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はじまり  作者: 新戸kan
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いちやあけて

この作品はR15ですがそれでもこれはアウトだろ、といった表現があればお教えいただけますか?R18小説は見たことないもので。(純真な目)

 夢を見た。その内容はあの時の出来事だった。

 だが肝心なとこがカットされてた…。あのお姫様が語ってた伝承の…。


 おいィゴラァ!そこは全部見せてご都合展開万歳だろうが!僕が一番知りたいところですよ!

 あ、そっちがご都合展開かよ?!

 ああ、待って!まだ夢から覚めないで……!



「――は!」


 がばと目を開くと、ごつごつした天井に向け伸ばされた手が見えた。何か掴もうとしているようだった。

 よく思い出せないが、それでも何か引っかかるものが頭に残っていた。

 ゆっくりと手を下げ、そのまま額に乗せる。


 物語の今後に作用するような重大な夢を見てたような…?

 んん…思い出せないな…。

 多分あれだ。『僕無双が始まるよ予告編』といったものだろう。そんなヒントみたいなもんに頼る僕ちゃんじゃないZE!


 もうひと眠りしようかと体ごと横に向く。


(のわっ?!なんで女の子が一緒に……!)


 眼前には安らかに眠る少女の顔があった。慌てて体を起こし距離を取る。


 あ…そっか、あのまま寝ちゃったんだ…。

 そういえば意識が途切れる前に何かの結論に至った気がするんだけど。

 はて?はてはて?何だっけか?


「うぅん…そこはダメですよぉ……」


 その寝惚けた声の中に色気が隠れていた。

 キヲクの耳が瞬時に反応した。それに導かれ顔も瞬時に彼女へ向く。



(一体どんな夢を見てるんだ…)


 あれ?今ナニ考えてたっけ?

 くっ!一瞬で思考を奪われてしまった!DT力が高すぎたのか?!

 いやあんなん言われて反応せんのは病院行った方がええやろ。せやろ?

 …いい加減関西圏からの苦情が来そうなのでやめよう。(やめるとは言ってない)

 それにしても…可愛い寝顔だ。prprしたいとは言いませんよ?思ってもいませんよ?


 そう思いながらもキヲクの目はトスファに釘付けだった。

 そこへ丁度彼女が目を覚ます。


 あ、目が合った。そんでみるみる顔が赤く…。

 なじぇそんな反応するんですか…。

 舞さんが朝から元気になっちゃうでしょうが!いやこれは朝の生理現象と言いましょうか…。


 昨夜同様、太ももの間に腕を挟んでいるキヲク。トスファから何か隠そうとしているようだ。

 しかし彼女は顔を背けていた。

 暗くてキヲクは気づかなかったが、彼女の顔が赤くなっている



 つ、ついに初めての夜を王子様と…。

 どんな顔して何を話したらいいのかしら?

 ああ、でも素敵な、とても素敵な夜でしたわ!これで子を授かっていればいいのですが…。


 愛おしそうに右手でお腹を摩っている。聖母のような笑みをたたえて。


 さっそく今日から名前を考えないと!

 そうね……あら?お腹の音が聞こえて…?

 ふふ、王子様は朝から元気ですわね!ではさっそく食事の用意を…。


 二人は互いの行動の意味に気付いていなかった。

 自分の世界に入ってそれどころではなかった。

 ――――ハァ。




「どうぞ」


 お母さんが朝食を出してくれた。

 何故かは分からないがすごく安心する。これがBABUMIって文化なのか?


 ここで使われている火の明かり程度では、机を挟んだ短い間隔でも互いの表情が見えづらい。

 しかしみんな揃って食事を始める光景が温かみを増幅させた。



 が…その安心感を打ち消すように隣から不穏な気配が……朝から黒いオーラが見え隠れする。背後にぐぬぬぬぬと文字が見える気がしないでもない。

 おっと、それよりメシだメシ!

 昨日の食事は何故か覚えてないんだが、今食べてるものと同じものを多分食べたんだよな?そんな気がする。

 覚えてない原因は多分お腹が空きすぎていたせいだろう。

(つーことで今度はちゃんと味わいますか!いただきます!)


 ――――ふむ、生食ではなく火を通してあるわけでもない。洞窟暮らしだから何かに漬けて保存食にしてある感じか?

