静寂もつかの間の奇セキ
翌日、曇り空の下、ローズ、狭霧、ルシアの三人はリビングで朝食をとっていた。
「てことで、サギリさんや、少し行った場所であれを試してみようか」
ローズは手に持ったフォークで門のある方角を指した。
「家の裏手にある庭じゃないんですか?」
ローズの家は地下を含めた三階建てで、その裏手には学校の体育館の半分ほどの庭がある。
「お母さん、今日は何をするんですか?」
「この後はサギリと魔法の訓練よ。それに裏の庭では狭いし、使ったことのない魔法を使うんだから何が起きるか分からない。お城のときのようになったら、私もただでは済まないだろう」
「新しい魔法を覚えるんですか?また、あのときみたいに無茶を?」
ルシアは不安そうに尋ねる。
(あの時の無茶?やっぱり雷に打たれたっぽいな、この人…)
「あぁ、それなら多分大丈夫だ、今回はサギリがいるからね」
ローズはなぜか自信満々に親指をたてている。
「え?サギリさんは魔法も使えるのですか?」
「ま、まぁね多少は...」
「すごいです!お母さんのこと、よろしくお願いします!!」
(今日もかわいいなぁ…ルシアちゃんに頼まれちゃったら僕、頑張っちゃうよ)
「もちろん!任せて!」
「やっぱり朝食にルシアを誘って正解だったね」
「ん?お母さん何か言いましたか?」
「...」
(やられた、この人はホントに...)
こうして朝食を済ませた二人は準備を整え、ルシアに見送られつつ街を出た。数十分後、草原に到着する。
「よし、ここなら何が起きても大丈夫だろう」
「こんなに離れなくても良かったんじゃないですか?」
「私はそれなりの魔法使いだしね。それに無詠唱スキルもあるからね」
「無詠唱って何がダメなんですか?」
「えっとね簡単に言うと、魔法が勝手に発動しちゃうことがあるんだ。普段は大丈夫だけど、戦闘モードに切り替わるとたまに出るんだよね。詠唱って要はイメージ力や魔力の流れなんかを強く感じイメージするための補助的な役割を担っていて、意識、詠唱、発動の順番が本来の魔法を使う流れなのだけど【無詠唱】があると意識、発動となって便利なのだけどね、状況によってはこっちの魔法かもう一つの魔法どっちを使うか悩んだりするでしょ?その時に勝手に最初に考えた魔法のほうが暴発しちゃったりするんだよね。しかも結構な威力で...不便でしょ?」
「なるほど、もしかしてあの時、お城を壊したのも…?」
「そそ、あの時も復帰がてら鈍っていないか確認しようと考えていたらねぇ...」
「前から思っていたんですが、この世界のスキルって何かと不便ですよね。思い通りにならない感じで」
「そんなものさ、神が作ったこの世の中完璧なんて存在しないのさ、スキルだろうが能力だろうが、それはいわば神ですら完璧じゃないってことでもあると私は思うね。完璧じゃないからこそ完璧を目指して成長できるのさ。面白くない話はこの辺にして...ね?やろうじゃないか!」
「そ、そうですね」
(なんかすごいこと言ったなぁ)
狭霧はローズにエディッタを使用するとローズのステータス一覧が表示される。
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名前:ローズ・トルマリン
レベル:87/100
HP:4508/4508
MP:2604/2604
力:460
防御:211
速さ:60
知性:755
器用さ:361
運:15
状態:健康
スキル
・火炎魔法
・雷魔法
・極光魔法
・魔法無詠唱
・ローネリア語
編集
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(よし、これに水魔法を追加して完了っと)
スキルの追加をするとローズの体がふんわりと光った。
「お?おお?付与できた?できたよね、今の感じ!?」
ローズは驚きながら体を見渡す。
「はい、追加しましたよ。僕は魔法スキルを持っていないのでよく分からないですがまぁゴブリンでも使えたし行けると思いますよ」
「ゴブリン?ゴブリンにもスキルを付与したのか?」
「あれは話すのも悲しい尊い犠牲でしたよ…ありがとう、ゴブロウ…」
「そ、そうか。聞かないでおこう。そ・れ・よ・り・も!」
ローズは握りしめた腕を胸の前に置き、手を開きながら前に強く伸ばした。
「来い!来い!来ーい!水ゥ!」
静寂だった草原に、けたたましい風が吹き荒れる。
「お!この感じ!」
ローズの手から、蛇口を少し捻ったかのような弱々しい水流が流れた。
「え...?え?」
「お~凄いですね、ローズさん、出ましたよ!じゃあスキル消しますね」
「え?ちょっ、え?」
狭霧はローズに考える隙を与えず、水魔法を消去した。
次回もよろしくお願いします




