光の速度で殴られたことはあるかい?
朝、見慣れた森の中でサタナスはゆっくりと目を覚ました。
「もうこの辺りの魔物では相手にならないな……そろそろ、奴にリベンジする頃合いか」
記憶に焼き付く狭霧との敗北。
それからというもの、サタナスはテイネブリシーバの森で推定Cランク以上の魔物を狩り続けてきた。
今では、片手で簡単にねじ伏せられるほどにまでに成長していた。
「我が格闘術で魔物と渡り合うとは……“魔王”と恐れられた以前の我には考えられぬことだな。
だが、この世界で魔力を扱う術はいまだ掴めぬ。――まあよい。行くか、白き巨獣を探しに」
サタナスは立ち上がり、森の中心へと歩みを進めた。
数時間後。
道中、何体もの魔物を軽くあしらいながら進んでいると、黒光りする巨体が木々の隙間から姿を現した。
全長二メートルを超えるサイのような魔物。
頭頂には鋭く青く輝く一本角があり、肌には雷のような紋様が走っていた。
――野生の【ライサイ】が現れた!
「ふむ、面白い相手だ」
地面を蹴り上げるライサイ。瞬く間にその全身が電光に包まれていく。
青白い閃光がほとばしり、角が高熱を帯びたように光り輝いた。
「雷か……懐かしい属性だ」
サタナスは一歩踏み出し、電撃を纏う巨体に向かって右ストレートを叩き込む。
空気が爆ぜ、ライサイは巨体ごと後方へと吹き飛ぶ――しかし、すぐに立ち上がった。
その瞬間、サタナスの右腕を電流が走り抜ける。
「貴様の雷、もらったぞ」
サタナスの拳がゆっくりと握られる。
次の瞬間、その拳が光速に近い速度で放たれた。
轟音。
稲妻が落ちたかのような衝撃波が森を駆け抜ける。
ライサイの巨体がよろめき、首から上が吹き飛ぶ。
残された胴体が地に崩れ落ちた。
「その巨体を活かした攻撃ならば、あるいは一撃くらいは届いたかもしれんな」
サタナスは死体を見下ろし、静かに笑う。
その背後――もう一体のライサイが、殺気を孕んで忍び寄っていることに、彼はまだ気づいていなかった。
次回もよろしくお願いします。




