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はじまり  作者: 新戸kan
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これから

 夢を見ていた。


 ハイハイ、またやね。このパターン飽きたわ!



 ぼやけていた映像の霧が晴れていく。

 その中央には金髪ロリOBさんが立っていた。


 はるか昔のことである。この地に住まう人々は魔力を持っていなかった。今とは違う文明が栄えていたらしい。争うことなく平穏に暮らしていたという。

 そんなある日のことだった。突如魔力を持った異形のもの『マモノ』が現れた。襲ってくるマモノに対して人々は抵抗をしたが、当時作られた武器では魔力を帯びた体に傷一つつけられなかった。

 なすすべもなく、ただただマモノに蹂躙される人々たち。しかし人々は諦めなかった。神に祈りを捧げ続け、その祈りは神々の奇跡をよんだ。

 ある時強大な魔力を持つ赤子が生まれたのだ。成長した少女は仲間とともに戦いマモノを追い払った。そしてその戦いののち少女は人々に魔力を分け与えた。


 一番知りたかったやつだこれー!しかも4kテレビ並みの鮮明さ!後はこのまま起きるだけー!


 勢いよく上体を起こす。目もパッチリ開いていた。

 夢と現実の区別がつかないほど意識がはっきりしていた。



 思い…出した!完璧に思い出したわ!


 完全に一致してませんかね、これは。これで違うとか言われたら諦めてこの世界で永久就職ですわ。


 そんなことより忘れてたことをやらねば!

 そう、彼女の魔力チェックだ!

 …スライムの時にはやって何故彼女にはしなかったのか。

 僕がご都合展開助けちゃってるじゃないですかー!ヤダー!


(どれどれ)


 キヲク自身はその変化に気付いていないが、彼の目が青く光っている。

 その目を使って隣で寝ているトスファを静かに見る。


 すると、彼女の体全体が発光しているように金色に輝いて見える。


 周囲が明るくなったわけではなく彼女一人だけが光り輝いている。

 しかも太陽のように強い光でありながら眩しさは全く感じない。

 穏やかな寝顔がはっきりと見える。

  

(スライムの時とは段違いだ。あのお姫様と同じようにオーラみたいに見える。これは…)


 はい、完全一致です。すさまじいまでの魔力が彼女から溢れ出ています。何故もっと早くやらなかったんだレベルです。


 魔力に慣れていない自分でも分かる圧倒的な力を前に体を動かせず、勝手に喉が鳴る。


 僅かな音でも静かな洞窟の中では十分すぎるものだった。



「あら?お先にお目覚めでした、か……」

 はぁああ?!またやってしまいましたわ!?

 先に起きて食事の用意をするはずが!

 催促のために私のこと見てらしたのね!?

 なんたる失態!急いで準備しませんと!



 起きて早々なに慌ててるんだ…。

 あ”、じっと見てたのバレたのか?寝顔を見られたらそりゃ恥ずかしいよな。

 そうでないと寝起きドッキリなんてやる意味ないよな!


 慌てていたトスファはキヲクの変化には気が付かなかった。

 というか、彼女の目にはいつも輝いて見えているので…。

 ――――ハァ。


(しっかし、彼女がそうだったとは…ということは彼女はご先祖様?!)


 驚きの表情をすると同時にお腹が鳴った。

 彼は考えるのを止め、横穴へと向かった。

 その後、すっきりした顔の彼が出てきたのは言うまでもない。






(ふふ、ふふふふふ)

 もう私はダメですわ…。キオクの隣にいる資格なんてないのですわ…。

 いえ、まだです!必ずや名誉を返上できる時が来ますわ!それまでご容赦くださいまし!

 でも、王子様はお優しいですから大丈夫ですわよね?



 朝から(感情が)激しいな。

(…さて、と…)


 キヲクの目が青く光るも、目の前の二人は気が付かない。黙々と朝食を取っている。

 昨日同様、机を頼りに項垂れているトスファは言わずもがな。ただ目は熱く燃えていた。


 二人は…魔力はあるんだな。スライムちゃんより少し多いくらいだけど…。

 お母さんの方が若干多いかな?


