第二十八話
旧市街へと住居を移して早幾日、書くことが多い日々で、彼の目に触れないようにしては、その多くの時間を取られた日々でもありました。どのように書いていたかと遡ってみると苦笑するばかり。全部を全部書いてもと、削除した部分を追加して書き足していたりで、それがあなた達のためになることであれば良いのですが、彼から教えてもらった、反面きょうしなるものでなければと、書いている今も少し不安です。
さて、ここでの生活にも慣れ、安全でもある事を確認した彼は、私に新たな力を教えてくれていました。魔力の壁というものです。我が家の部屋と部屋を隔てる壁のようなものを魔力で作り出すのです。これを自在に使えるようになれば、マモノがどんな攻撃をしてこようと防げるという優れものです。発動方法はこれまでと同じ、頭の中でそれを思い描きます。ですが私がそうすると、生まれてからずっと住んできた洞穴のように、あちこちがボコボコとした壁になってしまいました。幼い頃から馴染んできたものが、頭にこびりついているからと彼は言います。習得に、今日までかかったのはそのためです。時間は掛かってしまいましたがとても有意義な、楽しい日々でした。外で一緒に寝て夜空を眺め、朝日を浴びて目が覚める。その話だけで一頁消費してしまいましたね。
しかしその日々でも彼は憂慮の表情を浮かべていました。おばあさんの言っていた人のことが気になるのでしょう。思えば、彼はぼうと空を眺めていることが多くありました。この突き抜けた空を、さらに先の先まで見通しているかのように。故郷での救えなかった人たちのこと、内にはきっと彼らの笑顔があるのでしょう。幸い、ここにはたくさんの住居があります。おばあさんからの連絡もない以上、動けない理由もあるのかもしれません。ならば、私達が迎えに行こう。家族の思いは一つでした。
そうそう、夜空の話で書いていないことがありました。暗い夜を洞穴よりも明るく照らしてくれているのは、ほしというものらしいのです。彼の話では、偶に落ちてくることがあると。それは石みたいな形をしていて、それが光を放っている。お空に浮いているだけでも不思議なのに、あんな遠くから下にいる私達にまで光を届けてくれるなんて、なんて素晴らしいものでしょうか。かの国の研究の一つで、この光も魔力によるものだとか。私もこの力をもっとたくさんの人にと、思える話でした。この話をきょうしとして、あなたたちに送ります。みんなの光になってあげてくださいね。
落ち着くことが出来たら、いつか二人で落ちたほしを探しに行くのも面白いかもしれませんね。その日が来ることを願って今日はここまで。




