眠れる記憶の奥底に
私が覚えている、最も古く曖昧な記憶。
星空も見えない真っ暗な雲の中。
私は、涙を浮かべるもう一人の女性と、大きく燃え上がる“何か”の前で話していた。
「ララ、私......よ、...の.......ばっかりに....先、暗い道を........私をどうか....もらえませんか。長く続く...の道にも....明るく照らしてくれる...現れます。なぜ言い切れる...?」
その女性は優しく微笑んだ。
「だって.....現れたから、だからその..を見つけたら.....逃がしちゃ駄目.、その時まで....あなたをずっと.....います」
そう言うと、彼女は暗い影から現れた男に私を預けた。
おぉぉい! 危なっ!? もっと減速できるかと思ったけど……まぁ、生きてるし、よかったぁ!」
無事に地面へと戻った狭霧は、持っていた布を収納した。
「私が来た!……ってほどの状況じゃないですね。えっと、とにかく回復を出します!」
チリン……
MP:40/100 → 10/100
ボトッ……
地面に落ちたそれを見た狼は、狭霧から距離を取る。
「ふっふっふ、わんこさんや。良くも悪くも、あなたが……っと、その前に。ララさん、あのワンちゃんの相手は私がしますので、これを」
収納スキルから複数の回復ポーションを取り出し、ララに手渡す。
「あ……ありがとうございます。さ、サギリさんは死なないでください……私の……」
ララは最後まで言い切らず、倒れた仲間のもとへ駆け寄った。
「え、なに? 最後まで言ってよぉ。気になっちゃうじゃないですかぁ……」
チリン……チリン……
瞬間、狭霧の背後を取った狼。しかし、それに反応するように体を半回転させた狭霧と目が合うと、再び距離を取る。
「でしょう? 簡単には近づけないでしょ。さっきみたいにその爪、また切っちゃいますよ? ホホホ! いやぁ、嬉しくて変な笑い出ちゃいますけど、よく“極限状態で強くなる”って言うでしょ? あれ本当ですよ。あんな空中で足場のない中、いかに火力の高い斬撃を出せるか……ガレスさんには感謝ですね。今まではスキルに使われてたけど、これからは俺がスキルを使ってやりますよ! ――と言いつつも、まだ腕の反応に合わせて体重移動で全身の力を乗せてるだけなんですけどね……でも十分!」
爪を落とされ、再度の攻撃に反応する狭霧を見て、狼はようやく――目の前の“おもちゃ”が敵であると理解した。
「……まぁ、そうですよね」
狼の周囲に無数の水の塊が生まれ、やがてその体を覆っていく。
それは“水の鎧”へと変化した。
「また、魔法を身に纏うタイプですか!?」
水を纏ったことで、鈴の音は鳴らない。狭霧が反応できたのはスキルによる補助のみ。
一撃目を凌いだ刀は、二撃目を受けた瞬間に刃こぼれを起こし、光の粒子となって消える。
「ちょ、もう刀を作るMPが……」
「サギリさん! これを!」
振り返ると、ララが握っていた黒い短剣がこちらへと投げられてきた。
「おぉい、それって毒の短剣ですよね!? キャッチするの怖いって! ……ごめんララさん、落ちてから拾います!」
地面に突き刺さった短剣を確認し、拾い上げる。
「短剣も剣!短剣も剣!よし行ける」
そこからは、攻撃を防ぎ、隙を突いて反撃する――そんな攻防が続いた。
だが、限界は突然訪れる。
幾度もの衝突で狭霧の握力は落ち、次の一撃で短剣が弾かれる。
気づいたときには、もう次の攻撃が迫っていた。
「あ……死んだ、か……」
そう思った瞬間、目の前の光景がゆっくりと変わっていく。
そこには、父と母、そして赤子の姿があった。
次回もよろしくお願いします。




