洞窟じゃないんですね
1層目 晴れ
ピラミッド型の入口をくぐると、そこには建物の内部とは思えない、まるで別世界のような光景が広がっていた。
辺り一面には木々がまばらに生えるサバンナのような大地が続き、遠くには標高の異なる山々が連なっている。
反対側を見れば、果てしない海が地平線まで広がっていた。
海面を見つめていると、ときおり巨大な魚のような背びれがいくつも現れては消えていく。
「……すごい。」
思わず感嘆の声を漏らす。振り返ると、来た道の先には、ただぽつんと白い長方形の光の空間が浮かんでいた。
「変な感じだろ? ダンジョンってのはこんなふうに、でっけぇ島みてぇになってんだ。端っこは全部海だが、誰もその先を見たやつはいねぇ。ま、行きたくても行けねぇけどな。海にはバカでけぇ魔物がいてよ、ガハハハ!」
豪快に笑いながら話しかけてきたのは、アスラダンジョン到着後に合流した仲間のひとり――オルドロスだった。
一般の成人男性よりやや小柄で、ずんぐりとした体格。髪から顎へとつながる立派な白髭は、整えられていてまるで小さなダルマのようだった。
「オルドロス、サギリさん。そこに突っ立って話してないで、早く次の階層へ行きますよ」
そう声をかけてきたのは、同じく新たに合流した女性――フェイン。
膝まで伸びた青い髪が陽光を反射してきらめき、褐色の肌が健康的な印象を与える。
髪の隙間からのぞく耳は、人とは少し違う形をしていた。
「すみません。洞窟みたいな場所を想像してたので、つい驚いて……。」
前方を歩く仲間たちに追いつくと、リーダー格のケイネスが紙束を広げ、方角を確かめていた。
「一層目の階段は……入り口から見て、こっちの方角ですね! さあ、行きましょう!」
ケイネスが指差す方向へと、五人のパーティは歩き出した。
数十分後
数度の戦闘があったが、フェインの放つ正確な弓が魔物を次々と射抜き、危なげなく突破していった。
やがて一行は小高い山を登りきり、山頂付近にぽっかりと開いた大穴――階段状の通路を見つけた。
先導していたケイネスは、近くの岩に腰を下ろす。
「よーし、着きましたね。ここで少し休憩したら、二階層へ降ります。」
「いやぁ、荷物がねぇってのは快適だな。俺も収納スキル欲しいわ。なあフェイン、そういうスキル、どっかで聞いたことねぇか?」
「残念ながら、私は聞いたことがありませんね。精励スキルって、だいたい戦闘か魔法関係ばかりですから。オルドロスも挑戦してみては?」
「そう言われてもなぁ……誰もできたことがねぇとなると、どうやりゃいいのかさっぱりだ。」
オルドロスが肩をすくめ、ケイネスが笑う。短い休憩を終えると、再び階段へと足を向けた。
「さて、次の階層に行きますか」
五人はゆっくりと階段を降り、暗がりの向こう――二層目へと足を踏み入れた。
2層目 晴れ
風景は一層目とさほど変わらず、山と木々が点在する広大な世界が広がっていた。
次回もよろしくお願いいたします。