 うまいが米が欲しくなるな。それに毎日だと飽きそうだ。


 キヲクはゆっくりと噛みしめながら食事を続ける。チラチラ横を気にしながら。


 隣に座っているトスファは机に額をつけ項垂れている。彼女の周囲だけ靄がかかったように暗かった。

 食事には手を付けず、耳をすませば唸り声が聞こえてくる。

 時折、その体勢のまま顔をキヲクの方に向けていた。


 うぅ…。さっそくやってしまいましたわ…。浮かれすぎていました…。

 キオクも何だか表情が暗いですわ。

 きっと私の手料理を楽しみにしてらしたはず。次はきちんと…いえ、そんな甘い考えではいけませんわ!

 心に!誓って!私は!食事を!作るのですわ!!



 今度は朝から燃えてますよ?朝から元気ですね?お宅の娘さんは。


 急に立ち上がって拳を掲げた彼女を、キヲクは横目で見ながら食事を終えた。そして静かに手を合わせて心の中で母親と命への感謝の言葉を述べた。



 量は少なかったが満足しているお腹を摩りながら考察に入る。


 ん…そういえば朝の挨拶とかなかったな。食事前とかも。

 やはり異世界は文化が違うのか。カルチャーショックってこういう事かな。

 うっかり挨拶しないようにした方がいいかね。

 それともう一つ…昨日は異様な空気のせいで気にもしなかったが…チラッ、チラチラ。


 トスファとその向かいに座っている母親を交互に見る。

 目が合うのが怖かったので母親を見る際に一瞬だけ父親の方に視線を送った。


 彼女は僕と同じ金髪碧眼だが両親は…黒髪だな。暗闇と同化してるし。

 実は本当の親ではないとか?

 しかし彼女がいる前でこんなこと聞けないしな。とりあえず考察要素としておこう。


 似ているところを探すため、母親の方を見る時間の方が、わずかではあるが増えていた。


 ?どうしてあんなにお母様のこと見てるのかしら?

 …ああ、そういうことね。

 私の方が美味しくて申し訳ないと思ってらっしゃるのね!それでどう気を使っていいのか困ってらっしゃると。

 さすが王子様!素晴らしい気配りですわ!


 トスファのキヲクを見る目が時間を追うごとにレベルアップしているのだが、彼は気づかない。

 考察とは別のところに気を取られていた。

 ――――フゥ。



 今一つの問題がある。それは本当ならば昨日解決しなければならないものだ。

 だが昨日はいろいろなことがありすぎて忘れていた。忘れることが出来ていた。

 しかし、習慣というものはそれをさせてくれない。毎日同じように生活していればそれを変えることはなかなか難しいことなのだ。


 …何が言いたいかと言いますと……トイレ行きたい!!いつも朝起きたらすぐ行ってたから今とてつもなくヤバい!

 創作物ではよくカットされる対象ですが、実際の人間からしたらたまったもんじゃねぇです。

 例えば異世界ものなんかで元居た世界観とは違う世界に跳ばされたとします。そこで彼らはトイレをどうしているのか?

 あ、変な性癖はないですよ?勘違いしないでくださいね?言いたいことはトイレ行きたい!!!

 しかし女性陣がいる今現在なかなか聞きづらく…必死に我慢してるのです。さっきから変なこと言ってんなって思われたのならそのせいです。

 ああ!貴様に分かるか?!押し寄せる大波が、今にも堤防を破壊せんとどんぶらこーどんぶらこーと迫りくる姿が!

 ますます意味わからんと思いますか?それほどの状況なのです!

 もうこれはしょうがない!

「お父さん!」

 王子と言えど君にお父さん呼ばわりされる筋合いはないと目で訴えられる。

 いやいやそんなんいいですから…。


 キヲクが身を乗り出すと、父親はしぶしぶ顔を近づける。女性に聞こえないようにするため左手で口を隠そうとしているキヲクを見て、彼は右耳を向けた。

 キヲクの話を聞いた後、父親は納得した顔を見せ、彼と同じようにして返事を返していた。


 ……なるほど!この世界というかこのご家庭ではそうしてるのか!



 その様子を逃さず見ていたトスファは目を丸くしていた。


 お と う さ ん?いつの間に親子の契りを交わしたのでしょう?

 …ということはお父様も認めてくださったのね!

 それに今のは…真剣な顔をしてらしたわね?

 もしかして報告したのでしょうか?気がお早いこと。

 あっ…手から伝わってくるわ……新しい命の鼓動が!


