さんすくみ?
そういえば姿の見えない親世代は何をしているのだろうか?
探すついでにここを探検してみようと思い、彼女ら3人を連れ立って部屋を出た。
入ってすぐの広間も相当広かったが、奥はそれ以上のようだ。
一つの街として機能していたという僕の予想はあながち間違いではなかったようです。
見上げるとはるか遠くに感じる高い天井。
高層ビルのように細かく階分けされているかと思っていたが、折り返しの階段やら、やたらとグルグルと長い螺旋階段やらで3階までしかないようだ。
巨人でもいたんだろうかと考えてしまうほど、1階1階の空間が高い広いと無駄にある感じだった。
それで…城の広さにも驚いたんだけど、それ以上に僕を困惑させたのは――
人、人、人!
多くの人がこの城の整備をしていたのだ。しかも、みんなの髪がカラフルになって。
それだけならまだ予想の範疇だったのだが、その人々が僕に対して――
「王子!もう体はいいんで?」
「お体は大事になさってくださいね、王子」
僕が王子として認識されているのです!
考えもしなかった展開に、引きつった笑みで手を振って応えることしか出来なかった。
犯人と思われる人物の顔をじっと見る。
一番話しそうな口の柔らかい人物を!
「わ、私じゃないよ?!ずっとキオクの側にいたし…」
それもそうだな。だとすると犯人は――――
「あら?もう体は良いのかしら?――大変だったのよ?トスファったら――――」
「お母様!!」
トスファは恥ずかしいのかお母さんの口をふさごうと手を伸ばしていた。
(…なんとなく想像できるんだよなぁ。そうそう、こんな感じこんな感じ!)
――それを想像すると顔が勝手にニヤニヤしていた。
それを見たトスファの顔がみるみる赤くなっていく。
「なんですの!キオクったら、そんなだらしない顔して!!」
(怒ると口調が戻るんだな…。やっぱりそっちが素なのかな……)
詰め寄ってくるトスファを両手で制する。
困っている顔の僕と怒り顔のトスファを見て、二人は楽しそうに笑っていた。
何も変わらない日常を僕も内心楽しんでいた。
「ところで――――」
王子の件について二人に問い詰める。すると――――
「そうよ?私たちが話したわ」
「その方が手っ取り早いだろう?いろいろと…」
アッサリ認めたうえ、その方が絶対良いと逆に諭された。
髭があった時の癖が抜けないのか、お父さんの手が顎の下で空を揉んでいる。
(――いや、目立つやん。僕すごい目立っちゃってるやん…)
二人を見つけるまで、様々な視線を受けてきた。中には喜ばしい視線もあったのだが、それを受けるたびに黒いオーラが溢れ周りを威嚇している者がいた。おかげでこっちもいろいろ大変だったのです。
ここにいる人たちが父母の話を素直に聞き入れたのには理由がある。
キヲクたちが城内で大変なことになっていた時、城外でもそれが起きていた。
復讐かどうかは分からないが、待ち受けていたかのように魔物たちが外にいたのだ。
それを撃退したのはもちろん二人。
逃げることしか出来なかった対象に臆することなく向かって行った。
その数に苦戦しながらも一人も欠けることなく守り切った瞬間、二人は英雄となったのだ。
その二人に魔力を授けた者――――それがキヲクをも受け入れた彼らの眼差しの意味だ。
「なるほど、そういうことですか。それならそれでいいです、もう。それよりも彼らにも…?」
僕が寝ている間に二人が主導で魔力の扱いを教えていたようだ。
もちろん、甘い蜜を吸っていた彼らにも――
多分ユズが脅していたんだろうから問題はないだろう。
現に彼らも額に汗して働いている。悪いのはユズだけだったのだ。
「な、なによ?!」
僕の視線の意味を感じ取ったのだろう。ユズはお尻を手で押さえながら後退る。
相当お仕置きが効いてるみたいだな。トスファがいればもう悪いことはしないとは思うけど、調子に乗りやすい彼女のことだ、僕も抑制力として目を光らせておこう。
光らせついでに周囲の人間にも視線を向けてみたが、元の世界では多かった茶系や金色の髪をした人は一人もいなかった。
それどころかユズやドアのような人も――――単色系が多いようだ。
彼女らが特殊なのか、それとも両親の色が交じり合ったりするのだろうか?
