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ブラックスカイ  作者: 魚砂漠
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宿泊への帰路

 宇宙がリーサを連れて再びフォールに戻って来ると、日がオレンジ色に輝いていた。

 だがそれは太陽ではない。惑星に近い球体を中心として、それを囲むように時計の針のようなものが上下左右に配置されている。

 そのことは宇宙が昨夜見た本の中にもいくつか記載されていた。太陽に似ているあの星は『原初の星』またを『時の神』その具現だと言われているらしい。星の周りにある針のようなものは長年の観測により針が徐々に短くなっているらしい。だが、それはほんのわずかなもので、そこから導き出されたのが『時の神』の『終わりの知らせ』説なのだそうだ。


 フォールは巨大な外壁でおおわれている。そのためフォールには四つの出入り口が設置されている。 四つの門には王国の首都から配属された兵士たちが検問を行なっている。

 そして現在、宇宙とリーサは検問に引っかかっていた。


「(何故こんなことになったのじゃ?)」

「(お前のせいだ)」

「(?

  何故じゃ、わしはただ事実を言っただけだが?)」


 あ、こいつダメだなと頭を抱えたくなる。確かにリーサは『何故来たかだと?このソラに連れてこられた、でいいか?』と真実を言った。

 ただ今は目の前の誤解を解かなければいかない。


 冒険者ギルドの本部についた。大きな扉は大男でも入れるように工夫をされている。建物自体は三階建のちょっとしたデパート並みの大きさだ。


「ついたな。さて、入るか」

「おう、そうじゃな!」


「(それじゃあ入るが余計なことは極力言うなよ。僕はこの姿では、一人称を変え雰囲気を変える。違和感はあるかもしれないが気にするなよ)」

「(分かっておるわ!)」


 やけにテンションが高いリーサに向けて宇宙は自分能力の一つテレパシーをリーサに使う。

 最後の確認を終えた宇宙は、目の前の扉を開け放つ視界に入ったのは大きな酒場のような場所だった。だが、数十個もある席は二つしか埋まっていない、カウンターには従業員が五人並んでる。


「すまないがここの冒険者の登録をしたいのだがいいかな?」


 従業員の一人に話をかける。少々お待ちくださいと言って従業員はカウンターの下から書類を二枚取り出す。

 宇宙が鎧のまま書類に日強事項を記入しているとリーサの声が頭の中に響いた。


「(おい、わしは字なぞかけんぞどうするんじゃ)」

「(そこは僕が書くから大丈夫だ。有る事無い事適当に書かせてもらうよ)」


 朝記入したように宇宙はスラスラと書いていく。記入が進み名前の欄に突入したが朝の時とはまた別の名前を記入した。その欄には共通字でソラと記入されていた。

 リーサの分は適当に書いた(リーサは字がわからないためポカンとしていた)。


 一通り書類を書き終えた宇宙はその書類を従業員に「お願いします」と言って渡し従業員は「少々お待ちください」と言って奥に入って行った。待っている間宇宙とリーサは近くの席に腰掛けることにした。


「やっと座れたのじゃー!」

「そんなに座りたかったのか」


 リーサが言うと宇宙は今までとは違って太い声で返す。ム?とリーサが怪訝な顔をする。


「(入る前にい雰囲気を変えると言っただろう)」


 おおーそうであったな、と納得したリーサが声を上げる。それを宇宙テレパシーで声を上げるなと注意していると、奥に入った従業員が手に何かを持って出てきた。


「ソラ様、リーサ様、登録が終わりました」


 知らせを聞いて宇宙とリーサはせきを立ちカウンターに向かう、従業員が握っているのは銅のプレートだ。銅のプレートは冒険者が冒険者登録した時初期の武器と一緒に貰えるものだ。だが、カウンターの上には一人分の短剣しかない。宇宙の装備を見てのことだろう、ギルドは最低限の支援しかしない、だから状況次第では装備が貰えない場合もあると言うことだ。


「それじゃあ早速だがクエストはあるか?

