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はじまり  作者: 新戸kan
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きょぞう

 男に手を支えられ、ゆっくりとフォーメーションの真ん中へ導かれる少女。

 そこからは今にも消えてしまいそうな、儚げな雰囲気が漂い、その姿はまるですぐに壊れてしまいそうな人形――そう印象付けられた。


 少女は頭を布で覆い顔は仮面で隠している。だぼだぼの服からでも胸部は平さんと見た。

 それなのになぜ女の子だと分かったのか?


 答えは簡単だ。魔力を見れば。体から溢れんばかりの魔力、それがはっきりと見て取れる。

 例外を除けば男性よりも女性の方が魔力が多い傾向にある。それが理由だ。

 ……データ少なすぎじゃ?とか、体感(笑)とか言わないでください。

 とにかく!今まで見てきた魔物なら余裕で無双できるだろう。

 それくらい強者のオーラを纏っている。見た目の印象とは裏腹というやつだ。



 そんな彼女を男たちがいいように使って、いい思いしてるってわけか。お仕置き案件ですな、これは。

 しかし、行動を起こすのはまだ早いか?もう少し様子を見てみよう。

「……では救世者、ユズ様のお力をお見せしましょう!」

 柚子?ワッフーを感じるネーミングきたな。なんか懐かしいな。

 …それで、どうやって力を見せるんだ?


 自分がいる場所から彼らまでは40メートル近くある。

 僕は背丈があるので必要はなかったのだが、背やら首やらを伸ばして前方に視線を送る。

 すると何やら、ギギッと錆びついていそうな古めかしい音が聞こえてくる。



 奥の扉が開き、そこから現れたのは…。

「ひっ?!」

 後部にいる人たちからどよめきと悲鳴が起こる。座ったまま大半が一斉に後退る。

 だが前にいる人々は平然とそれを見ていた。その為、彼らとの間には大きな隙間が出来ていた。


 男たちに棒で押されて出てきたのは獣人タイプの魔物。

 しかしその両腕は胴体と一緒に光る輪っかで拘束されている。両足にもそれぞれ輪が取り付けられており、食い込んでいるように見える。

 

 なるほど、あれは魔力でできた輪――マジックリングってところか。それを使って暴れられないよう拘束しているのか…。

 で、暴れようとすればするほど食い込んでいく――やってることも印象とは真逆だな。


 魔物は力を使い果たしたのか、諦めてしまっているのか、余計な身動き一つせず前のめりに為すがまま押されていた。

 

 ――――道中で魔物をほとんど見なかったのはこれが理由か。

 彼女が定期的に捕獲や狩り、ワールドをしていたってことだな。



「ユズ様、お力を彼らにお示しください」

 少女が手のひらに魔力を集中させ、それをリングに送る。

 するとリングがその大きさを徐々に縮めさせ、身の軋む音が辺りに響く。同じように封じられた口の隙間からは苦しみの息が漏れる。そして断末魔すらあげれぬまま魔物の胴体は二つに分かれた。

 ――その場には緑色の血の海と手のひらほどの大きさのリングが残っていた。

 それを行った者の表情は見えないが、平然と行ったように見える。おそらく周りの男たちが彼女にそうさせているのだろう。

 ――薄い本のような展開で!


 僕たちと同じ後ろでそれを見ていた人々は、言葉を失い体を震わせていた。

 魔力で出来ているため輪が見えないのだ。

 何故魔物が無抵抗な状態で連れてこられ、突然その体が切断されたのか分かっていないはずだ。


 それは一つの感情を彼らに植え付ける。


 恐怖――人を支配するのにこれほど便利なものはない。いつその力が自分に向けられるか分からない、そんな思いを抱かせ従順にさせるのだから。


 疑念が確信に変わる。

 キヲクの目は男たちの姿をしっかりと捉えていた。



 今すぐにでも悪行を暴きたいところだが、これだけ人が多いと近づくまでに逃げられそうだ。

 今の状況では少しずつ前に行くのも厳しいか?

 周りの人間は恐怖で身動きすらできていない。そんな中での移動は怪しすぎる。


 どうにかして近づけないかと視線を泳がす。

 しかし両サイドの大きな窓から入り込む明かりが、外と同じように内部を照らしているため、少しでも動けばすぐに分かる。


 どうするかと思案を巡らせていると、向こうからチャンスをくれた。

「ではこれからの世のために献上品を――――」



 待っている間、何を要求しているのか見ていたが―――初見さんは服や缶詰など貴重なものを渡していたが、信者たちは野草などありふれたものを渡していた。

 入信者を選別してるみたいだな。誰でも歓迎ってのは嘘か?それか入ってからの待遇に差が出るとか…。



(ん…?次はゆるゆるさんか。一体何を差し出すんだ……?)

「……では娘をよろしくお願いします」

(な?!自分の娘を?!娘のためってこういうことなのか?!)

「…例の娘か。ふむ、これはなかなか……」

 前に突き出されたドアの体をまじまじと見つめる男たち。値踏みするように舐めまわすように視線を這わす。

 その目つきはなんて――――いやらしい!うらやま……何でもありません。

 彼女も恥ずかしそうにもじもじしている。

 そのたびに揺れる豊満な体。男たちはその体に釘付けになっていた。

「――ん゛、ん゛ん゛!!」

(なんだ、今のドスの効いた声は?どっからだ?)

 男たちは慌てて顔を逸らし、姿勢を正す。みな視線を逸らして目が合わないようにしているようだ。

 僕はその視線の先に何かあるかと目で追ってしまっていた。



(何もないが…?いやいやそれよりも、もう限界だな。彼女があのおっさんたちの慰み者にされるのは許せん!成敗いたす!)


 3人にはここに来る前に自分の考えを説明しておいた。なので、目配せするだけでみんなには伝わった。

 これまで良い子して黙って見ていたトスファはやる気に満ちている。


 それでは真の救世者の魔力、お見せしましょうか!


「ちょおっと待ったああ!!」

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