 キヲクのそれとは別の意味でお腹を摩るトスファ。彼はそれに目も向けず、すごい勢いでその場を去った。


(あら?急いでどこに……あっちは…)



「うっ…ふぅ」

 天使が空から舞い降りてくる。それに釣られ僕の顔はヘヴン状態に……変なことはしてませんよ?用を足しているだけです。堤防は決壊することなく無事でした。

 一応説明しておきます。皆様もこの世界に来られることがあったら思い出してください。

 方法はいたって簡単です。専用に掘られた横穴で掘って埋める、以上です!俗に言うにゃんにゃん方式ですね!

 しかしドア的なものがないからいつかリ〇さん的展開がありそうですな。〇トさんの気持ちが分かる時がくるのか…。


 石と石がぶつかる音が聞こえる。それは自然発生したものではなく、人為的に感じた。


 ああ、なるほど!ノックの代わりか!

 ……別に残念がってないですよ?ラッキースケベ期待してたとかないですよ?

 おや?彼女の様子が…。

 あああ、彼女もか!早く済ませないと。


 壁で体を隠しキヲクの方からは彼女の頭しか見えず、全身や表情は見えない。それでも彼女が何かに耐えているかのように体を揺らしているであろうということは分かった。

 それを順番待ちしていると考えた彼は、慌ててそれ用に用意された木片で自ら掘った穴を埋めていた。


 もしかしなくても王子様は興味がおありなのかしら?お母様の話ではそういった人もいると…。は、恥ずかしいですけど王子様がお望みなのでしたら…。



 …不穏で不純な空気を感じる。

 早くこの場を去らねば!R18扱いを受ける前に!



 危ない空気だけは読めるキヲクだった。

 ――――ハァ?





(さて、今日はどうするか…)


 歯磨きを済ませ、体を伸ばす。


 テレビで見たことがあった――――木の棒の先を歯で噛み解して歯ブラシにするというやつだ。

 いきなり渡されたときは変な顔してしまったが、すぐに気付いて良かった…。


(ん?トスファが何か準備してるな?)



 今日は久しぶりに街まで行ってみましょ。

 お母様がおっしゃられていたように身だしなみを何とかいたしませんと。貴重なものがまだ残ってると良いのですけど。


 食材入れの籠を背負い、服を引っ張って何やら考えている。


 籠とはいっても木の枝をそのまま使っているせいで歪な形になっている。

 それに彼女が見ている服から考えても、豊かで余裕のある生活を送っているとは思えない。


 ああ、そうか。一人分増えたから食料の確保が必要なのか。

 …これは手伝わないと男としてダメだよな?



 名を呼ばれたのに気づきそちらを振り返る。

(あら?王子様、一体何の…?)


「僕も一緒に行くよ」



 なななななんですってぇぇええええええええ?!二人でお出かけ?!

 ここ、これは?!ででで…でぇとというものでは?!はるか昔にあったと言われる伝説の!

 男性からのお誘い…間違いありませんわ!ですよね、お母様!


「初めてですので…お願いいたしますわね?」


 恥ずかしそうにもじもじしているトスファを、キヲクは怪訝そうに見ている。

 彼は腰に左手を当て提案しようと軽く差し出していた右手を顎へ持ってくる。


 初めて?採り尽くしたから新しい場所を開拓するってことかな?

 荷物持ちくらいは出来るかなと思ってたんだけど、魔物が出るかもしれないし邪魔になるかな?

 でも一緒に行っていいみたいだし、それに…。


 冒険は漢のロマン!ファンタジーの王道!数少ないスキルが発動しましたよ!!

 そして僕は新たなスキル<めげない心>を身に付けたぞ!

 …前から持ってた気がしないでもない。

 おっと、出発前の確認は常識だよな!

 今現在のスキルは…テンションアゲアゲ。めげない心。そして、さぎすきる。

 えっと他には…ほ、他には…!

 これだけなのか?もっといろいろあるでしょう?

 いやこの世界にスキルなんてねーし!主人公補正がないからって拗ねてるわけじゃねーし!

 …悲しくなってきた。

 自分との戦いが繰り広げられている間に彼女の準備が終わってる。ナンテコッタ!

 しかしさっきまで彼女が背負っていた籠みたいなのがない。食料確保に行くんじゃないのかな?


 いつの間に下ろしたのか彼女が背負っていた籠は片付けられていた。



 でぇとですからね。余計なものは置いてっと。

 でも困りましたわ。モノがあっても数は拾えませんわね?王子様に持っていただくわけにはいきませんし…。

 とりあえず行ってみて決めましょうか!あまりお待たせしてはいけませんからね!


 トスファは右手を伸ばし光差し込む外へと向ける。


「では参りましょう!旧市街へ!」


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