名前を聞いてなかったみたいです
狭霧たちは森を抜け、門へとたどり着いていた。
「ようやく落ち着きました…ありがとうございます、サギリさん」
震えていたレゼの体は、気づけばすっかり収まっていた。
「それにしても、あれは一体何だったのでしょう。あまりに異様で、思わず“魔人”などと口にしてしまいましたが…本当にそうだったのでしょうか。黒と白が入り混じった髪、心まで見透かすような碧い瞳。見た目は私たちと同じ人間でしたが、人に化ける魔物もいると聞きます。サギリさんは、どう思います?」
「うーん…僕は特に“異様”って感じはなかったんだよなぁ。ただ直感では、人じゃない気もしたような。でも魔物と戦ってたし、びっくりしてるようにも見えたし…害はなさそうだったんだよね。僕には断言できないかな」
「そうですか…。やはり報告すべきでしょうか?もし人間だったら失礼ですし…」
「そこはお姉さん次第かな。…でもさ、もし報告したら僕も事情聴取とかされるんじゃ?やめときません?」
「もちろん。でも嫌なら今回は…」
そう話すうちに、冒険者ギルドの前へと着いていた。
「あ、そうだ。受付処理してくださるんですよね?ランクの件で」
「えっ、あ!そうでしたね。ちょっと先に森の調査報告だけ出してきますので、あそこのカウンターでお待ちください」
レゼはクエスト報告所の空いているカウンターを指さし、裏手の扉へと消えていった。
狭霧が指定された場所へ向かうと、隣のカウンターにいた職員から声をかけられる。
「クエストの報告でしたら、こちらでも受け付けますよ」
「あ、えっと...そういえば名前聞いてない...さっき後ろの扉に入っていった女性の職員さんに“ここで待っててね”って言われたので…その方を待ってるんです」
「そうでしたか。失礼いたしました」
――数分後。扉からレゼが戻ってきた。
「お待たせしました。ではまず、サギリさんが受けていたヒーラ草のクエストから確認しますね。集まってますか?」
「え?ありますよ」
狭霧は次元収納から採取したヒーラ草を提出した。
「えっ、これ…全部ヒーラ草?本当に?」
レゼは驚いた様子で、一房ずつ丁寧に確認していく。
「そんなに確認しなくても、全部ヒーラ草ですけど」
「そんなはずは…! これ、少しお預かりしてもいいですか?」
「ど、どうぞ」
レゼは全てのヒーラ草を抱えて、再び裏の扉へ消えていった。
――ギルド奥。
「プジョンさん、これを見てください!」
レゼは机の上にヒーラ草を広げた。
「そんなに慌てて…確かにどれもヒーラ草ですが」
プジョンは落ち着いた様子で確認を進める。
「そうなのです、確かにヒーラ草…ですが!でも...私は見てしまいました...彼が集めていたのは...どう見ても、ただの雑草だったのです!」
次回もよろしくお願いします




