約3500kmという距離
※この作品には流血を想像させるような一文があります。
苦手な方はご注意ください。
「プロレタリアよ立ち上がれ!!」
「傲慢ででたらめなヘゲモニーを打ち倒せ!!」
時代が違ければ、こんな言葉が飛び交っていたのだろうか?
ちょっと前から国会の前が騒がしい。
2012年に国民が民進党に「NO!」と突きつけた事をきっかけに自民党は返り咲く。そこから2014年の解散総選挙、2016年の参議院選挙の勝利を経て2017年現在があるのだが、ご存知の通り野党にできることは少ない。
なぜか?単純な話、議席が足らないからだ。
通常国会とは1月中に召集があり国会が開幕してから延長が無ければ150日間、主に来年度の予算を話合う場だったりするのだが、今年の通常国会はどうしても決めなくてはならない事があった。
去年、天皇陛下が生前退位のご意向を示した。2020年頃に退位される事が予想されるのだが、そもそも、天皇陛下が生前退位するという行動自体が「皇室典範」に認められていない。それでも本人のご意向を尊重するのであれば、法律の方を少し変えなければならないのだ。2020年に間に合わせるのであれば、そろそろ、ちゃんとした形にしておかないといけない。
大事な事である。
次に、2020年に東京でオリンピック・パラリンピックがある。テロ対策は国としても重要な事で、その為には国連が定める国際組織犯罪防止条約。通称TOC条約を締結する必要があると自民党は感じていた。締結したいと思う理由としては、国連に加入している国や地域の内187国が既にこの条約を締結しており、締結した国同士で国際的な犯罪組織の情報を『共有しやすくなる』という事が1番になるだろう。逆に未締結の場合、犯人引き渡しに時間が掛かったり、国際的な批判や不信感の対象になりかねないという理由だ。
この条約は締結する条件として、国際組織犯罪の対策上『共謀罪の犯罪化』や『マネーロンダリング罪』『司法妨害罪等の犯罪化』等が義務づけられているのだが、日本の現行法上の罰則にはそれを取り締まり、処罰する罪が存在しない(※法務省記載文)ので、まずは『共謀罪』(テロ等準備罪)から形にしようと考えた。他の『マネーロンダリング罪』や『司法妨害犯罪等の犯罪化』も形にしないといけないのだ。2020年までに施行させるには、そろそろ形にしておかないとまずい。
しかし、元々懸念があった。
日本の法体系上、犯罪を実行してから罰則するというのが原則であり『共謀罪』は犯罪を計画した段階で、それを取り締まるというモノである。根幹から考え方が違うのだ。過去にも3回廃案になった経緯もあり、勿論騒ぐ人達が出てくる。
「監視社会に繋がる」
「反政府デモなどを取り締まる理由になりかねない」
「一般市民の言動を強く規制しかねない」
そこで政府は、今回の法案の中身を以下のように改正して提出を考えた。
①対象:団体→組織的犯罪集団
②構成案件:犯罪を共謀する→実行の準備行為を行う。を追加
③対象犯罪:676→277
④名前:『共謀罪』→『テロ等準備罪』
それでも、懸念は止まらない。
そして、今年の3月頃、状況が急転する。
野党が騒ぎ、新聞各社が乗り、ネットが喰いつく。
所謂、森友学園問題と加計学園問題だ。
3月に始まったこの問題は、結局、6月に入っても解決せず、お茶の間を巻き込み混沌としている。そんな中、2020年までに国際組織犯罪防止条約を施行させたい政府は中間報告という手を使い「強行採決」という手段にでる。結果15日朝に『テロ等準備罪』新設法は可決し成立した。
野党は「牛歩戦術」という古典的な手を使いながら抵抗をした。
それでも可決された。
ある議員は叫ぶ「加計問題の隠蔽の為の強行採決だ!」
確かに、議論不足だった。
それは言うまでもない。
しかし、議論の時間をつぶしたメディアと野党も同罪である。
全ての議員に質問をしたい。国内でテロが起きていいのだろうか?