(そういえば、ゆるゆるさんはどうしたのだろう?ここまで姿を見なかったんだが?)
ドアに所在を尋ねようと顔を見るが、目を逸らされてしまう。
魔力が使えるようになっても性格は変わってないようだ。そこも人それぞれなのだろう。
「お父さんは、お母さんたちを迎えに…」
僕の聞きたかったことを察してくれたようだ。助かる。
――――こいつも空気が読めればなぁ。
「な、なによ?!さっきからなんなのよ、アンタは!」
声はロリロリしてて可愛いのにな。彼女――需要がある設定だけど、僕には合わないな。
『よろしい!ならば――――』
……どこかから宣戦布告が聞こえてきた気がする。今後この話題には触れないでおこう…。
「お父さん一人で大丈夫だったのかな?」
「……ユズ様の傍に、いていいって…」
頼りなさそうに見えたんだけど、彼も性格が変わったのだろうか。
いや、娘のためにここまで来たんだ。元々芯の強い人なのだろう。
一人納得してうんうん頷いていると、再びピンクの頭が目に入る。
「――もてもてですねぇ?ユズ様?」
「…アンタ、さっきからケンカ売ってんの?!」
「ぶぇっつにぃぃいいいい?」
「――コイツ、殺すわ」
そう言って、指をくるくると回し始めた。
からかいすぎたようです。ついつい女友達と話すような感じで接してしまいました。
後で言われましたが、ムカつく目をしていたようです。さーせん。
「ダメよ、ユズ!お仕置きするわよ!」
「…おねえさまのおしおきは大歓迎ですぅ」
お仕置きと聞いて顔を赤くするユズ。トスファの怒った顔でさえ彼女にはご褒美のようで、顔がだらしなく蕩けています。
そうなってくると攻守が逆転し、お仕置きする側の腰が引けてきていた。
ふぅ…また始まった。今後のことを考え、ここは3人のパワーバランスをとる方向でいこう。
不甲斐ない自分に苛立つ気持ちを外に向けれず、体を震わせるドアに近づき耳打ちする。
「――ほら、トスファに取られちゃうよ?ドアも頑張らないと」
「…え?それは、いや!……でも、どうしたら?」
僕はやや首を伸ばしていた。そうしなければ、彼女の耳には届かない。
彼女が猫背になっていたのにこれだ。
けど自分より背の高い女友達はいなかったから、なんか新鮮だ。
ドアもどうにかしたいと思っていたようで、膝を少し屈めて聞く態勢を取る。
彼女は新しい服を着ていた。
ユズへの気持ちを込めているかのような薄いピンク色の服。ドアはその胸の辺りをギュッと握りしめていた。
僕もそれに応えようと思った。
「ドアの方が大きいんだから抱き着いちゃえば良いんじゃないかな?子供みたいに抱きかかえてみるとか…」
「ん……。分かった。…やってみる!」
横から見ると大小中ですね。何がって背の話です。別の表現だと巨無微です。
分からないならその方がいいです。まだ引き返せます。
ユズの後ろからゆっくりと迫っていくドア。それに気づかずトスファに迫っているユズ。
果たして――――
「ちょっと?!ドア、アンタなにするのよ?!」
「…捕まえた!もう、離さない。ユズ様ぁ」
ドアはユズを抱きかかえ、甘えるように頬ずりをする。ユズは両手で押しのけようとしていたが、体格差もあってままならないようだった。
60も差があればね。大人と子供のように争いにもならない。
上手くいって気をよくしたのか、ドアは自身のビッグメロンにユズの顔を埋めさせ、幸せそうな顔をしている。
しかし、ジタバタと暴れていたユズが次第に大人しくなっていき――その手がパタッと落ちた。
これは――――
「ドア!ユズが死ぬ?!離して、離して!!」
「…え?きゃあ?!ユズ様?!ユズ様ぁ?!」
3人のバランスはなかなか悪いようです。どうしたらいいですかね?
僕は困り顔でそれを見ていた。
しかし黙って見ていたご両親は耐え切れず大きな笑い声を出す。
それは城内に木霊し、伝播して大合唱となる。
いつの間にか僕らの中心に笑顔の輪が出来ていた。
文字数が本編を超えただと?!
バカな?!一体どこに間違いが?!
……まだまだ続きます。




