"魔"王
狭霧は一体目のゴブリンを倒して以降、複数のゴブリンに同じように【呪い】を付与していった。
だが──どれも例外なく、付与を終えた瞬間に息絶えた。
(こりゃ……転生チートじゃなくて“呪いチート”ですやん……しかも俺のスキルなら斬らなくても付与できるし……これは絶対に世に出せんわ……)
狭霧は手に持っていたアデスをそっと収納スキルへしまい込む。
(他言無用。これからは“ただのカッコイイ武器”ってことで押し通そう……)
死んだゴブリンたちに手を合わせ、次の魔物を探しに歩き出した。
(さぁ次は……こんな怖い実験じゃなくて、もっと面白そうなことを……)
――狭霧が呪いについて調べていた時刻より数日前。
ヘーメスダンジョンを踏破したサタナスは、気づけばミラケイア王国付近まで来ていた。
「やはりダンジョンの方が経験値がよいな。外の魔物は魔法の種類こそ豊富だが、弱ければ意味がない。この辺りにもダンジョンの気配を感じる。この辺りの魔物もほとんど調べたか、あのダンジョンで得た力のおかげで……」
サタナスは自身のステータス画面を開く。
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スキル
・メモリアリロード
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・火炎魔法
火魔法より上位の魔法を扱うことが可能
・雷魔法
雷の魔法を扱うことが可能
・鑑定:スキル
ステータス画面より【スキル】の鑑定が可能
・凍冥魔法
氷魔法より上位の魔法を扱うことが可能
・風魔法
雷の魔法を扱うことが可能
・崩地魔法
震岩魔法より上位の魔法を扱うことが可能
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「こちらの世界で使える魔法も、かなり増えたな」
満足げに口角を上げる。
「いずれ、この世界でも【魔王】と呼ばれる日は遠くない。そう──魔法の王【サタナス・マギス】がな!」
サタナスはダンジョンの気配がする方向へ歩き出した。
――サタナスとは別の場所。
池田黒峰は、フードを深く被った素顔の見えない男に連れられ、トルマリン王国から遠く離れた地へ来ていた。
「一体どこまで歩くんだよ……もう疲れた」
「……もう少し先に、私の住処がある」
「それで、いい加減俺を牢獄から出した理由を教えてくれよ」
「着いてからすべて話そう」
しばらく歩いた先に、小さな建物が見えてくる。
「ここだ。中に入る前に、ひとつ確認するべきことがある」
「確認?なん──」
フードの男は振り返り、黒峰との距離を一気に詰め、その胸を貫いた。
心臓を刺し貫かれた黒峰は、その場に倒れ込む。
心臓が止まり、視界が暗く落ちていく――その刹那。
黒峰の体から、赤い火の粉のような粒子がふわりと浮き上がった。
次の瞬間、
ボウッ――!!
死体を中心に、真紅の炎が爆発する。
炎は黒峰の肉体を包み込み、
まるでそれを食い尽くすように燃え広がっていく。
やがて、黒峰の死体は炎の中で崩れ――
骨も皮膚も血も、跡形もなく消滅した。
しかし炎は消えない。
黒峰のいた場所で炎が渦を巻き、
次第に――人の形をかたどり始める。
肩、腕、脚、胸元、指先まで。
炎は完璧な“黒峰の輪郭”を形作り、
中心に光を集めていく。
そして――
ドッ!!
爆ぜた炎の中から、裸の黒峰が姿を現した。
傷一つない肉体。
だが、死の痛みの記憶だけは強烈に残ったまま。
黒峰は息を吸い込み、肺が焼けるような痛みに顔をゆがめる。
身体は正常、心臓は規則正しく脈打つ。
炎は黒峰の完全な復活を見届けると、跡形もなく消え去った。
「よし...ついてこい」
「.......」
黒峰は黙ったまま、男に続いて建物の中へ入る。
奥の暗い階段を降りると、外観からは想像できないほど広い空間が広がっていた。
資料のようなものが乱雑に積まれ、中央には巨大な魔法陣が描かれている。
「ここだ」
男はフードを外した。
「人……なのか?」
見た目は人間に似ているが、額に黒い角が一本生えていた。
「この姿は、悪魔と契約した証だ。お前にも悪魔と契約してもらう」
「悪魔……?」
「そうだ。私はここで、悪魔の住む《魔界》の研究をしている。
人族は悪魔と二度までしか契約できず、それ以上は身体が粉々に砕けて死ぬ。だが──お前が同じことをしたらどうなるのか、知りたい」
「契約すると、俺にもその角が?」
「そう。これが悪魔と契約した者の特徴。二体と契約すれば角は二本になる」
「契約って……角を生やすだけの話なのか?そんなの嫌だ」
「いいや。お前は今以上に強くなりたいとは思わないのか?
あの牢屋など容易く破れるほどの力を手に入れられるのだぞ」
「力……どれくらいの?」
「悪魔は本来、自身の力の50%しか使えない。残りの50%は“封じられている”。
だが契約によって、その封じられた力を一時的に契約者へ譲渡できる。
契約者が死ぬと、悪魔の力と契約者の力が混ざった結晶が生まれる。
悪魔はそれを取り込むことで、初めて100%の力を使える。
契約する悪魔が強ければ強いほど、得られる力は強大になる。
ただし──私が契約した悪魔とは契約できん。
ゆえに、お前には魔界へ行って契約してもらう」
「……力は欲しい。けど角はごめんだ」
「諦めろ。お前には拒否権はない。
もし何度でも契約できるのなら、お前は魔界で最強になれる」
「最強...」
「悪魔と契約した者──魔人。
その頂点、【魔王】にさえ到達できるぞ」
黒峰は魔界へ向かうことを選んだ。
――一方その頃。
狭霧はゴブリンにスキルを付与していた。
次回もよろしくお願いします。




