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変身するはずないのに

 貴子先生が投げてきたのは何かのバトンのようなもので、なんの変哲もないものだった。先生、これでトカゲ野郎と戦えるわけないのに! そう突っ込みを入れたくなったが、そんな状況ではなかった。目の前にいるトカゲ野郎から千尋を救い出さないといけない!


 「先生! これで私は何をしなさいというのよ! それよりも警察でも呼んでくださいよ! それと救急車も! 私の腕が潰されたのよ!」

 私の半ば切れかかった叫びに貴子先生は思わぬことを言い始めた。それにしても何であんな恰好しているのだろうか、特撮作品にでるわけでもないのに。


 「高橋さん! いや・・・まあ、ともかく、さっき渡したものを胸にかざしなさい! そうすればそいつらを簡単に蹴散らせるわよ!」


 すると、トカゲ野郎の頭目らしき奴が口をはさんできた。それにしても何付き合っているのだろうか、こいつらは?


 「機械兵が二人か・・・機械盟約も協定違反をしたというか・・・お前ら脱走兵だろう! 脱走兵だからこんな地球人に化けてやがるのか。そこの片腕失くした娘! さっさと正体を現せ!」


 そいつは私になんていう事をいうのだろうかと頭に来ていた。私は高橋詩織、ただの平凡な女子高校生よ! と。取りあえず私は残された右手でバトンのようなものを胸にかざした。魔法使いの少女じゃあるまいし変身するはずないのに。先生も来るのなら・・・でもなんで私がピンチに陥っているのに気が付いたのだろうか?


 取りあえず胸にかざしても何も起きるはずない。かざした後は一か八か千尋の元に駆け寄っていこうと思っていた。すると思わぬ事が起きた。そのバトンのような物が激しく輝き始めたのだ!


 私の身体はその輝きに包まれた。すると私の身体は着ていた洋服がするっと抜け落ちてしまい全裸になってしまった。なによこれは? エッチ! と思った瞬間、私の身体は持ち上がっていた。周囲の空間にゴムのような物が現れて私の身体を包むこんでしまった。

 私は激しい圧迫感を感じたが何故か安らぎ感があった。それは元からいた懐かしい香りがする世界に戻ってきたかのような気持ちになった。


 その懐かしい香りの正体を思い出そうとする間もなく、私の身体は甲冑のような物に覆われて行った。しかも失くしたはずの左腕がいつの間にか再生していた!

 それとともに私の身体に力がみなぎっていき何でも出来そうな気持になった。あれ? わたしって平凡な女子高生、戦った事なんてないのにどうして変身なんか出来たのだろうか?

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