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マリンの走馬燈

 マリンの電脳化された脳裏には、今までの事が走馬燈のように甦っていた。幼い時の記憶は・・・思い出せないけど、機械兵士になってからの事は鮮明に思い出した。


 13歳の時に全身に機械化細胞を押し付けられた時は、真黒な外骨格姿になっていた。そのあとは、いろんな機械化兵士の部隊を経て女子遊撃強襲機械兵になってからの日々を思い出していた。敵兵を斃すことを生きがいとして、そのあと罪悪と思うに至った経過を・・・


 マリンの身体は次々と機械化された部分を除去されていった。元々、マリンら機械化兵士は、数世紀前に地球から拉致されてきた人類を戦闘用に「品種改良」した種族出身だった。

 はっきりしたことは支配階層の極秘事項であったが、マリンが指揮していた部隊はイボンという地方から連れてこられたと言い伝えがあった。だからマリンら女子遊撃強襲機械兵が地球人と融合するなら、そのイボンとかいう地方の女子の身体が適当と言えた。


 いままで一緒に戦ってきた身体をなくしていくのをマリンはつらくも感じたが、次に目覚めるときには新しい人間になっているのを願っていた。そう、生まれ変わっているのを。

 もちろん、このまま死んでしまってもよかった。そしたら新しい命と身体を得て転生できるからだ。その時は、もちろん人を軍の命令で殺すことのない平和な世界に絶対生まれ変わりたかった。


 「ユリアン、わたしの意識をなくす前に私の身体を見せてくれないかな? もしかすると永遠にお別れかもしれないからお願い!」


 マリンの願いにこたえ、モニターで映し出してくれた。そのとき、マリンは手足が無くなり頭部がむき出しになり胴体も殆ど人工臓器が除去され、簡易生命維持装置で命をつないでいる状態だった。


 「ひどい、身体だわ・・・こんな身体で生き続けなくてよかったわ。そうだユリアン、私を生き返らせるために誰かの命を奪わないでね、難しい条件だけどお願い! もし果たせなかったらそのまま永遠に放置してよ! もし誰かを殺したら許さないわよ・・・」

 マリンの電子脳の機能が停止し、身体の冷凍冬眠措置が進行した。続いて他の三人の処理も同じように進行した。


 最後に残ったのがラーヌとユリアンだった。二人も頭部を覆っていたヘッドギアを外し、外骨格のようなスーツを脱いでドレスのような物に着替えた。二人は美しい金髪と紺碧の瞳を持つ美女に姿を変えた。


 「わたしたちも地球人としてこれから生きていきましょう。あんな世界に戻ることは二度とごめんだわ。とりあえずユリアン。あなたはわたしの娘だからね、これからは。それと、このユニットは近くの陸地に移動させましょう。そして適当な地球人として溶け込んでから、この四人の方を地球人として復活させましょう」


 ラーヌはそういうと四つのカプセルに手をかけた。その中には機械の身体を捨て元の生身に戻りたいと願う女性の意志が眠っていた。


 「ラーヌさん、とりあえずマリンさんが言っていた地球人を殺さないで済む方法を探してみますわ。幸い、機械化兵士の対処方法のデータベースがわたしにインストールされていますから」


 「お願いね、わたしも地球人の社会にどうやったらうまく入り込めるか研究するから」


 六人を乗せた元強襲揚陸艦のユニットは静かに日本へと向かっていた。もちろん地球人に察知されないようにバリアをはりながら。

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