第三十六話
こんな形でお母様のお話が役に立つとは思いませんでした。初めて出会った男性方。その症状はとても芳しくなく、両親がこうなっていたかもしれないと思うと、とても胸を痛めました。お母様のお話が無ければ私もと。それが閃きでした。
初めの内は聞いてくれているのか分かりませんでした。ですが私は根気強く、お気に入りの王子様とお姫様の話を聞かせていました。そちらを優先して、これまでの分を纏めて書いたりもしました。当然のことですよね?両親が、彼が、私にしてくれたように、私もみんなに出来ることをしてあげたい。
纏めて書いたのは、このことだけが原因ではありませんでした。
この頃彼の様子が少し変です。私が聞いても何も話してくれません。少し、気が立っている、怒っているようにも見えました。その時は決まって、お話を聞かせている時のようです。お世話をしている方々の一人が教えてくれました。その理由が分かっていればこんなことにはならなかったのでしょうか。
これも私にとって初めてことでした。彼とケンカをしてしまったのです。お話では知っていたのですが、頭が冷めて漸くそれをケンカと知り、しかし気付くには遅く、彼とはしばらく口を利けませんでした。彼と一緒にいるようになって、こんなつらい思いをした日々が今まであったでしょうか。どうやって謝ったらいいものか分からず、代わりのお話をと思っても、彼は顔すら向けてくれず立ち去ります。お母様に相談しても、若いって良いわよねって、よく分からないことを仰いますし。
この後、私一人で眠れるでしょうか。彼のぬくもりのない、この暗い洞穴で、かつてはそうしていたことなのに。
これから先、あなた達の時代には、とても穏やかな時が流れるでしょう。ここで出会った人たちだけじゃない、私が彼と共に、皆が笑顔で暮らせる世にしていくからです。でもそうすると、悪い感情が今度は人へと向かっていくかもしれません。そう思わずにはいられなかったのが今回の件です。この間は浮かれすぎて書き忘れていましたが、これが悪い例、反面きょうしというものです。これをそう受け止め、決してケンカのすることのないように。この世に生を受けた、同じ人間なのですから。つらい思いをするのは今の時代だけで、それも私達が終わらせます、必ず。
ああ、どうやって謝ったら彼は許してくれるでしょうか。読みづらかったらごめんなさい。今も手が少し震えていて。それくらい明日が不安な日がありましたか?読み返してみてください、きっとこれが初めてですから。こんな初めてはもうこりごりです。もう一度書きます。ケンカは駄目ですよ。