 二人からは微量な光が漏れている。トスファの金色のそれとは違い、色が識別できないほど微かなもので、今にも消えそうなほど弱弱しい。


 しかし伝承だとトスファ以外は持ってないって…。うーん…。



 朝から真剣な顔して二人をじっと見て一体何を?しかも鋭い目つき…。

(ま、まさか?!)


 トスファは机に両手を添え、がばと体を起こす。その目と口は大きく開かれていた。

 他3名はそれを気にすることなく、思い思いに手を動かす。


 私に食事を作らせるよう、さりげなく主張されてるのでは?

 あなたの手を煩わせてしまう私の愚かさを呪うばかりですわ…。


 彼女は目を落として、食欲無さ気に、もたもたと食事を口に運んでいた。



(ん…待てよ?はるか昔ってことは…途中で事実が捻じ曲げられた可能性があるのでは?伝言ゲームみたいに。そう考えると…)


 推察から進展しようと頭を切り替えようとした時、目に力が入っているのにようやく気付く。


 おっと、この目したままじゃ睨みつけてるみたいで良くないな。普通に見られるように特訓するべきかな。


 一度切れた集中が戻るには、お腹の音が妨害して叶わないので、口に放り込むスピードを上げる。

 その結果、トスファより先に食事を終えていた。





 住居として使用しているこの洞窟は、人が掘ったものではなく、自然にできたもののようだ。

 地下へと降っていく構造のためか、人の通れない細い穴があるのかは分からないが空気の流れはよく、淀んではいない。

 部屋のように使っている広めの空間は3つある。それぞれ――両親の部屋、トスファの部屋、食事含む多様性の場となっている。

 それとトイレ用の人一人が通れる横穴がある。これがトスファ家の構造だ。



 こんな世界でも、トスファの自立性を育むため、彼女一人のために両親が用意した空間で、復活した集中力で推察をしていた。



 いろいろ考えてみたけど、やっぱり過去なのは確定だよな。

 彼女から感じる魔力は懐かしいというか、僕の魔力も彼女の一部みたいな感じがするんだよな。単なる遺伝かもしれんけど。


 こんな状況でも悲観的にならなかったキヲクが急に真面目な顔になる。


 僕はどうするべきなんだろうな。

 彼女がその魔力をうまく扱えるようになれば僕は帰れるかもしれない。

 実際彼女の子孫であるナディはナタカをこちらへ呼び戻した。

 でも彼女に深く干渉することは歴史を変えることにならないだろうか?


 元の顔に戻るまで約10秒掛からない。

 キヲクー!新しい顔よー!



 ムムム、どうしたらいいんだ!


 待て!次回!!


 いやまだ早いですよっと。最近セルフツッコミも冴えてきた気がするな。


 僕は新たなスキル<セルフツッコミ>を手に入れたぞ!


 さっそく使って脳内議論を行うものとする!

 ――そもそもそもも、僕がこの世界に来たのは意味があることでは?

 ――意義あり!それは都合のいい解釈だ!そんなご都合主義は認められない!

 ――でも、そう考えると全てがうまく当てはまるんだよな。トスファはどう考えても僕のご先祖様だ。彼女の魔力は、あの感覚は間違いないと思う。

 ――意義あり!感覚でものを言ったら議論なんて成り立たない!事実に裏付けされた理論こそが正しい道へと僕らを導くのだ!

 ――いやいや人間は感覚で生きる生き物だって誰かが…感情だったっけ?

 ――最早話にならんわ!議長!こんな者の意見を真に受けますと身を滅ぼしますぞ!

 ――ひどい言い草だな。君だって僕じゃないか。大体君は批判ばかりで意見出してないじゃないか!

 ――は!一緒にしないでもらいたいね!僕は君とは違って慎重に物事を進める派

   なのだよ。慎重主人公なのだ!

 ――そう言って何も考えてないだけだろ?

 ――なんでバレ…いやそんなことはない!

 ――君はしょせんその程度なのさ!僕が一番分かってるからね!

 ――自分で言ってて恥ずかしくないか?

 ――なにを!

 ――なんだよ!