できれば討伐クエストがいいのだがな」

「はい、討伐クエストでしたらゴブリン討伐が二つ、そしてパティー募集のクエストが貴方たちが出来るクエストにあります」


 そう、全ては従業員の独断と偏見なのだ。午前の時は討伐クエストを受けられなかったかもしれない。


「ならパティー募集のクエストの詳細書類はあるか?」


 はい、と覇気のない声で従業員は返事をするしてカウンター下から一枚の紙を取り出した。


 それはクエスト内容を記載した紙だった。紙には、クエスト内容、参加するパティーを記載する欄があり、クエストの分類は討伐・探索と書いてある。募集する日ずけが今日までであり明日にクエストを開始するようだった。

他にもクエストの報酬や難易度を確認した宇宙は従業員に決断を言う。


「それではこのクエストを受けることにします」

「分かりましたそれではこちらにパティー名または、冒険者名をお願いします」


 従業員は羽根ペンを渡しながらパティー名を記載する欄に指を指す。パティー名の欄には十あるうちの二つが埋まっていた。一つはこのクエストに募集をかけている『白剣団』、もう一つは『マリア』と記載されている。


「うむ、パティー名を記載しなければいけないのですか、リーサなにか適当につけてくれ」


 私はセンスがないので、と付け足して宇宙はパティー名の決定をリーサに丸投げする。だがリーサには動揺する顔は無く自信満々にパティー名を言った。


「良かろう、それならば『ソラ』ではどうだろうかソラよ」

「わかった」

「む」


 嫌がらせのつもりで宇宙の名前を使いパティー名にしたが宇宙はそのことに顔色ひとつ変えない、実際リーサには宇宙の表情が見えないがそんな気がした。

 一方に宇宙はそれがどうしたというような顔をしながら宇宙はリーサにため息をつきたくなっていた。

 宇宙はわかったというと三つ目の空欄に『ソラ』という名で記載した。


「それではパティー名の登録も頼む」

「かしこまりました」


 書いた紙を受け取りながら機械的に従業員は答える。

 一分ほどでパティー名の登録は終わり宇宙とリーサは冒険者になった。

 ギルド本部では冒険者達のために食事をするスペースもある。

 宇宙はリーサが襲った冒険者の亡骸から取った金お使いリーサと食事をした。

 リーサは人間の食べ物が珍しいのかまたテンションが上がっている。


「うむうむ、人間の食べ物は美味しいなぁ!

 ところで宇宙よ、何故わざわざ他の者と手を組む仕事にしたのだ?

 おぬしの力があれば、私と言う仲間すら必要なかろう?」


 一方、宇宙は鎧を脱がず食事を取らずで、リーサの質問に冷静に答える。


「そうだな、だが人間関係を大切のしていかないとこの人間たち巣窟にはいられないのだよ。

 に今回の仕事の内容は面白い点がいくつかある。

 まず募集内容、あれは他の冒険者、『白銀の団』からの募集依頼だった。この募集内容は初心者からとある、だが仕事内容は討伐・探索と言う初心者を募集しているが初心者にはきついものがある」

「つまり、どういうことなのだ?」


 食事を終えたリーサは、宇宙から渡された布で口周りを拭きながら応答する。


 つまり中級者以上の募集をしたかった。だが予算的にも厳しく、こんな遠回りな募集内容になってしまったのだ。

 それに依頼を張ったのは昨日の夕方なのに募集は今日までなのだ。初心者に中級の仕事を任せるには、数で補うしかないのだ。だがこれは明らかに少人数を装った内容だった。

 矛盾しているのだ。


「うむ、そうだな、矛盾しているな。

 だがどうして()()()のだ?」

「そこに関しては私の私情を含んでいるのだ。

 その点に言えば目を瞑ってくれれば嬉しいな」

「お?おう、わかったのだ」


 そろそろでるか、と宇宙が言うと、リーサが元気よく応答する。

 ゆっくりと宇宙とリーサが出口に向かう。席を立ちゆっくりとカウンターを横切り出口の扉をゆっくりとそう、ゆっくりゆっくり開ける。

 宇宙のその行動には意味があったのだ。リーサには…ドラゴンにはきずきようのない些細なことだった。宇宙は出口を出るその刹那に見た。本当に些細なこと、軽装な冒険者の一人が宇宙達の出る瞬間、こっちを見て席を立つところを…


 リーサはギィと言う扉が閉まる音を後ろに聴きながら空を見る。空には大きな二つの月が見えていた。一つは赤にもう一つは青く輝いている。大きさはやや赤色の月が大きい。


「そういえばあの月も『双子の神』とか言われていたな」

「ああ、そうだなこれは知恵ある生物の共通と言えるだろうな、『原初の双子』とも呼ばれておる。

 『世界の理』の二柱だな」

「ああ」

「そういえば、宇宙わしらは何処で寝泊まりするのだ?

