沈まない太陽の雲隠れ
21層目 晴れ
次の階層へ向かう一行は、しばしの休息を取っていた。
ダンジョン特有の異常な環境――絶え間なく照りつける太陽の光に、狭霧は目を細めながら身を起こす。
「ふぁ〜……まさかダンジョンに、こんな拷問みたいな環境があるなんて……」
寝不足気味の重い瞼をこすりながら、深く息を吐く。
探索を始めて数日。交代で睡眠と警戒を回していたが、慣れない環境が体力を削っていた。
(まぶしすぎる……。この場所、昼夜の概念ないのか?暗くないと寝れないんだよ俺……)
「サギリさん、相変わらず眠れてないみたいですね。この状況に慣れないと、下層に行く前に倒れますよ?」
声をかけてきたのはフェインだった。
彼女は休むどころか、例のアーティファクトを手に、弓の引き方を確認している。
「いやぁ、マジで寝れないんですよ……。そういえばフェインさん、ほとんど寝てませんよね?大丈夫なんですか?」
「ふふ、美女の寝顔を見られるなんて思わないことですよ?」
軽口を交わすと、遠くから低い唸り声のような音が響いた。
「……! うわ、びっくりした……。こっちに来そうですかね?」
「声の距離的に、まだ遠いですね。問題ありません。あと数時間で皆を起こします。それまで少しでも休んでください」
「そうします……」
言われたとおり目を閉じるが、頭上に照りつける強烈な日差しに結局眠れぬまま時間だけが過ぎていった。
「さぁ、一人を除いて皆さん元気ですね! 今日も張り切って下層を目指しましょう!」
すっきりした表情のケイネスを先頭に、パーティは再び階段を下った。
22層目 曇り
階段を降りると、そこは薄暗い空間だった。
一面に雲がかかり、これまでの階層とは違い、どこか不穏な空気が漂っている。
(うわ……ここで休憩してれば寝れたのに。いや、多分そのまま下に行くだろうけど……)
「あれ? この階層、前は晴れてませんでした?」
ケイネスは眉をひそめながら周囲を見渡した。
「ええ。私たちが来たときはどこの階層も晴れでした。これは……警戒したほうがいいですね。
オルドロスさん、魔法の準備を。私はいつでも矢を放てるようにします」
「任せとけ!」
「私も前に出ます。フェインさんばかりに頼るわけにはいきません」
ララも短剣を抜き、周囲を警戒する。
進むにつれ、魔物の数が増えていくのが肌で分かる。
「オルドロスは右! 私は左! ララは正面を!」
「おうよ!」「はい!」
詠唱とともにオルドロスの手から火球が放たれ、群がる魔物を一瞬で炎に包み込む。
「よっしゃ! こっちは片付いたぜ!」
(うわ……魔法って何度見てもすごいな。やっぱり俺も魔法スキル作ろうかな)
ララの剣が閃く。流れるような身のこなしで、敵の首を次々と刎ねていく。
(美しい……いや、怖い!絶対怒らせないようにしよう……)
「こちらも片付きました。……でも、こんなに魔物が活発なんて何か起きてるのかしら」
「フェインさん、オルドロスさん、ララ、ありがとうございます。
ここは休憩せず、一気に次の階層まで行きましょう。サギリさん、急ぎ足で!」
不穏な空気を残したまま、一行は急ぎ階段を目指した。
「もうすぐ階段が見えてきます。それにしても、階段が近づくにつれて魔物が減っていますね……。一体何だったんでしょうか?
サギリさん、急ぎましたが大丈夫ですか?」
「あ、はい。寝不足以外は元気です。フェインさんたちが先に倒してくれたおかげです」
「そうですか。では、このまま下へ向かいましょう。
23層目が落ち着いていれば、そこで休憩を取ります。皆さん、本当にありがとうございます」
ケイネスの言葉に三人は笑顔で手を振った。
23層目 雨
階段を降りた瞬間、空気が変わった。
辺りには濃い霧が漂い、強い雨が地を叩いている。
視界は白く霞み、まるで何かが潜んでいるような重苦しい気配が漂っていた。
「……これはまずいな。まさかダンジョンで雨が降るとは。
一度も聞いたことがない。――どうする、みんな?」
ケイネスの声はこれまでにないほど険しかった。
次回もよろしくお願いします。




