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何やら視えていないようです

「さぁ、まずはこの壁の修復からやってくよ」


連れてこられたのは、石造りの訓練所のような場所。

壁には無数のひび割れと崩れ落ちた石が積まれていた。


「今回って人探しですよね?なんで壁直すんですか。そもそも誰がこんなことしたんですか?その人にさせればいいじゃないですか...」


ローズは笑いながら答えた。


「その張本人があたしでこの原因の元を辿ればあんたが私を元気にさせたからってことでもあってね ニコニコ」


その言葉に狭霧の眉がぴくりと跳ねた。


「ええぇ...」

「それとこの作業が終わったら紹介したい人がいるからね」


そう言い残し、ローズは手にした工具を握り締め、作業員たちと壁の修復に取り掛かった。


「紹介したい人ですか...はぁ...力仕事になりそうだしこのタイミングでステータスでも強化しておくか」


エディッタのウィンドウが静かに浮かび上がる。画面に映る自分のステータスを見ながら、狭霧は数字を調整していく。


----------------------------------------------------------

名前:富士狭霧


レベル:20/150 

HP:15000/15000 

MP:100/100

力:50 → 1500

防御:1000

速さ:50 →200

知性:100

器用さ30

運:20

----------------------------------------------------------


(これでよしと。あの時のバングさんくらい強ければ、しばらくは大丈夫かな。できればあの時ジジィのステータス見たかったなぁ...)


「おーい。いつまでそこでぼーっとしているのだ。早く手伝わないか」


ちょうど強化が終わったタイミングでローズに声をかけられ、狭霧は仕方なく作業に加わることになった。



6時間が過ぎ、今日の修復作業は終わった。


「ふぅ~魔術師に力仕事はなかなか疲れるわね、それにしてもあんた全然元気そうじゃない。意外と体力あるのね」

「ええ、まぁそれなりには鍛えてますから...」


(ステータスのおかげなんて口が裂けても言えないよ...)


「じゃあ、最初にも言ってた紹介したい人のところに行きましょうか」


(そういえばそんなこと言っていたなぁ...)


ローズの後をついていくと、お城の片隅にひっそりとある扉の前にたどり着いた。


「ここよ、中には二人の研究者がいるから、会ってもらえる?」

「はぁ、わかりました」


ローズが扉をノックし、そのまま開けて中へ入っていく。


狭霧も続いて中に入ると、そこはあちこちに試験管や不思議な機械が並ぶ研究室だった。


「あっ、ローズさん、こんにちわ。メイラー、ローズさんが例の人を連れて来たわよー」


ローズが挨拶する相手は、まだ子供のように見える小柄な女性だった。

彼女は大きめの白衣を引きずりながら、ちょこちょこと近づいてくる。


「この人がここの責任者のアイラで向こうからやってくるのがメイラよ」


こちらにやってくるメイラの顔と今、目の前にいるアイラの顔が全く同じだった。


「双子なんですか?どちらもまだ子供みた...」

「んん?そこの坊や、今なんか言ったかい??」


狭霧が子供と口にすると、突然アイラの表情が変わった。


その顔は一瞬で鬼のように険しくなり、威圧感が部屋に満ちる。


「い、いえ、とてもお若いように見えて、今何歳なんですか?」


年齢を聞くとさらに般若のように目と口が吊り上がり、一瞬お城が揺れたように感じた。


どうやら二度も触れてはいけない場所に触れてしまったようだ。


「レディーに年齢を聞くなんて失礼ですよ ニコニコ」


で、でた。あの笑顔...


ローズは話をそらすため、アイラとメイラに小声で指示を出す。


「早速、彼のことを視て欲しい」


二人は頷き、狭霧をじっと見つめた。


「あ、あのぉ、そんなに俺の顔見てなんかついてますか...?」


だが二人の表情は徐々に驚きに変わっていった。


「「な、何も分からない...です」」


その言葉にローズの表情が急に硬くなった。


「どういうことだ?分からないとは...視れなかったのか?」


メイラが慌てて説明し始める。


「唯一分かったのは、[ローネリア語]だけでした...あとは見たこともないような文字で...」


アイラも続けた。


「私の視たステータスもよく分からない記号のようなもので表記されていました...」


二人の説明に、ローズは困惑した様子で狭霧に問いかける。


「あんたは.....一体何者なんだ...?」


三人の会話が響く部屋の静けさ。狭霧は焦りを感じつつも、何とか冷静を保とうとした。


(しまった、鑑定スキル対策をするのを忘れていた...けど、なにやら分からないようで良かった...)


安堵の気持ちを押し殺し、狭霧は答える。


「何者って、ただのEランク冒険者ですが...何か問題でも...?」

「問題も問題、大問題だよ。あんたのスキルが分からなかったらより犯人疑惑が増すのと...どうやって呪いを解いたのかもわからないじゃないか」

「えっと...勝手に人のこと鑑定したら犯罪になるんじゃなかったでしたっけ...」

「確かに勝手に鑑定したのは、すまない。しかし怪しい者ではあったので許してほしいが、それよりもあんたは自分でステータスと何のスキルを持っているのか把握しているのかい?」


狭霧は頭をかく。


(おっと、核心的な質問だなぁ、ここは正直に答えるべきか、はぐらかすべきか...)


狭霧は答えを迷いながらも口を開こうとした、その時――


入口のドアが大きな音を立てて開き、兵士のような男が慌てて駆け込んできた。


「ローズ団長!こんなところに。大変です!すぐ近くの洞窟で魔物のスタンピードが突如発生し大量の魔物が暴れまわっている状態でしてさらに魔人と思しき存在も確認されています。現在冒険者たちと騎士団が必死に門付近で抑えていますが数が多く、魔術師団も早急に現場に向かってほしいと通達が」

「魔人までいるのか?!分かったすぐに向かおう。おい、あんた一緒に行くぞ」

「...え?」


またもや強引に腕を掴まれ、連れて行かれる狭霧だった。

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