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収納先は広く広く...

二人はお城の入り口まで来る。


「私は魔法師団の方に行くけど、あんたは前に行った研究所の場所、覚えてるかい?」


「うっすらとですけど……たしか奥のほうというか、端の方の部屋でしたよね?」


「そうそう。じゃ、また時間ができたら覗きに行くね」


ローズはそのまま城内には入らず、訓練所の方へと歩いていった。


(迷子にならずに行ければいいけど……)


狭霧は城の中へ入り、周りを見渡す。すると、中にいた女性に声をかけられた。


「お城に来るのは初めてですか? それとも、不審人物さんですか?」


「そうです、私が不審なおじさんです……って、なんでやねん!」


「ノリいいね、お兄さん! 私はライブ。ここで本を棚に戻したり、雑用したりしてるよ」


「それは……仕事なんですかね? あ、僕は狭霧です。アイラさんとメイラさんに用がありまして」


「そっか。それなら左手の階段の横をまっすぐ行った突き当たりが二人の研究所だよ。

暇なときはこっちにも顔出して。もしかしたら興味のあるものが見つかるかもよ?」


「ありがとうございます。タイミングが合えば……行ってみます」


ライブと別れ、教えてもらった道を歩いていくと、うっすらと見覚えのある扉が見えてきた。


(そういえば前回はまともに挨拶できなかったな……)


数回ノックするが返事はない。ドアノブを回すと鍵はかかっておらず、扉はすんなり開いた。


「すみませーん。前にスキルを勝手に覗かれた狭霧です! アイラさーん? メイラさーん? どちらかいますかー?」


中を歩きながら周囲を見渡すが、二人の姿は見えない。

ただ、部屋の端にある机の上には、湯気を立てるコップが一つ置かれていた。


(あったかい飲み物があるってことは、誰かいるよな……ちょっと座って待ってようかな……なっ!?)


机前のソファに座ろうとした瞬間、そこには子供のような背丈の、赤みがかったピンク色の髪の女性が寝ていた。

大きめの白衣を羽織っているが、下はほぼ水色の下着だけ。胸元はぎりぎり白衣で隠れている。


「ふぁ!? え!? ちょ、見てませんよ!? というか見えてませんよ!?」


「アイラ~? 起きたの~?」


慌てふためく狭霧の背後から、のんびりした声が聞こえてきた。


「いや、見てない……です……よ!?」


振り返ると、肩まである明るい青緑の髪をした女性が立っていた。

彼女もソファで寝ている人物と同じく、白衣とピンク色の下着という格好だ。


「パンツの色だけ違う!? って違ーう!」


「何を驚いてるの。ここは私たちの“家”みたいなものなんだから、どんな格好でもおかしくないでしょ?」


「い、いや、それでも一応……! てか、その格好で動くのやめません? 白衣がちらちらして……」


「はいはい、着替えてくるから待ってて」


奥に行ったメイラは、数分後に服を着て戻ってきた。手にはアイラの服もある。


「それで? 朝から何の用?」


寝ているアイラを揺り起こしながら、メイラが尋ねた。


「ローズさんに、スキルとか魔道具ならお二人が詳しいって聞きまして」


「スキルなら私、魔道具はアイラの担当ね」


「めいらぁ……まだねむぅぃ……」


「アイラ、お客さん来てるんだから起きて」


「アイラさんが起きるまで待ちましょうか?」


「大丈夫。寝ぼけてても話は聞こえてるから」


「な……ぁに、さぎりぃ……ん……」


「ほらね」


「な、なるほど……。それで、少し前にダンジョンに行ったんですが、帰りが大変でして。

ワープとか転送系のスキルとか魔道具ってないですか? 入り口までピューッて戻れるやつ!」


「移動系スキルね……でも、なんでスキルまで? 非戦闘スキルって習得報告例が少ないのよ? そういえば君、スキル不詳だったわね……それについても――」


「わーぷぅ……? 面白そうな話が来たじゃない!」


寝ぼけていたアイラが「ワープ」の単語に反応し、一瞬で目を覚ました。


「あ、おはようございます……まぁ僕のスキルはまた今度で……!

