あらたなちからをもとめて
前回までのはじまりは!
哀れにも死んでしまった男。目を覚ますとそこは――――
ウホッいい男!男だらけの異世界生活、ポロリもあるよ!
バラの花が咲き乱れる異世界だった!
――えーっと、キオ↑ク↓だっけ?ま、いいわ。
無様な男を巡って取り合う男たち…。それを利用しはーれむを作り上げようとする愚昧男。それに気づいた王は異世界から新たな勇者を召還した!
その名はユズ!聖女の血を引きし選ばれし令嬢!
穢れたこの世界を救うため、仲間であり許嫁でもあるトスファと彼女に想いを寄せる幼馴染ドアと共に聖剣ショト―グマを探す旅に出る。
しかし、それを阻止すべく卑猥男から刺客が送られる。
果たして彼女たちは無事に――
おいまて。ちょっとまて。誰が哀れで無様で愚昧で卑猥で鈍感ドンチキチーだこら!全くあってないあらすじすんな!
突如現れた男に当たる照明。
辺りが騒めき始める中、その男は瞬時に暗闇に飲まれ、その間に蹴飛ばされる。
――聖剣を手に入れたユズ。
しかし、キもそれに対抗すべく魔剣を手に入れていた。
激しくぶつかり合う聖剣と魔剣……勝ったのは魔剣だった。
おいこら!蹴飛ばしておいて無視するな!黒子扱いすんな!大体キってなんだよ?略すにもほどがあ――――
再度舞台に上がろうとしていた男が全身黒い衣装で覆われた人たちに連れていかれる。
まだしつこく何かを喋っていたようだが、音声が切られたようだ。
折れてしまった聖剣ショト―グマ。
けれど彼女たちの心は折れていなかった!3人の心が一つとなって新たな刃がニョキニョキ生えてくる!
光の聖剣、その名も――穢れ払う聖女の剣!
ユズとトスファ――愛し合う二人が手を重ねて剣を握る。初めての共同作業!
ドアも入れてあげてよぉ!@それが剣の名前でいいの?
男は観客席に連れていかれたようだ。
両隣には警備員と思われる人が座っている。
「おねえさま、アレを使うわ!」
「ええ!良くってよ!」
二人の背中から翼が見える…!これはまさか………!
「その通りよ!アタシたちはこの世界の汚れを払う聖女であり令嬢であり天使であり新婚さん!」
「行ってきますからおかえりまで、あなたの帰りは私が守る!」
「今、必殺のぉ!!」
「「愛の奇跡48!!!」」
な?!二人の後ろに48人の人影が?!
あれ?全部足すと50じゃ…?
「――――て…。ぐ、ぐわぁああああああああああ?!」
「やったわ!」
ふ、ふふふ。よくやったと褒めてやろう。だけど僕は四天王の中でも最弱!残り4人の強者が必ずお前たちを――ぐふ?!
いつの間にか舞台に上がっていた男は負け犬の遠吠えを吠え散らかす。
真っ白に燃え尽き倒れたソレを黒ずくめの男たちが撤去した。
いよいよクライマックスを迎えるのだ。
「おねえさま、これでやっと、結ばれるのね…」
「もう離さない。あなたは私だけを見ていて」
見つめ合う二人の距離が近づいていく…。そして触れ合う唇とく――
いい加減にしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
何勝手に話作ってんだよ!そんな展開今までなかっただろうが?!
トスファも何か言ってやってよ!
「………ごめんなさい、キオク。私、本当はユズのことが……」
えっ?!そ、そんな馬鹿な?!
いやだ…そんなの――――
二人が仲良く手をつなぎ、僕に背を向ける。
離れていく彼女らに手を伸ばし追いかけるも、距離はどんどん開いていき、その姿が小さくなっていく。
彼女が振り返ることは一度もなかった。
「いやだああああああああああああああああああ?!」
静かだった森がその叫びで一時騒然となる。
遥か遠くの方まで警戒する泣き声が連なっていた。
(は!一体何を…?って寝てたのか?!こんなところで?!…みんなは?!)
伸ばした手に引っ張られるように上体を起こしていた。
あの時と同様に何も掴まなかった手よりも、みんなの方が心配だった。
「ぅん……キオクぅ……おしおき、くだしゃい…」
「ユズ様、今日はぁ、私の(自主規制)…」
二人はいつも通りだな、うん。ユズは――カットでいいや。
3人は頭を他の人に預けている。
僕の太ももにはトスファの頭が乗っている。
もしかして僕も誰かを枕にしていたんだろうか、と頭のあった位置に目をやる。
陽射しをたっぷりと浴びたせいだろう。だらだらと汗が流れる。
起こしては悪いと細心の注意を払って、視線を戻す。
一息吐くと、冷めた体を柔らかな風が温めてくれる。
…うーん、風が心地いいな。
おかげでゆっくり寝れたが、不用心だったな。今後こういうことがないよう気をつけよう。
もう一度息を吐く。
みんなの寝息が交じり合っていた。
――みんなが起きるまで可愛い寝顔でも見てますかね。
ただしユズは除く。バレたら後でうるさいからね。
(…しかし、僕はどんな夢を見てたんだ?全く関係ない話で尺を取られた気分なんだが…)
思い出そうとすると何故かイラっとしたのですぐにやめた。絶対コイツ関連だな。
トスファを起こさないよう静かに体を倒して手を伸ばす。
ユズの頬を思いっきり抓るためだ。だがそれでも起きない彼女。
額に魚肉ソーセージって書いてやりたい。ペンさえあれば…くっ!
「おねえさま、もっとぉ!もっとアタシをいじめてぇ!」
Мだったか。あの時も痛いふりして感じてたな。
(……しまった?!カットしてたのについかまってしまった!これがユズの罠…!)
悔しいので今度は両手でつねってみるが――
「デュフフフ、おええああ、ひおひいいでうあ…」
きもっ!笑い方きもっ!映像音声付きでお送りできないのが残念なほどです。
いろいろ残念過ぎて百年の恋も冷めるってやつでしょうか?
またも心まで冷えてしまったわ。
さて…ただボーっと寝顔を眺めてるのもアレなので、久々に石いじりでもしますかね。魔力が上がったことでどうなるか試してみたいし。
その辺に落ちてた石を適当に拾い上げ、握り締める。そして魔力を送るようにイメージすると――
(あれ?石が消えた…?消滅したってことか?これは…?)
変な夢のせいで目覚めパッチリ、脳もスッキリ――――
(送った魔力量に石が耐えれなかったってことか?そう仮定すると…?)
――――するはずもなく、少し霧がかっていた。
そこから答えを探し出す。
容量を超えると対象が消滅――――つまり僕の体の容量が少なければ、トスファの魔力を受け入れきれず消滅してたってことか?
え?なにそれこわい。あくまで検証前の話だけど。
(もしこれが事実なら対魔物にも使えるか?いやでも逆に強くなっちゃう可能性も…。トスファが試すよりも、弱い僕がやった方が良いな)
そう考えた僕は石いじりを再開した。戦闘という緊迫感の中でも確実に素早くできるようにするために。
鳥たちがギャーギャーとやかましく騒ぐ。
それを目覚ましに3人が重い目蓋を擦る。
――――彼女らが声をかけてくるまで、僕はそれに没頭していた。




