この世界にもゴリラっているんですね
狭霧たちは城へと辿り着き、ローズが以前ぶち壊した魔術訓練所を横目に、その先にある騎士団の訓練所へと足を運んだ。
そこでは騎士たちが剣や槍を振るい、汗を飛ばしながら素振りや模擬戦に励んでいた。掛け声や金属のぶつかる音が絶えず響き、熱気に包まれている。
だが、入口からローズと一人の“侍姿の剣士”が姿を現すと、ざわめきが波紋のように広がっていった。
「お、おい…あれが団長の言ってた謎の剣士じゃないのか?」
「馬鹿言え、剣なんか持ってないだろ。ただの入団希望者だ」
「で、でも隣にローズさんがいるんだぞ…」
「ふん、どうせ魔法の才能もなくて見放されたんだろ。俺がコテンパンにして追い出してやるさ」
「や、やめとけって…」
騎士たちがざわつく中、その輪を割って一人の巨体がズカズカと歩み出た。筋骨隆々、ゴリラのような体格をした男である
(はぇ〜…でっかい。あれが団長さんかなぁ)
狭霧がそんなことを考えていると、ゴリラは鼻息荒く、興奮気味に声を張り上げてきた。
「おい、てめぇ!どこの誰か知らんが何しに来やがった!魔法師団団長様を連れてきゃ入団できるとでも思ってんのかぁ!?」
(あっ、違うな…なんかウホウホ言ってるし)
「おい、無視してねぇで何か言ったらどうなんだ?怖くて言葉も出ねぇか!」
その様子に、ローズは深いため息をつき、呆れたように口を挟んだ。
「君、落ち着きなさい。私たちはガレスに用があるだけだ。彼は今どこにいる?」
するとゴリラ男は、先ほどまでの威勢をどこへやら、慌てて姿勢を正した。
「ま、魔法師団団長様!ですが、このような奇妙な格好をした者を団長に会わせるのは…。せめて、この私が実力を測らせていただきとうございます!」
その言葉に便乗するように、別の方向から豪快な笑い声が響いた。
「ハッハッハ!それはいい!では、この俺とも手合わせ願おうではないか!」
野次馬の輪から姿を現したのは、腹の底から笑う中年の男。騎士たちがざわめく中、その人物は当然のように中央へ進み出る。
(ん?また変なおっさん出てきた…どうなってんの、この騎士団)
「おいガレス、止めに来たのかと思えば、あんたも乗り気かい」
ローズは額に手を当て、呆れ果てた様子でその男――騎士団長ガレスを見た。
ローズは手を顔に当てながら呆れたように騎士団長の方を見ていた。
(あっ…この人が団長かぁ。めんどくさそうな雰囲気しかしない…)
「君がローズの言っていた例の剣士か!ぜひ、俺とも手合わせしてくれるな!」
「いや、まだ承諾してないのだが…」
「いいではないか!せっかくここまで来たのだから!な?な?」
「はぁ…サギリ。これはもうスイッチが入ってしまったから、相手してやらないと収まらないぞ...」
(ちょ、ローズさん?助けてくれないの?…え?なんでゴリラも団長も、みんな揃って奥のステージ行ってんの?あれ?俺、戦わなきゃダメな流れ?)
十分ほど粘った狭霧の無言の抵抗は、結局空しく終わった。
彼は深いため息をつきながら、観衆が待つステージへと歩き出すしかなかった。