 

 アハ、アハハハ…。僕にはまだこのスキルは早かったようだ…。あ、頭が…。

 ぷしゅーーー……。


 やっぱりそうなのかな?彼女みたいに頭から湯気が出ている気がする…。


 頭を冷やそう…。さすればいい知恵与えられん…。


 すっかりダブルベッドとなった草の寝床に倒れ込む。

 こんな環境下でも良い匂いのする草が気持ちを落ち着かせた。



 そういえばこっち来る前、ドラマの再放送見たな…。ちょうどタイムスリップするやつ…。まさか自分が経験するなんてその時は思わなかったけど…。

 面白いこと言ってたよな。確か…歴史の修正力……。


 歴 史 の 修 正 力!!


 頭を駆け抜けた言葉が強烈な刺激をもたらし、勝手に高揚していく気分。

 寝てはいられないと、身体も勝手に起き上がった。



 つまり僕がこの時代で好き勝手しても元通りになるってことでは?!

 あれれ?これきちゃった?


 ――意義あり!素人が勝手に判断して行動するのは最も危険な行為の一つだ!

 いやそれもういいから!パッシブスキルがある僕は無敵だ!

 そうと決まれば…。


 ベッドの上で座禅を組み目を瞑る。

 あの音が頭の中で流れた後、カッと大きく目を開いた。


 一瞬でプラン出来たわ!さすが僕、ムテキ!


 発表します!

 ドゥルルルルルー!ダァン!!


 トスファを僕の手で女王にします!僕が彼女を導くのだ!フハハハハ!


 手に力を入れ上体をやや後ろにそらし、高らかに笑う―――よくある悪役のポーズをとる。

 声に出すとみんなが心配するので心の中でね。


 その格好のまま、体感で1分過ぎた。


 ふぅ、落ち着いた。暴走してたわ。

 そういうときは一度限界まで暴走させると良いよ。そしたら賢者モード入るから。

 彼女がそれを望んでるわけじゃないんだから、無理やりそれをやるわけには…。


 たまたま顔が向いた方がこの部屋の入り口だった。

 ここで生活のおかげか夜目が利くようになっていた。

 こっそりと顔を覗かせている彼女に気付く。


 トスファ…?なんで顔赤くして……?

 もしかして声に出てた?!


 のろのろとした動作で出てくるトスファ。顔をやや下げているせいか目が見えない。

 その手には長い何かを持っていた。



 王子様にそんな趣味があっただなんて…。

 お母様、お母様の教えが役立つときがきたようです。

 私は王子様のために心をマモノにして、このツルを…!



(どうして蔓を鞭のように操ってるんですかねぇ…?)


 ピシィっと身の毛がよだつ音を鳴らしている。

 とても初めて使ったようには見えないツルさばきだった。



 てか、何故そんなものがこの家庭に…?

 いや…もう少し様子を見よう。僕の予想だけでお父さんの名誉を傷つけたくない。


 それよりも僕の危険が危ない。

 彼女は何か誤解している。

 そして僕にはそんな趣味はない!


 トスファの目がギラリと光った気がした…。





 \アーーーーーーーッ!!/


 ――――てなる前に誤解とけたわ。

 危なくそっちの道へ踏み込まされるところでした…。


 トスファは何事もなかったように丸めたツルを後ろ手に隠している。

 目を逸らして唇を隠している。


 つまりお姫様と女王は一緒ってことよね?それで改めて私をそうしたいと言われたと。

 私は呼び名にこだわりませんわ。お姫様でも女王でも、あなたが望む名で…そう!

「キオク、あなたが望むのであれば私は……あなたについていきますわ!」

 答えは決まっているのですわ!オーッホッホッホ!!


 トスファはタカビーなお嬢様が手の甲を頬に当て高笑いをするポーズを取り、キヲクと同様に心の中で笑う。

 今回の件で反省という言葉はないようだ。


 キヲクはそれを苦笑するだけで済ませていた。




 こうして僕とトスファは覇道の道を歩むのだった!

 第一部完!作者先生の次回作にご期待ください!


 さぎすきるが発動してますね…。


 もうちっとだけ続くんじゃ!(D〇並感)

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