ったのにな。全部ミケの腹の中だが。




 今日はここらにしようか。

 僕が下りると、ミケはその場で丸くなる。その体に背中を預け、空を見上げる。


 いつもと何も変わらないはずだ。

 それでも夜空は違って見える。

 そういう風に見えてしまっている。



 だから何度も何度も彼女の言葉が出てくる。

 そのせいだろうね。反抗期のやさぐれた目みたいに力無いのは。


 目を瞑れば余計に出てくる。

 それが嫌で、頑張って開けていた。


 それだから空がそんなだって気付かないまま時だけが過ぎる。


 こういった時でも時間を無駄にしたくないのか、それか僕に効率厨の才でもあるのか、無駄に頭が働き始める。



 ――――なんでみんな人をくっつけたがるのかな。

 血のつながりがあろうがなかろうが、別の人間――――つまり他人だ。他人の気持ちが分かるとか、ニュー〇イプですかっての。

 他人の心が分からないから楽しい。分からないから苦しい。

 理解できないから理解しようとする。だからいろんな感情が生まれてくる。

 そうして人生が豊かになっていくんじゃないか。

 それを押し付けて無理やり開花させるのは違うだろ。


 こういうこと考えてると、どうしても思い出してしまう…。昔のことを――――



 あれは中学三年生のときだ。当時、特に仲の良かった子がいた。彼女とは小学生からの付き合いで、友達…それ以上の感情はなかった。


 それが変わったのは友人の言葉――――

『なあ?お前らって付き合ってんの?……え、違うの?すげえ仲良いからそうかと思ってたんだけど……。でも、あいつはお前の事好きだよな!』

 そういったことに否が応でも意識をするお年頃。たまっていると特に。(何が?)

 だから彼にとっては何気なく言ったことだったのかもしれない。

 けど僕はそれから彼女を意識するようになった。


 彼女と話をしてても特別ドキドキするとかはない。それでも初めてのことだからそういうものなんだろうと納得していた。

 今思えば、偽りの恋だった…。


 夏休み、思い切って告白してみた。きっと彼女も同じだと思って。

 結果は――――振られた。友達以上には見れないって。

 そこに悲しみはなかった。

 逆にホッとした。友達以上の関係なれば今までの関係にはなれないんじゃないかって。それに彼女が友達だと思ってくれていたことがうれしかったから。

 でも、彼女には僕の告白を軽く受け流すことは出来なかった。勘違いさせて、ごめん――――そう言って彼女は僕から離れていった。

 そうして僕は一人の友達を失った。



 友人を悪く言うつもりはない。悪いのは彼の言葉を鵜呑みにしてしまった僕だ。友達としか見れてなかった相手に勝手に自分を押し付けて。…勝手に勘違いして――――



 この事件以降、他にも女友達はいたがある程度の距離感を保って接するようになった。それも魔法使いを目指すきっかけになっていたかもしれない。

 年の割に変に達観してしまっているのもそのせいかな。

 


 高校が別で良かった。一緒だったら気まずい青春になるとこだった。


 ――――まだ終わってなかったな。みんなは元気かな…。兄貴も――――


 非現実が現実となり、元々現実だったものが頭の片隅にまで追いやられていた。

 それを思い出した。



 約束…。ナタカとの約束――――

 決して忘れていたわけではない。けどこの楽しかった日々がそれを頭の片隅に追いやっていた。


 ――っておいおい、日々のせいにすんのかよ。最低だな。


 いつも何かを与えてくれていた空ではない。

 僕がそういう風に見てしまっているのだから。



 ……帰るか。

 元々この時代の人間ではないんだ。

 それに僕はもういらないだろう。僕がいなくともこの世界は人の手に返る。彼女がいる限り――――


 今日はもう寝よう。そして朝一番に城へ向かう。


 最後にもう一度だけ、彼女の力を借りるために。


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