溺れかけたみたいです。
ぱらぱらと降っていた雨は、ローズの放った魔法の影響もあってか、次第にざーざーと本降りになっていった。
草原を叩く雨粒が地面に跳ね、二人の服をじわじわと濡らしていく。
「ローズさん?雨強くなってきましたよ?」
地面に倒れ伏したローズは、呼吸こそしていたが微動だにしない。
「...お、溺れるぅ...スゥ...」
(お、元気そう)
「ローズさん起きないといたずらしちゃいますよ?」
「...」
「いいんですね?後で怒らないでくださいよ?」
「...」
(よっしゃあれするか)
狭霧はためらいもなく次元収納を目の前に展開した。
(これで、雨水を収納っと)
頭上から降りしきる雨が空間に吸い込まれていき、周囲のざわめきが一瞬だけ和らぐ。
(こんなもんかな)
一度閉じた次元収納を、狭霧は再びローズの顔の上に開いた。
「先に謝りますねローズさん、起きないからですよ」
空間から現れた水の塊は、ゆっくりと弧を描きながら寝顔の女性へと落ちていく。
――バシャン。
「......!?な、流され...る? あれ?こんなに雨降ってたけ?」
「やっと起きましたね。たぶんローズさんのさっきの魔法の影響だと思いますが、もう帰りませんか?」
「さっきの魔法?もしかして水魔法がでたのか!?」
驚きながらも身を起こしたローズは、ふらついて狭霧の肩に手を置いた。
「おっと、どうやら私の魔力がもうないみたいだ。悔しいが、この雨の中じゃ仕方ない……帰りますか」
「そうしましょ。このままじゃ風邪ひきますし」
そういって二人は先ほど起こった出来事を話しながら帰宅した。
二人は雨に濡れながらも笑い合い、先ほど起こった出来事を語りつつ街へと戻っていった。
――そして翌日。
空には雲ひとつない青空が広がっているのに、ぽつり、ぽつりと雨が降り注いでいた。
その不思議な光景を眺めながら、ローズはどこか満ち足りた笑みを浮かべていた。
次回もよろしくお願いします




