おはなし
昨日は大変だった…。
思い出すとまた腹が立ってくる。
(あのクソ魔物ども、空気読めや!あいつらリア充絶対殺すマンかよ!もう今度からリア充爆発しろは使わねぇわ!あれ?僕はリア充だった?)
そう、あの後新種の魔物たちに襲われたのだ。
強さ的には大したことなかったのだが、ご褒美を邪魔されたトスファが怒り狂い……あとは察してください。新しい奥義は使ってないので。
彼女を止めるのに必死でどんなヤツらだったのか、忘れてしまった。
今度遭遇した時はしっかり観察しておかねば。
その後は二人と交代したんだけど、変な音がしてて熟睡できたとは言えないんだよね…。
また魔物でも出たのかな?
そうだとしたら二人で対処できたってことだけど…。
見回りにでも行ってたのだろうか。
目が覚めた時には周囲にいなかった二人の姿が確認できる。
日を背にしているせいか全身が暗く見えてしまうが、身体をどこか悪くしているようには見えない。
寝起きついでという感じで目蓋を擦る。
(えっ?!お父さん、なんでそんなにやつれて…?!そんなに激戦だったの?!
いやでもお母さんは妙につやつやしてるし……まさか、ね?)
頬がやつれているお父さんを見て、未来(仮)の出来事を思い出す。
(多分僕も同じようになってたよね。あの時は確か、サキュ――――って)
友達が貸してくれた漫画の読みすぎだろう。
朝から元気になる妄想は止めよう。
お父さんは怪我をしているようには見えないが、足腰にきているのかヨロヨロしている。
また精神面をやられてしまったのかと心配になる。
(こんな状態で先に進んで良いのだろうか…。一旦戻った方が良いかな?)
一度そう思うとなかなか頭から離れていかないため、そういうふうな目でしか見られなかった。
「それじゃ今日も頑張りましょう!ね、あなた!」
「そうだね。魔物がでてもみんなを守るために私も頑張るよ!」
(あれ…?お父さん、見た目に反してやる気に満ちている…。あの絶望的な顔を見た後だからどうなるかと思ったけど、良い方に転んだみたいで良かったな)
(なんだこのオーラは?!初めてだぞ、こんなことは?!)
周囲を見てもいつもよりも早く景色が流れていくように感じる。
今日は昨日と違いまして、前二人後ろ二人となっているんですが、前が子供後ろが大人で分けられたのです。
そして後ろからただならぬ気配を――じゃなかった、ラブラブなふいんきが漂って――じゃない、見せつけるかのように押し付けるかのように背中をぐいぐいと押してくるのですよ。そのオーラが!
実際、前を歩く二人は後ろから強風に煽られているかのように、足が前へ前へと進んでいた。
前からはとても穏やかな風が吹いてくるというのに。
怖いもの見たさではないが、一度だけ振り返ったんです。
そうしたらですよ。
ぽわぽわーとしたピンク色の光が二人を包んでいるんです。
表現ではないです。マジの話です。
二人の感情に合わせて魔力の色でも変わったんじゃないですかね?(鼻ほじ)
しばらくじっと見ちゃいましたわ。
でも僕の視線をものともしないんですよね、二人とも。
やっぱつえぇわ。
仲良きことはよきことかなと、そう思うことにしたんですが……その空気に当てられたのか、トスファからも似たようなオーラが発せられているのです。
周りみんなピンク空間。
僕だけなのかな、そう見えてるのは。
何だか僕一人だけが取り残されてる感じ。
(これはもう、僕も乗るしかないのか?このビックウェーブに。
しかしトスファのは二人のソレとは違うわけで…)
今日も横顔がとてもチャーミングなトスファさん。
今日も手がやぁらかぁい。
(これはアレだ。ブラコン妹的な……いや、それだとラヴだな…。
仲良し兄妹的な?お前が兄かよ、ってツッコミはナシで!
とにかく、甘えたがりな妹って感じだな。知らないけど多分そう!)
繋いだ手は今日も離さないのです。
そこをじっと見ても何も変わらない。
空いた左手が答えを求めて頭を掴む。
今までいろいろしてきたが、これ以上はDTの僕には無理だぞ?これまでだってなかなかの試練だった。
あ……これはもしかして?僕のDT力を試している?そうすることにより、これからの展開を神が決めようとしている?
空を見上げると『かみ』って文字が見える気がする。
下を向いて考え事をしていたから影送りの原理かもしれない。
(ふふ、そういうことかよ。だが神よ、誤算だったな!これまで読んだラノベは数えられるほど!その僕の妄想力がお前の野望を打ち砕く!見てろよ見てろよー?あっと驚く展開を見せてやるぜ!)
キッと空を睨みつける顔は自信しかなかった。
僕では無理でした…。思いつきませんでした。
いろいろ考えたんです。この状況で何が出来るかを。
下を向いても何も思い浮かばない。
いや勝手に思いつく言い訳がその容量を占めているせいだ。
そもそも僕が好きなのは無双もので恋愛系はほとんど見ないのよ…。
行動でダメなら話術でとも思ったんだけど、世界が違うと何を話していいのか…。
下がだめなら上だと、顔を上げようとする。
その最中に彼女の視線を感じた。
「キオク、何かお話聞かせてほしいですわ」
「へ?お話?」
「私が知らないお話。遠い地に住んでいたキオクなら知ってるでしょう?」
(いきなりだな。しかしトスファの知らない話か…。向こうの世界の知ってる話で大丈夫かな?んー、リアルな話よりは昔話とかの方が良いかな?)
言い訳を追い出そうと、次から次にいろいろな話が頭を駆け巡る。
マンガとかアニメが多いのは映像化された作品を好んで読んでいたからだろう。
しかし女の子には引かれるんではないだろうか、と頭に過る。
頭を悩ます沈黙は1分。
けれどもトスファは楽しそうな顔を崩さなかった。
(そうだ!神話とかどうだろう?そういったのを設定やらで使うラノベはよく読んでて、調べたことがあるし。ウィ〇とかで。特に双子の話はよく調べてたんだよな、何故か。今思えば、出生のせいだったのかな?)
ふと実の父と叔母の名前を思い出す。
もしかして?というのがあったが、彼女の顔を見て急かされているように感じて、口が渋々動き始めた。
「えっと、昔の神々のお話なんだけどね…」
僕はネットで調べた知識をここぞとばかりに披露した。
オタク特有なのだろう、話し始めると口が止まらず夢中になって話を続けた。
普通の女の子なら引いてたかもしれない。
けど、トスファは目を輝かせ楽しそうに聞いていた。
それが僕の口が滑らかに動き続ける要因だったのかもね。
僕の語りは空が紅に染まるまで続いた。
好評だったようで、彼女は事あるごとにお話を要求し、その度に僕は頭を悩ませた。