 人間はこう言う街では野宿しないのだろう。」

「そこには今から向かう」


 今朝までいた所でいいだろう。あそこには度々冒険者を見かけたし、本来自身の家を持たない冒険者のためフォールには多くの宿泊が設置されている。


「……」

「お、まつのじゃソラー!」


 宇宙は宿泊に向かって歩き出す。それに置いてかれないよう走ってリーサは付いていく。


 宇宙がいた宿泊は冒険者ギルドから徒歩で三分の所に在る。宿泊は他にもギルドから近い所は多数あるが、設備的、金銭的、施設的に現在の宿泊になったのだ。


 現在ギルドから二分ほど離れ辺りも暗く狭い道に入っていた。


「なぁソラまだか?

 三分ほどで着くと言っていたがもう三分経ったであろう?」

「まだだ。

 この道を抜ければすぐだ。」

「お、おう、わかった」


 一通りの会話を終えて、二人とも無言で暗い道を進む。

 長く暗い道は民家や宿泊の密集でできているが、人の気配がまるで無い。

 そこで宇宙はぴたりと止まった。長く暗い道の真ん中でだ。


「どうした宇宙」

「(お前は構えないでもいいぞ)」

「なるほど、わかった手短に済ませてくれよソラ」


 宇宙は振り返って目線を上げる。そこはちょうど影、光を通さない闇。鎧は構える。背後にある大剣には手を伸ばさずゆっくりと臨戦態勢をとりながら言う。


「出てくるがいい、貴様の行動、あのご老人の時から警戒していたが敵意を少しでも漏らした時点で貴様の負けだ。」


 宇宙は現在、索敵能力を発動していた。

 それは宇宙たちに敵意、害意を向けたものを教えてくれる力、それを発動している通常時より宇宙は能力を制限される。

 例えばテレパシー、相手の思考を読み、脳内での会話を可能にする。一見、テレパシーを使えないと言うデメリットが付いていると思うが、索敵能力にはそれを帳消しにするほどの力がある。半径1キロに及ぶ索敵範囲、それから発生する膨大な位置情報を把握することもできる。


 宇宙が向いていた影の濃い場所が動く、次の瞬間、全く反対の方向から複数の刃物が飛び出す。


「ソラ、後ろじゃ!」

「わかっている…」


 リーサの声に冷静対応する。

 刃物は暗殺などに使用しそうな小さいナイフ、見える数は五本、宇宙は一番最後に飛んできたナイフの柄をキャッチすると次に飛んできたナイフを握っているナイフで叩き落とす。次に同着の三、四本目を横から殴り、最後の一本を素早く掴んだ。


 一瞬の出来事だった。


「これで満足ですか?」


 濃くなっている影に話しかける。一見誰もいないように見える影だが、上級の冒険者ならば感じ取れるだろう。人の気配はその影の中に確かにあった。


「あとはそっちのもじゃな」

「ああ、そうだな、

 ()()()()()()()()()()()?」


 影には警戒しつつその先、道の角に問いかける。その次、影に動きがあった。リーサが警戒を強めるが次に角の方に動きがありリーサの心に戸惑いが生まれる。


「安心しろリーサ、この人達にはもう敵意はない。

 …そこの影を抜いてな…」

「…わかったのだ」

「それに姿を見せてくれるようだしな」


 影はやがて薄くなり人の形を取って行く。一方で角の方は何もないところから三つの人影が現れる。


「あっちゃー、バレてましたか、

 やっちまったなー」

「カイジン!だから正々堂々あって話すべきだったんです。」

「ダメよ、エレン、相手の強さを図るなら戦って見るしかないもの」

「それでどうだったソーヤ?」

「…いいんじゃないか」

「それじゃあ決定だな!

 明日のクエストよろしくな!」


 状況があまり飲み込めていないリーサとあらかじめ知っていたように静かにしている宇宙に彼ら、白剣団は合格を祝うのであった。

次回も気が向いたら投稿します

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