脱走機械兵たち
三陸沖で爆散した宇宙強襲揚陸艦。認識番号Γ50210は量産型の一隻に過ぎず、その乗員も消耗品でしかなかった。だから所属していた軍は逃亡した場合は追手を差し向けるところであったが、自爆したので一切の救助は行われなかった。
その艦に搭乗していた乗員も兵員も敵軍による度重なる攻撃で戦死していて、最後に残された艦長ラーヌが戦場になっていない惑星系の生物が居住している星の重力に捕捉され脱出できないので、その星の住民に見つかる前に自爆したとされたためだった。しかし、この時艦には六人の生存者がいた。そのうち五人は女子遊撃強襲機械兵だった。
「ラーヌ、大丈夫なの? 本当にごまかせられるのかな」
そういって艦長のラーヌに近づいてきたのは、この艦に搭乗していた女子遊撃強襲機械兵小隊長マリンだった。ただ、彼女の小隊は直前の戦場で孤立無援となり、所属していた隊員の大半が戦死していた。
しかも救助にやってきた宇宙強襲揚陸艦も離脱の際に直撃弾を複数食らい、機関部を損傷し跳躍航法に失敗し地球圏にやってきてしまった。
Γ50210が自爆する瞬間、居住モジュールの一部だけが日本海溝に沈んでいた。そのなかに生存者がいた。艦長のラーヌ、小隊長のマリン、兵卒のアケミとミランダ、政治士官のキャシャリン、整備兵のユリアンだった。あとは何人かの機械兵の遺体だった。
「それよりもマリン。身体大丈夫なの? 生体と機械の接合部から体液が噴き出しているんじゃない? そんな状態ではそんなに長くないわ」
「それわかっているわよ艦長。わたしって、ほら生殖活動に入るために除隊予定だったじゃないの? あんな任務に就くぐらいなら死んだ方がましだわ! でもその前にこの子達の夢をかなえさせてユリアン」
そういったマリンの身体はサイボーグのようだった。全身を特殊金属と炭素繊維で構成された外骨格に覆われ、髑髏のようなマスクをしていた。もし外骨格が外れた胸の部分から血がにじんだ素肌が見えなかったら誰も人間には見えなかったのは間違いなかった。
「小隊長! わたしたちよりも早くこの惑星の人間の身体になってください。わたしたちは後回しでいいですから」
三人の機械兵は動きが緩慢になったマリンに近寄っていた。
「いいのよ。アケミ、ミランダ、キャシャリン。わたしのような数多くの人々を殺戮した女は早く死ぬべきだわ。
あなたたち言っていたわね。こんな戦闘のための兵器に改造されるために身体が切り刻まれて、こんな金属の人形に改造されるのは嫌だったって。
わたしも嫌だったわ。こんな機械なのか生物なのかわからなくなる事に。それに知ってしまったわ。人を殺める事のむなしさを!
どっちにしても、私たち原隊に復帰したら再教育キャンプ送りされて自我なんてなくされてしまうところだったわ。だから、この地球の人間になりましょう!」
そうマリンは息も絶え絶えに話したが、うしろからユリアンが近づいてきた。ユリアンは改造箇所が少ないので、外見上は普通の
「小隊長! あなたたち機械兵に改造された女子を、この地球で生活できるようにするには・・・この惑星の女子と融合させないといけません! そのためには地球人の命を奪う事になります!」