10割「NO」と言うだろう。なぜ、議論が進まなかったのか大いに謎である。
森友学園問題や加計学園問題を取り上げる前にやる事はなかったのだろうか?この両問題は、今年に入って3回もイギリスで起こっているテロの問題と比べて優先順位が高かったのだろうか?その問題を取り上げる時間を『テロ等準備罪』に充てられたら、国民はもう少し納得できたはずである。もっと議論をして欲しかった。100%満足する事はできなくても、ある程度の安心をしたかった。「強行採決」をした自民党が100%悪いというのは、あまりにも傲慢である。
と言っても仕方ない。
今年の夏は日本の首都である東京で大事な選挙がある。自民党から離党を決めた「小池都知事」が率いる都民ファーストの会は公明党と手を組み、今回第1党に躍り出ると予想されており、自民党はそれを追いかける形だ。本来なら、ここで民進党も追いかけなければならないのだが、選挙前から、離党者を出している現状、同じ野党の共産党との争いをする形になると予想されている。
自民党は都民ファーストの会に勝つことは少し難しいだろう。
そして、勝てなかった理由をマスコミや一部のネットはこう表現するだろう。
「自民党は強行採決や色々な疑惑があったから都民ファーストに勝てなかった」
「自民党に都民が『NO』をたたきつけた。自分達も続かなければならない」
すべてはイメージ戦である。
野党にできる事は少ない。
夏の選挙がおわり、秋の匂いが漂い始めた頃、今年もあるであろう臨時国会では、自分達は100%悪くないという顔をしながら、加計学園問題を追及する野党がいるだろう。
私達は忘れてはならない。
『テロ等準備罪』の議論の時間を無駄に使った野党の責任を。
こうして、1月20日に始まった第193回通常国会は本日6月18日に閉幕をする。
そして、選挙の夏が始まる。
で、終わりにしたかったのだが、少し長い追記をしたい。
衝撃的なニュースが目に飛び込んできた。
「フィリピン、ミンダナオ島でIS系武装勢力と戦闘。 3週間で、死者――」
フィリピン?
IS???
目を疑った。しかし、ネットで調べてみたら答えはすぐに返ってきた。
東京から約3500km離れた所にミンダナオ島という島がフィリピンの南部にある。フィリピンは日本と同じ島国なのだが、ミンダナオ島というのは、首都マニラのあるルソン島の次に大きい島で、今のフィリピンのドゥテルテ大統領の故郷であるダバオがある島でもある。元々、イスラム教が隣国であるマレーシアに伝わり、そこから移住だったり交易の関係でフィリピンに伝わり、最盛期にはフィリピンの多くの島がイスラム教圏になった背景がある。
特にミンダナオ島ではイスラム教の教えが強く、スペインにフィリピン全土を植民地にされた後、住民の殆どがキリスト教に改宗する中、ミンダナオ島には根強くイスラム教の教えが残った。そこから、スペイン、アメリカ、フィリピン政府などのキリスト教圏からの独立をする為にイスラム教徒が立ち上がるのだが、そのたびに鎮圧をされている。
※現在、イスラム教徒の殆どはミンダナオ島に集中しており、島民の2割くらいの人間がイスラム教徒らしい。ちなみにミンダナオ島の人口は約2200万人位らしいので、440万人位なのだろうか…?結構な勢力である。
21世紀になっても、キリスト教圏から独立したい気持ちは変わらない。そこに中東やアフガニスタンの紛争で結びついたイスラム原理主義系の人間が加わり、ミンダナオ島の南西部はテロ活動の拠点になっていった。アメリカやフィリピン政府の掃討によりほぼ壊滅・弱体化したと思われても、そのたび、人が流入してきており、その中にIS系の過激な人間達が加わる事により自体は悪化していく。
あまり気にしていなかった自分が情けなくなってくるのだが、去年の9月頃にミンダナオ島のダバオで爆弾テロが起きた。これも背景にはテロ組織が関係しているのだろう。
このような経緯もあり、フィリピンの現大統領であるドゥテルテ大統領は、5月23日にテロ組織のアジトに対して奇襲を仕掛けるのだが失敗をする。同日、ミンダナオ島全土には厳戒令が引かれ、その後、フィリピン空軍が空爆を開始、戦闘は泥沼化していく。戦闘が始まると、IS系のテロ組織はマラウィという街の一部を占拠した。6月12日には、キリスト教徒6人が銃で処刑されている動画が公開される。政府は同日に戦闘の期限に言及したのだが、いつになるかは明らかにしなかったという。マラウィには、まだ多くの一般人が逃げ遅れており、逃げようとすると、その場で射殺。戦闘になると、その場で人間の盾にされたりするという状態で、終わりはまだ見えてこない。
情けない話。この情報の殆どが、外国のメディアで調べた情報なのである。
日本の主要メディアでの記事ではない。
3500kmは安全圏という認識なのだろうか?
少なくとも、加計学園問題より何十倍も重要な情報だと思うのだが――。 同じアジアで起きてる状況を外国の情報で調べなくてはいけない状況に強い憤りを感じる。良かったら、みなさんも自分の目で確かめてほしい。
そして、願わくばこの現状を憂いて欲しい。
問題の数が多くそれらを文字に起こすとかなりの長文になる為、
荒くまとめています。
ありがとうございました。