きょじょう
それから一夜明けて――――
「キオク!あれを…」
お父さんが指さした方を見る。
遠目からでも分かる巨大な建築物。
(あれは……もしかして城か?!向こうの城とは趣が違うが…)
見慣れていないといけない僕でもまじまじと見てしまう。
権威の象徴――そういったものは飾られていない。
――が、デカい!ただただデカい!
旧市街の建物をそのまま大きくして積み木のように組み合わせたと言えば、イメージが近いだろうか。
その大きくしたという部分が異常なわけだが。
居住施設としての意味合いが強いのかな。複数の施設を置くことでそれが一つの街として機能させるとか。
あ、それ良いんじゃ?悪人だったら乗っ取ってそうしてしまおう。
……どうも偏見を持ってしまっているようで。まだそうと決まったわけじゃないのになぁ。
でもそっちの方が都合が良いんだよなぁ。(チラッ)
「ん?何?触りたくなった?」
チラッと見た方にトスファがいた。まだ諦めていないらしい。
というか、みんなに聞こえるように言うのは止めて…。いろいろ誤解されちゃう。
というのも、あれからドアには避けられてしまっている。
今もゆるゆるさんの後ろをピッタリくっついている。
あんなことがあったからしょうがないんだけど、これじゃ謝れない。事情を説明するのも気が引けて…。
機会を伺う、それしかないか。
それよりも気を引き締めていかないとね。どんな人間か分からないけど、簡単に取り込まれるわけにはいかないからね。
城(仮称)の側まで来るとその光景に驚く。
黒い葉を茂らせた茶色い幹が街路樹のように綺麗に立ち並んでいる。
風に揺られてか、もぞもぞと動いている。
(これみんな人だよな?こんなにいたのか?人気店もびっくりの行列じゃないか)
みんなも僕と同じように驚いていた。普通の生活を経験してた親世代も。そろいもそろって目を丸くしていた。
ドアだけは顔をそーっと出したかと思えばすぐに引っ込めを繰り返してた。
「とりあえず僕たちも並びましょう」
3人がフードを被っているのを確認してから最後尾に並んだ。
「トスファは楽しそうだね?」
「こんなにたくさんの人初めて見たから!」
人が多いとテンション上がるタイプか。うん、女王様向きだな!
僕は逆に苦手なんだよな。この見た目のせいで向こうでは目立ってたけど、僕はオタクなわけでぇ。注目されるのは精神的にきついもんでぇ。見世物パンダ状態な頃もあったので人が多いのは苦手です、はい。
気を紛らわせるため、行列の前方に目を向ける。
なにやら受け付けみたいなのが設置されてますね。何をチェックしてるんだろう?
みんなも退屈になってきたのか、思い思いにその暇を過ごしている。
割り込みやらで騒ぎが起こらないのもここが外だからだろな。びくびくしている人が結構多いし。
…静かでいいね。
こういうのんびりの時間もたまにはいいよね。なんかいつもドタバタしてるから。
――――それを思い出すと、思わず乾いた笑いが口から漏れてしまったが、温かいものが僕を満たしていた。
「――次の方どうぞ」
やっと僕たちの番だ。長い行列だったけど、あまり待った気はしないな。
「……ご家族で、と。それで初めてですね?」
僕たちの関係、再訪かどうかの確認。大したことは聞かれなかった。フードに関しても何も言われなかった。
結構いい加減だな?それで問題ないということかな。
初めてにもかかわらず、他の人たちとは違い小奇麗な身なりをしているというのに。
怪しむどころか、歓迎している顔だな。
「では、こちらを腕に巻いてください。どちらでもいいので…」
布を手渡された。
これで分かりやすくするということか。あとで何かしらの意味があるんだろうな。
「入ってすぐが大広間になります。そちらでお待ちください」
中に入ってからもその広さに驚く。
(サッカー場が丸々入るくらいか?行ったことないけど学校の運動場から考えたらそんなものだよな)
正面からでは分からなかったが、周りは腰の高さくらいから天井付近までの大きな窓で囲まれている。外の木々が見えることからガラスと同じ様なものだろう。
だが格子状の区切りが無く、1枚1枚の大きさやその透明度――かなりの技術ではないだろうか。
天井までは学校の体育館と同じくらいかな?広さの割には低い気もするが…。
そして奥に行くには扉が一つだけ……。これがこの世界の防衛構造なのだろうか……?
とりあえずみんなを後ろの方へ誘導する。
観察するなら全体を見渡せる後ろ、決して後ろからの視線が気になるとかそんなことはない。断じてない!
前の方は腕に布を巻いてない人たち、つまり初見さんはない方々。で、後ろの方は僕たちと同じように巻いてる人と見事に分かれている。
それは彼らに対する疑念や信心を表している様だった。
重く大きな扉が閉じられ、それと共に前の方々が両膝と両手を床に付ける。そしてゆっくりと頭を下げた。
それに倣い、僕ら後ろの人間も頭を下げる。
いよいよ始まるのか、静粛な空気が辺りに満ちていた。
「面をお上げくださいませ」
それに従い顔をあげると、信者の前に立つ5人の男たちが目に入る。後ろ4前1のフォーメーションを組んでいる。
(…!デザート〇ンス!PARYYYYYY)
全員黒髪だ。魔力も今まで出会ってきた人たちと大差ない。
だがその身なりは違った。
信者の方たちはやせ細って服もボロボロ、漫画とかでよく見る奴隷みたいにも見える。
それに比べ前の5人は――決して太ってるといるわけではないが肉付きはよく、貴族が着てそうな煌びやかな服を纏っている。
あんな服がこの世界にはあるんだと思ったよ。
それでこのご高説だ。これは黒で決まりではないだろうか?前の男たちも信者方も黒髪だしな!
しかし、これだけで人々が納得するだろうか?全く心に響いてこないんだが?
延々と喋り続けている男の話を後ろの人間はきょとんして聞いている。
背後からでもそれが容易に想像できた。
「――――では、我らが救世者をお呼びします」
本命はそっちか。さて、どんな人物が出てくることやら…。
奥の扉から現れたのは背の低い気弱そうな女の子だった。