とにかくダンジョンって、戻るのがしんどいじゃないですか。時間も体力もかかるし、荷物も多い。

もしワープできたら、効率がめちゃくちゃ上がると思うんですよ」


「スキル自体は“存在した”という噂が昔にあるけど、詳細は不明ね」


「魔道具もないけど、もしかしたらまだ見ぬアーティファクトやダンジョン産魔道武具【レリッツ】の中にあるかも。

それに!無いなら――作ればいい!」


「なるほど……でもそう簡単にはいかないですよね。何とかなりません?」


「スキルだとしても、いくつも問題があるわね。

まず、“指定した場所”に正確に飛べるのか? 移動距離によって魔力量は変わるのか? 使用者だけが移動するのか、それとも他の対象にも効果が及ぶのか……。

不明点が多すぎるし、現時点でそうした移動系スキルの使用者や文献の記録もない。

つまり、ゼロから研究を始めるとなれば、とてつもない時間がかかるわよ。」


「魔道具の方もね、ざっくりとした構造がイメージできれば少しずつ形にはできると思うけど……。

メイラが言うように“飛ぶ場所の指定”や“移動距離”“魔力量”“使用者の体が転移に耐えられるか”といった問題を全部クリアする必要がある。

仮にそこまで到達しても、それを可能にする魔法陣を魔道具に埋め込むとなると、構築が複雑すぎて膨大な魔法式になるはず。

だから、持ち運べるサイズの道具に収めるのは――正直、ほぼ不可能だと思うな。」


(やっぱスキルでやるには怖いな……壁に埋まって死ぬとかシャレにならんし。

でも魔道具ならテストできる余地はあるか……)


「今回は私よりアイラの方が役に立てるかもね」


「まだ誰も作ったことのない転送魔道具……燃えるね! ちょっと資料探してくる!」


テンション高く、アイラは研究所を飛び出していった。


「あ、あとメイラさん。さっきの話とは別に、これも見てほしいんです」


狭霧は収納スキルから紅いハルバードを取り出す。


「おお、収納スキル持ちか。それにしてもデカいな。君が使うにはちょっと……」


「アスラダンジョンのミノタールって魔物が使ってまして。

“呪い付与”って効果があったので持ち帰ったんですけど、どんな呪いか分からなくて」


「なるほど。つまり【レリッツ】武器というわけね」


メイラはハルバードを鑑定する。


「【始まりの呪い】……これは誰かが受けたの?」


「一緒にいた人が刺されたけど、特に変化はなかったです」


「そう……正直“呪い”っていうものは、効果や解呪の方法を付与した本人しか知らないの。だからこそ扱いが難しくて、同時に最強の能力でもあるのよ。ローズさんもそれが理由で、結局どうにもできなかったの。

この呪いの詳細を知っているとしたら――おそらく、その魔物本人だけ。

……もしくは、“あらゆる呪いを付与できる”ような、異質な存在くらいね」


「あらゆる呪い……あれ? いた! いや、“いた”が正しいのか……」


「誰?」


「黒峰って人です。捕まってたんですけど、呪い系のスキルを持ってたんですよ。

でもなんのスキルか思い出せない……あのとき何も考えず消したんで……」


「あの青年が? 私が視たときはそんなスキルなかったけど……。

やっぱり君()()の“謎のスキル”が関係してるってことね?」


「たち?」


「彼にも一つ、確認できないスキルがあったけどそれが不死に関するスキルでだろうと把握できていたからね」


(やっぱ転生特典系のスキルって、確認できない仕様なのかな……)


「ま、どうせ教えてくれないんでしょ。

それより、その武器、実戦で使って効果を確かめてみれば?」


「いやいや、これデカすぎて使えないですよ!」


「なら再加工して使いやすい形にしてもらえば?」


「そんなことできるんですか!?」


「もちろん。腕のいい職人ならね。ここはトルマリン王国よ、探せばいるはずよ」


「あ、そういう流れじゃないんですね……知り合いが出てくるのかと」


「私は研究者よ? アイラなら魔道具の関係で知り合いがいるかもしれないけども私はいないわよ?」


「なるほど……でも、真剣とは別に魔力の必要がない武器か!いいね!」


「じゃ、私もアイラの手伝いに行ってくるから。

進展があったらまた来てね」


メイラも研究所を出ていった。


「さて……次は職人探しか。誰か情報持ってないかな……」


狭霧は小さく伸びをすると、再びトルマリンの街へ歩き出した。

次回もよろしくお願いします。

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