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ゆっくりと寝たいです

ダンジョンを抜けると、外は建物の灯りと星が瞬く夜だった。


「やっと帰ってこれた! アイラブ地上!! アイラブ夜!! これで安眠ができる!!」


狭霧は小躍りしながら地面に身を投げ、大の字で寝そべる。冷たい土の感触が、生を実感させた。


「この“地上に戻った瞬間の時間のズレ”……いつまで経っても慣れませんね。それに今回は過去一番で大変でした。腕もこんなですし」


ケイネスとララも隣に腰を下ろし、夜空を見上げる。


「ね、ねぇ? その【あいらぶ】って……どういう意味...です?」


「簡単に言えば“だいすき”ってことです。アイが“私”、ラブが“好き”。で、その後に言葉をつけると——“アイラブユー”みたいに“君が好きです”になるんです」


「!?」


ララは顔を真っ赤にして勢いよく立ち上がり、少し距離を取った。


「……サギリさん、なかなかやりますねぇ」


ケイネスがニヤニヤと笑い、狭霧とララを交互に見る。


「え!? そ、そんなつもりじゃ……例え話ですって!」


「さぁ? ララさんはそう思ってないかも?」


「……」


「とりあえず近くの宿で休みましょう。ダンジョンの戦利品や荷物は、明日の昼にギルドの酒場で整理と祝勝会を兼ねて集まりましょう」


「やっとぐっすり眠れそうです……」


狭霧は立ち上がり、皆とともに宿へ向かう。



部屋に入ると、狭霧は勢いよくベッドにダイブした。


(はぁ~……このふかふか……! もう地面じゃ寝られねぇな。次の探索では寝具持ち込みリスト入りだな……)


そう思いながら転がっていると、窓から朝日が差し込んできた。


((あれ? 寝れてない……? いや、まだ日の出直後だ。焦るな……なんとしてもこのベッドで睡眠を……)


眠気と戦っていたはずが、気づけば扉から鈍い音が響いていた。差し込む光は夕陽に変わっている。


(え……? 一瞬、まばたきしただけ……?)


「サギリさん、おはようございます! ケイネスです! ギルドの酒場で待ってますね!」


「は、はい! すぐ行きます!」


体力の疲労は抜けていたが、精神的なだるさが残っていた。狭霧は支度を整え、宿の裏手で井戸水をくみ上げる。


(ステータスを弄ってても、こういう疲れは取れねぇんだな……)


ステータスを確認すると、見慣れた光景が目に入る。


----------------------------------------------------------

名前:富士狭霧

レベル:20/150 

HP:13752/15000 

MP:100/100

力:1500

防御:1000

速さ:200

知性:100

器用さ30

運:20

----------------------------------------------------------


(……上がってない? あれだけ魔物倒したのに……。経験値、異常に多いとか? うーん、まぁ考えても仕方ないか。行くか!)


アスラダンジョン前を通り、冒険者ギルドへ。

中は静かで、トルマリン王国の賑やかさとはまるで違った。


(人、少なっ……。まぁあのダンジョンだしな。お宝も無かったし……あの呪い武器くらいか)


酒場を見ると、ケイネスたち三人が既に食事と酒を楽しんでいた。


「お待たせしました。……あれ、オルドロスさんは?」


「少し用事があるそうです。もうすぐ来ると思いますよ!」


「では先に乾杯しましょう!」


「かんぱーい!」


楽しい食事の中、やがてオルドロスが現れる。


「すまねぇ、遅れた! って、もう飲んでんじゃねぇか!」


「遅いですよオルドロスさん! でもこれで全員ですね。分配の話の前に——もう一度、乾杯!」


「「「かんぱーい!!」」」


素材の話になる。


「ミノタールの素材だけ回収してありますが……分配はどうします?」


「僕はいいです。ダンジョンについて色々教えてもらっただけで十分ですし」


「じゃあサギリさんには地図を! 30階層までのアスラダンジョンの写しですよ!」


「え、地図って売ってないんですか?」


「低階層だけですね。深部は自作必須です」


「なるほど……じゃあそれでお願いします」


ミノタールの素材は四人に均等分配。宴は続く。


「サギリさんはこの後、どうされます?」


「トルマリンに帰ります。ケイネスさんは腕の治療ですよね?」


「はい。王都に戻って、専門の治療師に診てもらうつもりです。……それと、もしサンバード王国に来ることがあれば、“エニオ亭”という店を訪ねてみてください」


(ほう? サンバード王国ですか)


「“エニオ亭”っていう小さな店なんですが、そこの“特別なワイン”がとても美味しいんです。普通の注文では出てこないのですが……“血の滴る杯の雫”と伝えるといいですよ」


(物騒なワインですな)


「そ、そうですね。もし行く機会があったら……覚えておきます」


「ぜひ!待ってます!」


狭霧が軽く頭を下げると、横からオルドロスの声が飛ぶ。


「おう! ケイネスとは話し終えたか? じゃあ次は俺の番だな」


「え?」


「前に少し言ったがよ、もし本気でダンジョン最下層を目指す時が来たら、俺も連れてってくれねぇか? 今までいろんなヤツを見てきたが、おめぇなら本当に達成できると思うんだ。ミノタールん時はちょいと油断しちまったが、それでも実力は保証するぜ」


「そ、そうですね。やっぱりダンジョンと言えばお宝ですし、まだ何も見つけられてないですからね。今すぐってわけじゃないですけど、準備ができたらまた行こうと思ってます。その時は……ぜひお願いします」


「おお! よっしゃ! その時が来たら、ここの冒険者ギルドに連絡が来るようにしておけよ!」


「分かりました!」


「そのお話! 私もいいですか!!」


二人の話を聞いていたララが勢いよく手を挙げる。


「ララさんも?」


「はい! 私もサギリさんともっと一緒に――い、冒険したいです! だからお願いします!」


「じゃ、じゃあ……その時は三人で頑張りましょ!」


「「おっしゃ!・やったー!」」


笑い声が響く。祝勝会は賑やかに続き、素材の分配と地図の受け渡しが済む頃には、すっかり夜も更けていた。


ギルドを出た後、狭霧たちは宿に戻り、ケイネスたちの荷物を収納スキルから取り出して渡す。

その際、例の腕も一緒に渡し、軽く言葉を交わしてから別れた。


そして翌朝。

狭霧たちはトルマリン王国へ向かう馬車に乗り込む。


三日後。

馬車はホープの門をくぐり、トルマリンの街へと戻る。


(帰ってきたなぁ……街並みが懐かしい。どれくらい経ったんだ、一ヶ月? とりあえずローズさんのところに行って……あれについて聞いてみよう)


しかし、街は以前よりも人が多い。


(ん? 人、多くね? 冒険者に商人……観光客まで? 俺がいない間に何かあったのか?)


周囲を見渡しつつ、狭霧はローズの家へと歩き出した。

次回もよろしくお願いします。

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