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歴史に名を残さぬ者達

三日後 24層目


オルドロスの体の傷は少しずつ回復しているが、完治にはまだ遠く、時折苦しそうに顔を歪めていた。

遭遇する魔物たちは往路と変わらず。弓を引くフェインが淡々と射抜き、隊は静かに進んでいた。


「はぁ……流石に腹に穴が開いたら治りも悪ぃな」


「普段うるさいあなたが静かで、私は助かってますけどね」


「笑うと痛ぇからなぁ。まぁ、たまにはこういうのも悪くねぇさ」


彼の冗談に笑いが漏れる。重苦しい空気の中にも、わずかな安堵が生まれた。



同時刻トルマリン王国


「もう明日から始まるが、やっぱりフジは帰ってこないか?」

ローズが溜息をつく。


「てっきり数階層潜って、すぐ戻ると思ってたんだけどね」


「せっかくフジと戦えると思ってたのによ……」


「まぁ、死んでなければいつでもできるさ」


「公の場で戦えるのは三年後だぜ?」


「訓練所でもいいんじゃない?」


「それじゃ逃げられるかもしれねぇだろ?」


「……確かに、あいつならそうするね」


次の日 23層目


狭霧たちは階段付近の広場で休憩を取っていた。


「オルドロスさん、なんか数日前からララさんの様子が変なんですよ。雰囲気っていうか、態度が……」


「そりゃおめぇ、女ってのはそういうもんだ。コロコロ機嫌が変わる。さっきまで普通に話してたと思ったら、急にムスッとしたり笑ったりよ」


「そうですかねぇ……もっとこう、オルドロスさんやフェインさんみたいに普通に接してくれればいいのに。ケイネスさんも狼の一件以来、ずっと変な目で見てくるし……」


「まぁな。おめぇの戦い見りゃ無理もねぇ。ああ見えてケイネスは結構戦闘狂だ。今回のミノタールも腕さえ無事なら多分おめぇに手合わせ願ってたぜ」


「ハハハ……いやいや、それは勘弁です。あの人の動き、忍びみたいで怖いんですよ。いつの間にか後ろに立ってるし……」


「皆さん、そろそろ行きますか」

ケイネスの声が響く。狭霧たちは装備を整え、次の階層へと降りていった。


同時刻トルマリン王国


王国中が活気に満ちていた。通りには露店が立ち並び、各国からの観光客と冒険者でごった返している。

ホープの門を抜け、冒険者ギルドを過ぎたさらに奥——そこには巨大なコロシアムがそびえていた。


中は満席の観客、空には各国の旗。王侯貴族たちが並ぶ貴賓席には、

トルマリン王国のダイダラス王、ガイダンダ王国ロワール王、サンバード王国テラス王、

ケイレース王国のミレーユ女王、そしてミラケイア王国のヤダール王。


三年に一度の大闘技大会【サンクドトーナメント】を一目見ようと、王たちが一堂に会していた。


リング中央に立つ司会者が、場内の熱気をさらに煽る。


「皆様、大変お待たせいたしました! 三年に一度、各国の強者が集う大闘技大会!

 本年はトルマリン王国にて開催いたします!

 司会は私ラインが務めさせていただきます!

 今回、過去最高の参加者数! 観光に新ダンジョン、冒険者の流入!

 熱き五日間の戦いを、皆様どうぞ目を離さずご覧ください!

 そして優勝者には、各国の王より“願う物を一つ”贈呈されます!!」


ラインの掛け声と同時に、夜空に花火が打ち上がる。

観客の歓声が地鳴りのように響いた。


「記念すべき第一試合! ランバイン対ペイラード! さぁ、いってみましょおお!!」

太鼓が鳴り響き、剣戟の音がコロシアムを揺らした。


五日後


「興奮冷めやらぬサンクドトーナメントも、いよいよ最後の試合となりました!」

司会の声に、場内がどよめく。

「各国の戦士、魔法使い、冒険者たちの頂点——今ここで決まります!」


観客が総立ちになる中、リングの上には一人の男が立っていた。

深く黒いフードを被り、その顔は誰にも見えない。


同時刻ヘーメスダンジョン最深部


「強いのか弱いのか、分からない相手だったな……。

 これなら、さっきの魔物の方が経験値は高かった」


最後の魔物が霧散し、最深部にひとつの光が現れる。

ヘーメスダンジョンを制した者に与えられる報酬。

男は静かにそれを見つめ、手を伸ばした。


「これがダンジョンの宝...なのか?」


数時間後 トルマリン王国コロシアム


試合を制したのは、黒フードの男だった。


「サンクドトーナメントを制した者よ望むものを申してみよ」


男はゆっくりと口を開いた。


「……私が望むのは、このトルマリン王国に投獄されている“不死なる男”を引き渡してもらいたい」


会場が一瞬で静まり返る。

ダイダラス王が眉をひそめた。


「なぜその名を知っている? あれは大罪人だ。渡すわけにはいかん」


隣でテラス王が唇の端をつり上げた。

「よいではないか。あれほどの実力者だ。罪人の一人や二人、鎮圧もできよう」


「しかし……」


「もう能力は失われたのだろう? 無害なものではないか?」


「それでも国を脅かした者だぞ!」


「何度も殺され、それでも生きている。もはや罰は受けたも同然ではないか?」


しばしの沈黙ののち、ダイダラス王は息を吐いた。

「……よかろう。その望みを受け入れよう。後ほど監獄へ来るがいい」


黒フードの男は静かに頷き、音もなくその場を去った。


「以上をもちまして——大闘技大会サンクドトーナメント、閉幕です!!!」


数日後 アスラダンジョン


長い沈黙を破るように、陽の光が差し込む。

地上への出口から、五人の冒険者が現れた。

疲労の色は濃いが、その瞳には確かな達成の光が宿っていた。

次回もよろしくお願いします。

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