プロローグ
一体のドラゴンの咆哮が轟く。
一瞬で8人のパティーのうち3人が鉄おも切り裂く爪によりやられた。
その視界の端に他の4人がその3人を笑って逃げていくのを見た。
卑怯者とか、意気地なしなどとは思わない、ただ人間の生存本能が働いただけだ。彼らがとった行動は決して間違えではない。
相手はドラゴンだがまだ小さく全長は6メートルほどだ。
だが、初心者の冒険者たちが集まったところでどうこう出来るわけでもなく8人のパティーは全滅になるかと思われた。
ただ1人を除いて
彼は初心者に配布される革の防具にロングソードを構えている。
鉄をも切り裂くドラゴンの前でだ。
と、ドラゴンが動き出す。ドラゴンの攻撃は単純目の前の獲物を我が爪で切り裂くだけ、ドラゴンが足を振り下げる。
本来なら彼はロングソードを切り裂かれ体にも相当のダメージを受けるはずだった。
だが、実際にはロングソードを切り裂くだけにとどまった。
鉄の剣を構えていた彼はいつ移動したのかドラゴンの首の真下に移動していた。
ドラゴンはとっさに攻撃のパターンを変える。
子供のドラゴンの攻撃は大きく分けて二つ、一つはその強靭な爪による切り裂き攻撃、もう一つは炎の息吹、ドラゴンは後者に攻撃を切り替え口の中に炎を溜める。
だがそれは彼の体を丸焦げにすることはなかった。
ドラゴンの頭が爆発したからだ。
原理は不明だが爆破した頭の下には腕を掲げている彼の姿があった。
「はぁ…マジかよ…」
彼、堺宇宙は驚いていた。
ドラゴンを倒せたことにではない、ドラゴンの弱さにだ。
「はぁ…」と、宇宙は溜息をつきながら空中に絵でも描くように指を動かした。
すると倒れたドラゴンに光がともりそのその形を戻していく、完全復活したドラゴンに魂が戻る。
はっ、とドラゴンが悪い夢でも見たかのように宇宙のことを警戒する。
「そんなに警戒するなよ、僕と戦う前にもうわかっていただろう」
宇宙はドラゴンに問いかけるが…
「え…もしかして人語話せないのか?」
ドラゴンは頭を縦に振る。「そうか…」と宇宙。
「それじゃ…」
『これなら喋れるな』
ビック、とドラゴンがその体を震わせる。
『驚いた、意思疎通の魔法とは』
そう、今宇宙とドラゴンは頭の中で会話をしているのだ。
「いや、これは魔法ではないのだが…まあいいか、おいドラゴン僕は宇宙丁度この世界での足が欲しかったんだが、お前僕の足にならないか?」
それを聞いてドラゴンは顔をしかめる。
『貴様この我に人間ごときの足になれと言うのか』
「質問を質問で返すなよ。それに誇り高きドラゴン様は勝負に負けて逃げるのか」
ドラゴンは誇り高き種族だ、その勝負には、勝者には己の全てを敗者には全てを失うという勝負をするらしい。
勝負に負けて逃げるドラゴンなどドラゴン自身がそれを許さない。
『そのように言われては仕方ない。』
するとドラゴンは態勢を低くして頭をクイッと背中に向ける。ここに乗れ…ということだろう。
宇宙はそこに乗り「よし、進めー」と気が抜ける声でいう。
「はぁ…」
ドラゴンにもきこえないくらい小さく溜息をつく。何故自分が冒険者をしているかということに、そして宇宙はこんなことになった経緯を思い出していた。
この世界に来た時のことを…